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狩人の変わった生活  作者: 満たされたい心
第三章 狩人とは
155/268

幕間 それぞれの裏事情。






 レティル共和国。・・・玉座の間


 誰も居ない王の間に二人の影があった。


 玉座に座るルカール王とその前に立つルストルフォ王子。


 何故、二人だけなのか?・・それは国王が内密な話があるからだ。


 内容を聞いた王子は。


「・・本気ですか?!・・王位を退くというのは!?」


 驚愕の声を上げた。


 国王は静かに。


「・・あぁ。私はこの椅子から立ち去ろうと考えている。」


 何の揺らぎもない瞳。


 迷い無しの意思を感じた。


 王子は冷静に。


「・・もしや、帝国と教会の代わり映えをしたからですか?・・しかし、これらは事件があってこその変化。我が国に事件は多少あれど一大事というのは現時点ではありません。」


 キッパリと答えた。


 ・・・共和国で起きている事件はそんなに多くはない。半年前に起きた謎の魔物襲撃も森の中、しかも魔物の住み処だけで人間には一切危害はない。

 無論、放置するわけにはいかず、何度か兵士と冒険者の討伐隊が出された。


 ・・・見つけた部隊は全滅したがそれ以外は皆無。


 更に一ヶ月前から魔物の姿が無くなり。・・・それ以降、目立った事件もなく、兵士ならびに冒険者に人的被害はなくなった。


 国王は。


「・・確かにお前の言うとおりだ。・・・私とて未だに現役に仕事はしたい。だが、帝国と教会の事件を見て思ったのだ。・・若者の時代が来たのではないか?とな。・・・ルストルフォ。お前は王としては未だ未熟な部分はある。王位を継がせるとしたら成熟したときにと思っている。」

「・・・しかし、それで本当に正しいのか?と悟った。王になる前から完成するよりも王になった後から完成させるように多くの経験を積めるのではないか?とな。・・今でも経験はできるが、それでも、王子と国王とでは意識の違いがあるのではないか?と思っている。」


 国王の考えに王子は。


「・・・それは、私が何か失敗したとき。王子なら父上である王が何とかしてくれる。・・そういう甘えがあると?」


 少し怒気を込めての発言に国王は頷いた。


 王子は感情を押し殺して。


「・・確かに、親がいるときは甘えたくなるのは子というものです。・・・本来なら、バカにするな。・・と怒る所なのでしょうが。・・・冷静に考えれば。確かにという部分が私の中にあります。・・恥ずかしい限りです。」


 己の甘さにイラついたのか顔をしかめていた。


 ・・・国王は王子の姿を見て少しホッとした。自分で自分の事を理解できる考えとそれがあると自覚し他人を責めずに己の中で何とか解決しようと考えを持っている。


 王として親として、子供の精神の成長は喜ばしい限りである。


 国王は。


「・・だからこそ、お前に王位を譲りたいのだ。・・・王としての責務の重さと覚悟。・・それを再認識して貰う為にも。」


 少し強引に話を持ち込んだ。


 王子は。


「・・・ですが、一つが問題があります。・・婚約はどうされるのですか?・・・王になる以上。王妃は絶対必須では?」


 疑問を言った。


 王の仕事は国の運営だけではない。・・・次代の跡継ぎを生ませる為に妻をとり子をなすのも必要な事である。


 国王は。


「・・・それについては問題ない。・・私はメリサ嬢をお前の妻にすると考えている。」


 この言葉に王子は。


「・・・ホンキィ~~~??・・・・ごほん、もとい本気ですか?メリサ嬢といえば名門オルランド家のご息女。・・・貴族としての礼節は勿論、魔術師としての力量も優秀。しかし、性格はかなりのおてんばだと聞きます。・・親の目を盗んでは兵士の仕事を勝手に手伝っているとか。・・そんな人が城の生活ができるとは思えませんが。」


