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狩人の変わった生活  作者: 満たされたい心
第三章 狩人とは
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第132話 ボス戦と宝 その二。







 フラスコから飛び出したのは三百センチの人間。


 ・・・外見は遭遇したホムンクルスと似ているがその内にある異様な気配は別格であった。・・・それが出てきたと同時にフラスコは沈んだ。思う存分暴れるよう緊急処置のように。


 私は`看破`を発動。



 個体、人造人間。

 性質、魔石との混合、魔術無効化。

 魔術、なし。

 スキル、なし。

 弱点、命令重視。


 

 かなりヤバい奴だった。


 私は。


「・・こいつに理性は無い!命令された事以外は絶対にしない!・・・まぁ、侵入者を殺す命令しか考えられない。」


 警告した。


 ティナは。


「・・・分かりました。・・・かなり強い事は大体分かります。私は遠距離から支援します。」


 そう言って距離を取った。


 私は剣を抜いて雷を宿した。・・・その時、ホムンクルス、スパギリストは咆吼を上げた。同時に周囲の壁から光が現われた。

 どうやら、暗闇での戦闘をする気はないようだ。こちらとしてはありがたい。


 周囲を見たスパギリストは私に向かって突進、大きく右腕を振りかざした。・・・私は左に回避。拳は地面に激突。激しい破壊音が響いた。

 ・・・腕力はかなり高い。まともに当れば即死。


 私は。


「・・雷光閃!!」


 右横振りをした。


 ・・・スパギリストの腹は裂かれ青い血が噴出。しかし、傷口はすぐに再生。何もなかったように修復した。スパギリストは何も感じず、左拳を放った。

 私はすぐに回避しようとしたが右足が何かに引っかかり転倒した。スパギリストが右足を出して引っかけたようだ。・・・転んだ私に拳が迫る。回避所か防御も間に合わない。


 ・・・その時。


「・・水塊弾(ウォーターショット)!!」


 水の散弾がスパギリストに命中。


 攻撃が止まった。・・無効化で水によるダメージはないが怯ませる事はできたようだ。私はその隙に脱出。・・体勢を立て直した。


 私は。


「・・ありがとう。助かった。」


 短く礼を言った。


 ティナは`お気になさらず`という顔であった。・・・スパギリストは辺りを見渡した後。大きく飛んだ。そして、壁の棚近くに着地した。

 ・・・そこから緑と赤の液体が入ったガラス試験管を手に取った。


 すると、赤い液体を緑の液体の試験管に入れ二,三回振った。・・・まるで実験しているかのように。


 そして、スパギリストは思いっきり試験管を投げた。


 しかし、飛距離が足りずに部屋の中央に砕け落ちた。・・・だが、そこから黄色い霧が発生。誰でも分かる。あれは毒霧だ。


 私は。


「!!ティナ!!すぐに風で周囲を覆ってくれ!!」


 この指示にティナはすぐに対処した。


「・・竜巻(トルネード)!!」


 竜巻が私たちを中心に発生。


 霧はこちらに来る事はない。・・・しかし、周囲の棚や机が溶け出した。


 ・・・酸性の霧。・・・風の防御がなければ溶けて死んでいた。


 ・・腕力に加え、医学の知識。・・・チート級の付属。文句の一つも言いたい。


 私は。


「・・火散弾!!!」


 炎の散弾を発射。


 ただし、真っ直ぐではなく上空に向けて。火の玉は竜巻の上から飛び出し、周囲に燃え広がった。これに意味は無い。・・・ただの牽制で時間稼ぎのようなものだ。


 ・・・だが、スパギリストはその光景を見て青の液体が入った試験管を投げた。砕けるとそこから氷が発生。炎が鎮火した。


 その光景を見た私は。


「・・・成る程。そう言うことか。・・・ティナ。考えがある。」


 耳打ちをした。


 ティナは。


「・・分かりました。・・・どの道、打開する術は私にはありません。・・・ご武運を。」


 そう言って構えた。


 ・・・私は飛んで竜巻から出た。周囲はまだ毒霧があるが手に持った剣を天井に向けて伸ばした。`物質変換`で剣をムチのように伸ばし、刺さった。

 私はターザンのように移動し、霧の無い空間。・・・スパギリストの近くに着地。


 スパギリストは私を見て攻撃しようと構えた。


 次の瞬間。


「・・風刃円斬(ウィンドディスク)!!」


 風の円盤が部屋の壁に命中、激しい音と傷跡を残した。


 ・・・それを見たスパギリストは私からティナに目を向けた。・・まるで標的を変更するかのように。


 スパギリストは棚から試験管を取り出そうとしたが、私は一気に近づき。


「・・・させるか!!!」


 元の状態に戻っている剣に魔力を込めて斬りつけた。


 スパギリストの胴体は大きく斬り裂かれ、大量に噴出。・・・私は血飛沫を浴びながら剣を連続して斬りつけた。

 ・・右腕・・右足・・左腕・・左足を切り落とし、胴体を滅多斬り。最後に首を跳ね飛ばした。


 ・・・血塗れの体になりながら荒い呼吸を上げた。スパギリストの体は原型がないくらいに切り刻まれ、しばらくすると氷が溶けるように水となって消えた。


 消滅を確認した私は。


「・・どうやら上手くいったようだ。・・作戦通りかな。」


 苦笑でその場に胡座をかいた。


 ティナは近づいて。


「・・しかし、どうして壁を傷つけただけであんな行動を?」


 この疑問に私は。


「・・おそらく、スパギリストの命令は`実験場を守れ`というものだったのだろう。・・床を破壊しても、道具が溶けても、ここの崩壊の危険が無しだったのだろう。・・しかし、俺が燃やしたとき。あいつは慌てて消火した。実験場に危害あり。と判断したのだろう。・・・壁を思いっきり攻撃すれば、崩れてしまう恐れがある。だから標的を変えたのさ。」


