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狩人の変わった生活  作者: 満たされたい心
第三章 狩人とは
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第137話 それぞれの思い。






 街の中はどこもかしこも賑わいの声で満たされていた。 


 ・・・昼間から酒を飲んで宴会や屋台で焼いた肉を頬張ったり。・・露店が立ち並び様々な品物や食料品などが売られていたりと。・・・それぞれが思い通りな事をしていた。


 荷車を指定の場所に置き、歩きながら見ていた。


 バードスは。


「・・こいつはまた派手に騒いでいるな。・・・帝国でも新皇帝が誕生したときもこんなんだったか?」


 この質問に私は。


「・・似たようなものかな。・・・別段と特別な催しがあったわけじゃない。ただ祝っていた感じだな。」


 短的な感想を述べた。


 ・・・地球のようにスケジュールを組んだ祭りとは違い、ただ騒いで、ただ食って、ただ飲む。・・・無秩序みたいな感じだが、人に迷惑をかけているわけではない。

 意気投合し、楽しんでいる。


 ・・・ある意味、地球よりも仲良くしている。あそこではどんなに楽しくしようとしても迷惑をかけるバカな客が十人二十人はいるものだ。

 ・・目立ちたがり屋の典型である。・・・しかし、そんな者達がいない。


 そう思っていると。


「・・今日はめでたい。オリビア様が即位されるとは。・・・王国は益々、発展されるだろう。」

「・・全くだ。帝国と共和国の仲もかなり進んでいるようだ。これもオリビア様のおかげだ。・・まぁ、アルフォンス様も尽力はされているがな。」

「・・共和国と言えば、確か向こうでも即位式があるそうだ。ルストルフォ様が新王になると同時に結婚までされるそうだ。」

「・・マジか!?あっちじゃぁ即位と同時に結婚かよ!・・相手は分かるか?」

「・・さぁな。・・詳しくはどこかの貴族のご令嬢で優秀な魔術師としか知らないな。」

「・・何にしてもめでたい!!四カ国のトップが世代交代されたのだ!!期待が高まるってもんだ!!」

「・・そうだな。・・では改めて。・・・・乾杯!!!」


 木のコップに注がれた酒を一気に飲んでいた。


 これらの会話を聞いた私は。


「・・共和国でもか。・・・タイミングを合わせたのか?それとも偶然?・・・いずれにしても世代交代したのはいいことだ。」


 感慨深く頷いた。


 ・・・即位しても全てが上手くいくとは限らない。ある程度は前王が補佐として動くだろう。そして、ほとぼりが冷めたら何処かに隠居。

 ・・地球の会社でも似たような事があるが、前任者がそう易々と隠居することはない。


 ・・・大概は会社の方針に相談もしていないのに勝手に口出しし、幾らかの金を要求する。意地汚いというか小遣い稼ぎというか。・・まぁ、中には役に立つ提案をするから無碍にできないのも事実。


 本当に世の中は良くできている。


 ・・良い見本があれば悪い見本もある。・・だけど、大概の人は良いものより悪い方を選ぶ。


 何故か?そっちの方が儲かるからだ。・・・金を手に入れる為ならどんな汚い手段も平気で使う。たちが悪すぎる。


 ・・・話はだいぶ逸れたが。


 この世界はそんな事は起きないだろうと思っている。教会の前任者は非道い奴だったが、既に故人。

 王国と共和国は悪い噂は聞かない。帝国は知らないがこちらも故人。


 ・・・結論から言えば、安泰と発展の時代が訪れるということだ。

 

 私は。


「・・だけど。・・楽観はできないな。・・あいつの存在も気に掛かる。・・・だが、まだ、自信がない。もう一手。何かが足りない気がする。」


 呟きながら右手を見た。


 ・・`剣魔シドール`との再戦。その為に修行をしてきた。


 一年前の騒動の数々はまさにうってつけの試練であった。・・・魔力も上がり、スキルも増えた。装備も考える限りの手は尽くした。

 しかし、何かが足りない。それが分からないことにはまだ、戦うときではない。



 ・・・ティナは隣にいるシンスケが何かに悩んでいることを感じたが。・・それは当人が解決すべき事柄であり、相談された時は乗る。・・・余計なことを言って相手を悩ます訳にはいかない。

 しかし、自暴自棄になりかける時は声をかけるし、殴ってでも立ち直らせる。


 かなり強引だが、それが共に歩む者の責務である。







 王城。


 とある部屋。


 部屋の中央には豪華絢爛なドレスを着たオリビアがいた。・・・しかし、その顔は憂鬱である。


 支度を調えていたサクラは。


「・・・オリビア様。・・・まだ不貞腐れておりますか?・・此度のことに。」


 呆れと不安な言葉にオリビアは。


「・・当然です。・・本来なら兄上がなって、私は詩人として旅立っているはずなのに。・・・王族としての責務を果たし過ぎたのですね。」


 ため息をついた。


 サクラは。


「・・・しかし、それが王族の務めです。何もしなければ城を出ることはできたでしょうが。・・オリビア様が無責任なお方ではないことは幼少の頃から存じています。・・決して放棄することはないと。」