 あまりの事に素が出てしまった。


 ・・・この説明からも分かるようにかなりというか、ものすごいじゃじゃ馬である事が伝わってくる。・・・とても、王妃としての責務を全うできるとは思えない。


 国王は。


「・・・お前が言える事か?半年前の事件に首を突っ込んで。危ない目にあったそうではないか?ブラダマンテもあの時はひどい目にあったと愚痴を言っていたそうだ。・・・まぁその結果。冒険者の練度上げに国が協力するきっかけになったからな。・・その功績は認めてやる。」


 呆れた顔で言った。


 ・・・王子は苦い顔をした。この事から騒動に首を突っ込み大目玉食らったが、その結果、国の練度に繋がったのだからお咎めは無かった。


 ・・・王子は何故か諦めたような顔をしていた。






 同時刻。


 ハルグ王国。・・・玉座の間。


 明かりがほんのり照らされる広間に四人の影があった。


 ・・・国王エリュンポス四世。・・・王子アルフォンス。・・・王女オリビア。・・・近衛隊長グラド。


 ・・国の中でも中枢を担う者達が集結していた。因みに宰相は病により床に伏せている。


 ・・国王は呼び出した理由と説明をした。


 話を聞き終えたオリビアは。


「父上!!どういうことですか?!・・何故、私が王の座に就くのですか!?」


 激昂した。


 ・・・この怒りから国王の話が王位継承であること。そして、次期国王を兄ではなく妹にした事を。


 国王は。


「・・・まぁ落ち着け。私とて、次期国王はアルフォンスだと決めていたのだから。・・しかし、」


 続く言葉にオリビアは。


「でしたら!!兄上が継げば良いでしょう!!!父上が最初からそのつもりであるならば!!」


 怒り心頭で続けさせてくれなかった。


 傍観していたアルフォンスは。


「・・落ち着けと言っているだろう。・・そもそもの原因はお前の功績なのだから。」


 呆れ顔で答えた。


 オリビアはアルフォンスに振り向き。


「・・功績って。・・・私の功績の大半は兄上に差し上げたでしょう?!・・・最大と言うべき帝国との交渉だって兄上からの指示だと貴族達に宣言したではありませんか?!」


 この事から帝国との交渉は順調に進んでいたのだ。


 ・・・技術提供と引き換えの鉱石や物資の輸出。それらの事はオリビアがやっていたが全ては兄上であるアルフォンスの指示であり、軌道に乗ってからアルフォンスに全てを託した。


 ・・・これで次期国王としての段取りは盤石。・・・オリビアは吟遊詩人として活動に専念できるはずだった。


 アルフォンスは。


「・・・本気で思っていたのか?・・貴族連中がお前の言葉が真実だと?・・・誰だって気付いている。あれらの事は全てお前の考えあっての仕事だという事に。・・私とて黙って座していたわけではない。輸出の手配や技術専門の施設建設。それ相応に仕事をしたが、お前の仕事には及ばず。其れ処か、今までの功績を持ちだしてきて、`オリビア様こそ王に相応しい`という声が大きかったのだ。」


 げんなりした顔である。


 オリビアは。


「・・・今までのって。・・・先も言いましたが、差し上げたでしょう?・・何故、その声が?」


 この疑問にアルフォンスは。


「・・それについてはグラドに聞いて貰う。・・グラド、説明を頼む。」


 グラドは一礼して。


「・・・はい。・・最近の貴族達は王女様の行動に感動を持っているのです。・・・一年前の帝国の訪問時。・・・まだ、復興途中で新皇帝即位したばかりの不安定な国に王族自ら出向く覚悟と勇気に貴族達は無論、民衆達も心を打たれております。・・・現に未だに王女様の覚悟ある行動を詩人達が各街や村に詩として広めているのです。」