 説明した。


 侵入者を殺す事も実験場を守ると同義。だから私たちを殺す行動をしていたのだ。・・・ティナは`そういうものですか`と不思議そうな顔をしていた。


 その時、奥の壁が迫り上がり、扉が現われた。


 私は。


「・・・ボスを倒せば現われるって。・・・どこのダンジョンゲームだ?」


 呆れた感想を述べた。


 ・・・・どうやらここの主は遊び心満載だったようだ。でなければこんな仕掛けはしない。ボスが倒されれば、次の罠が作動するからだ。秘密を守る気ならばな。

 ・・私は立ち上がり、扉に向かった。一応、`探知`を発動。・・扉の先に敵性反応無い。


 私は慎重に開けた。



 ・・・そこは研究室だった。一目で分かるくらいに棚には薬や道具が多種類。他には本がぎっしり。机の上には本が五冊、山のように積まれていた。


 だが一番、気になったのは机の上にある妙な箱。


 六個入りの菓子が入るサイズの木箱。・・・中を開けると液晶画面のみだが`解析`すると画面の裏は機械のような構造をしていた。

 ・・・何かの装置か?だとすれば説明書があるはずだ。


 私は机の引き出しを漁った。・・・すると、紙の束が見つかり、表紙には`魔物通訳の説明`と名前欄に`パラケルスス`書かれていた。


 ・・・パラケルスス。本名、テオフラストゥス・ホーエンハイム。


 ・・・スイス出身の医師にして錬金術師。化学の知識も豊富で四大元素を発見した研究者。一説にはホムンクルスを造った第一人者で賢者の石も作ったとされる偉人。


 ・・・ホムンクルスの時点で正体は分かっていた。彼が異世界に来た記録はないが、地上世界と天上世界と霊的世界を提唱する思想があったそうだ。


 この世界に来て宇宙の広さを知ったという所か。


 私は。


「・・・これは貴族の要望する物では無いが、持って帰るか。・・使えるかも知れない。」


 箱を手にした。


 通訳装置。・・・魔物と仲良くする気はないが、伏兵や他に襲撃している情報を得られる可能性が高い。


 そう思っているとティナは。


「・・しかし、それは着服行為になります。・・何か、気をそらせる物は無いのでしょうか?」


 不安の声を上げた。


 ・・私は。


「・・大丈夫だ。ここを`探知`したとき、隠し部屋がある。・・・そこの本棚をどかしてみろ。」


 そう言って指さした。


 ティナは言われたとおり棚をどかした。すると扉を発見。敵が居ないことを告げるとティナは開けた。


 ・・・そこには輝くばかりの金銀財宝があった。


 研究には金が必要だ。ここまでの施設を作るのに無料で材料を手に入れていない。・・・研究者は基本、体力作業は苦手だから労働はホムンクルスに任せたのだろう。

 当然、資金集めも。


 ティナはそれを見て。


「・・これだけあれば、貴族も納得します。」


 満面の笑顔であった。


 ・・・私たちは持てるだけの財宝を手に遺跡を脱出した。



 王都に戻った私たちはギルドに財宝を提出。


 ・・・中身は金の壺に金銀の腕輪等、自慢できるのに充分な量である。


 ギルド中の冒険者達は。


「どこで手に入れたのだ?!その財宝!?」

「未発見の場所か!?」


 質問攻めだが、私は。


「・・やめておいた方がいい。これらは遺跡で見つけた物だ。・・ある程度は退治したが、まだまだ沢山居た。・・・死にたくなければ行かない方がいい。」


 冷めた態度で答えた。


 遺跡を出る時、ホムンクルスと遭遇。・・・荷物も多かったから逃げの一手だった。


 進んだ印象では他に道はなく、あの実験場から造られたと思っていたが。まさか、道中の壁が迫り上がって現われるとは思いもしなかった。

 ・・・この分だと、スパギリストも再造されている可能性がある。


 何しろ巨大フラスコは健在なのだから。

 

 冒険者達は荒波が収まるかのように大人しくなった。


 職員は。


「・・・では依頼は完了です。・・・こちらが報酬金になります。」


 金貨三十枚の袋が手渡された。


 財宝と比べれれば少ないが、金は結構ある。・・・問題はない。


 私は。


「・・・都市アルムに戻るか。・・・向こうでしばらく休養しよう。」


 ティナは同意してくれた。


 ・・裏オークションが開催される日が近い。あのゴリラがどのように売られるのか気になるからだ。



 数日後。


 私たちは地球の裏オークション会場のビル前にいた。




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