 微笑んだ。


 オリビアは恥ずかしさのあまりそっぽを向いた。


 その時、ノック音がした。


「・・・失礼します。アルフォンス様が、お話があるそうです。」


 この言葉にオリビアは頷いた。


 部屋に入ってきたのはゴシック様式の黒と白を強調した服。宰相のみが着ることを許された服を着たアルフォンスが入ってきた。


「・・・まだ、納得していないのか?顔に書いてあるぞ?」


 呆れ顔で聞いてきた。


 オリビアは。


「・・・兄上様。そちらも納得していないのではありませんか?宰相の地位に?」


 イヤミで答えた。


 アルフォンスは真剣な顔つきで。


「・・あまり変なことを言うべきではない。・・・これから先。貴族の者達がどう動くかは未だ定かでは無い。・・現に門の騎士達からの報告では領主代行がオリビアを侮辱する発言をしたと報告が上がっている。・・・好意的でない者達がいる証拠だ。」


 オリビアも真剣な顔つきで。


「・・・それについては先ほども私も聞きました。・・・しかし、貴族の名を聞いたとき、その者は私に対して媚びを売っていた一人。・・・そんなことをする理由がありません。」

「・・・考えられることは一つ。焦ったのでしょう。私への貢ぎと地位を手に入れることに。報告内容には具体的な部分が少し曖昧な感じがしました。・・騎士達が詳しい事を言っていない証拠です。・・・まぁ私の為でしょうね。心情を重くさせない為。・・・故に私は何も感じない。それでいいではありませんか?」


 冷たき微笑みを浮かべた。


 ・・・アルフォンスは息を呑んだ。彼も報告にいくらかの疑問があったのは感じていたがオリビアほどの考えはなかった。・・・ここに来たのも、未だ敵がいるから気をつけろと言いたかったが。

 ・・妹の考えは自分を大きく上回っていたことに若干の恐ろしさを感じた。


 冷たい空気の中、サクラは。


「・・・アルフォンス様は今日おこなわれる即位式の警備を強化のお申し出に来られたのですか?」


 流れを変えようと話題を強引に変えた。


 アルフォンスは。


「・・・まぁそんな所だ。今の警備状態は万全だが、念を押しておきたい。・・騎士達の護衛を増やしたいのだが。」


 この提案にオリビアは。


「・・・私の身の回りよりも身体検査の強化をした方がよろしいのではありませんか?・・いくら周りを囲ってもそれを打破する武器を所持されていれば何の意味もありません。・・・貴族達は文句を言うでしょうが、門での出来事を口にすれば否応なしに応じるしかありません。・・・それでも拒否された場合は何か隠している証拠にもなります。」


 この考えにアルフォンスは納得した。


 ・・・確かに護衛を多くしても動きが鈍くなるかも知れない。其れ処か人数的にも油断が生じるかも知れない。

 自分で提案しておきながら恥ずかしい気持ちである。


 ・・・オリビアの提案はある意味最善。完全なる丸腰であれば例え、魔術やスキルを使っても完全武装した騎士達の前ではすぐに取り押さえることができる。

 彼らの訓練と経験はグラドによってかなり鍛えられている。


 アルフォンスは。


「・・・分かった。お前の護衛は引き続きグラドに任せる。彼の耳にも入っているからそれ相応に動いてくれるだろう。・・・サクラ。オリビアの側を離れるなよ。」


 そう言い残して退出した。


 ・・・二人だけになった部屋でオリビアはため息をついた。


 催し事が起きると必ず二つの出来事がある。・・・歓喜と迷惑。


 ・・人が多く集まり祝えば喜ぶ声もあれば不安を煽る声を響かせる。・・・・何事もスムーズに事が運ぶことは決して無い。・・だが、今回は大騒ぎになることはない。

 三国からの祝辞が届いており、中でも共和国に至っては同じように即位式が開催されている。


 犯罪組織がない以上、事件が起きることはない。・・・起きたとしてもさっきのような小さいことのみ。


 オリビアは窓の外を見ながら。


「・・・これから先。・・・嫌な予感がします。・・・王国だけでなく他の国々も同様な何かが。」


 胸を押さえながら呟いた。


 ・・・緊張のあまり、ありもしない不安な考えが横切ったと思うのが自然。しかし、この予感はある意味的中することになった。






 城門前。


 私たちを見た門番が。


「・・ようこそ。おいでくださいました。・・さぁお通りください。・・とその前に失礼ですが、武器の類いはお預かりさせていただきます。念のために身体検査をさせていただきます。」


 私たちは素直に従った。


 ポケットの中から鎧の裏まで調べ、赤ん坊も女性兵士が慎重に調べた。・・・警戒は大事だ。特にこんな一大イベントでは。


 兵士は。


「・・・では改めてお通りください。・・お部屋の方はメイドが案内します。」


 門が開き、中に入った。


 ・・城内はかなりの警戒態勢で外の緩い歓喜はなく、何かしたら問答無用に殺す雰囲気だった。


 バードスは。


「・・・なぁ警戒しすぎじゃねぇ?・・・いくら何でも。」


 小声で聞いてきた。


 私は。


「・・確かにな。・・何かあったんだろう?大事の前の小事的なことが。」


 一応の返答をした。


 まさか、門での出来事が原因とは全く頭になかった。


 部屋に通された私たちは用意して貰った紅茶を飲みながら談話していた。


 ・・・そして、即位式が始まった。




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