 現状報告を聞いたオリビアは。


「・・・何ですか?それ?・・私が詩うならまだしも。私を題材にした詩が広まるのは正直不愉快です。・・・今すぐ、止めさせられませんか?」


 グラドは静かに首を横に振った。


 ・・・オリビアは静かにため息をついた。できないほど広まったと理解したのだから。


 国王は。


「・・・以上の事から、オリビア。・・・お前を次期国王にという声が王都内外から大きい声が響いているのだ。・・これらを無視すればどうなるか?・・・言わずとも分かるだろう。」


 オリビアは苦い顔をした。


 ・・・民の声を蔑ろにしてはならない。もし、そんな事をすれば不満が蔓延する事間違いなし。最悪の場合、貴族達が反乱する可能性がある。

 ただでさえ、国王の小心で亀裂が入りかけているというのに。


 オリビアは。


「・・・しばし、考える時間をください。」


 言い残して退出した。


 ・・・グラドも後を続くように広間を出た。


 二人だけになった空間。予想外の事態になったが内心では安心している。


 何故なら、オリビアが王都を出る事がなくなるからだ。・・・吟遊詩人として活動はとても容認できない。しかし、本人の性格と行動力は並外れている。

 余程、いや、かなりの理由がなければ納得しない。


 ・・・二人は夜空を見上げながら今後の事を思い浮かべていた。







 地球。とあるビルの一室。


 そこは机と二つの椅子以外何もなく、天井からは豆電球が照らせる窓一つ無い部屋。


 ・・・取調室と呼ぶに相応しい。その椅子には二人座っていた。


 ・・・一人はシンスケを襲った外国のスパイ、佐々木。・・もう一人は裏オークションの支配人、黒田。

 当然後ろには黒服が二人、佐々木を見張っていた。


 重苦しい空間の中、佐々木は。


「・・こんな所に私を監禁しても意味はありません。・・殺すのなら早くしてください。」


 諦めた顔である。


 ・・・スパイの失敗は死あるのみ。本国から救助は来ず、一切の関与を否定する。


 政府機関の裏に準じる者の掟である。


 黒田は笑顔で。


「・・いえいえ。殺した所で何もなりませんし、得もありません。・・かといってあなたの国がコンタクトを取る事もありません。・・・利用価値はないと思うのは当然です。しかし、我々はあなたに価値があると考えています。・・・どうです?私に協力しませんか?」


 佐々木は顔を上げ。


「・・協力?・・何を協力するというのだ?・・何もない男に何の利用価値が?」

 

 諦め表情全開の佐々木に黒田は。


「・・・こちらの調べではあなたは日本だけでなく、各国でもスパイ活動していたとか。・・・その手腕を是非、組織で発揮して貰いたいのです。・・・無論、それ相応の報酬は約束します。」


 佐々木は怪しいと感じた。


 ・・・自分で言うのもなんだがそれなりに優秀だと思っている。しかし、一度失敗すれば二度と仕事ができなくなる。・・・裏でも表でも。

 それくらいの事は向こうも知っているはずなのに、各国で働いていたという理由だけで?


 疑問に思う佐々木に黒田は。


「・・疑問に持つ事は当然です。私とて失敗した者に二度目のチャンスを与える事は絶対ありません。・・しかし、時と場合によります。・・・今回はあなたが接触したのが彼だからという話です。」


 佐々木はしばし考えて。


「・・・つまり、各国ではどこまで掴んでいるのか?又、どこまで調査しているのかを調べて貰う。・・・・あなたの部下では深くは入れないが。昔のコネを持つ者の方が都合が良い?という事で良いのか?」


 この考えに黒田は静かに頷いた。


 ・・・佐々木は内心、苛立ちが半分と納得が半分。胸の中で渦巻いていた。


 ・・苛立ちは自分自身が評価されたわけでない事。・・納得はコネを持っていたからこそ今回の話がきた事。

 しかも、本国に戻れない身分。・・・戻れたとしても今までの人生を歩む事はできなくなる。


 選択はなかった。佐々木は静かに頷いた。


 ・・・元々、彼の両親は他界し独身なのだから。




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