第131話 遺跡探索。
遺跡に到着した私は。
「・・共和国と同じで洞窟なんだな。」
少し気落ちした。
遺跡と言うからには古代の神殿とか未知の建物とかだと思った。
ティナは。
「・・・この世界では普通です。遺跡と呼ばれるのは中に入って洞窟とは思えない程の造りなのです。」
説明してくれた。
この世界の常識という事か。・・・確かに、常識だと言われている事は他所では全く違うなんて事は地球でもよくある。
私は。
「・・・それじゃ。早速探してみるか。・・・貴族のお目当てが見つかるとは思えんがな。」
鼻で笑った。
何も知らない人にとってのお宝は大概、宝石や貴重な武具が一般的。・・・特定の人が見なければただのガラクタだと思われる物は山のようにある。
この遺跡もおそらく、その類いがある可能性がある。
何故なら、入り口付近である文字が彫られていたからだ。・・・少しミミズ文字だが、このパターンは知っている。ドイツ語に近く、しかも読める。
内容は`ホムンクルスあり、注意。`と書かれていた。
・・・人造人間。地球でもよく聞く言葉。最もマンガやアニメだけだが実際の歴史でも登場する。ヨーロッパの錬金術師が作り出した人間で、フラスコの中しか生きられないという説。
しかも、成功したのはたった一人だけであり、それ以降は成功していない。
もし、この人物が異世界に来ていたのなら、知識と成功する力があっても不思議ではない。
私は。
「・・注意しても進もう。この中の魔物は多分、かなり厄介だと思う。」
真剣な顔の私にティナは頷いた。
何か聞きたそうな顔であったが、私が何も話さない事から確信はあるが確定ではないと判断したのだろう。・・・こう言う場合のパートナーは本当に良い。
私たちは遺跡内を進んだ。・・・中は暗く、明かりに松明を持って。
途中で落とし穴や壁から矢が出てくる仕掛けと遭遇。しかし、私にはマンガの知識と現代の知識がある。注意深く観察すれば、一見何の変わりも無い壁に不自然な穴が開いている。・・・それは穴から飛び出す凶器がある。床の方も少し荒れているがよく見ると変な棒線が入っている床がある。試しに小石を思いっきり投げつければ穴が開いた。・・そしてそのまま閉じた。
自動式の開閉装置。・・・異世界の人々の技術では不可能だ。
まぁ昔の地球人でも無理のはずだが、天才というのはいつの時代でも生まれ、奇想天外な発明をする物だ。・・・大概は周囲に認めて貰えず孤立してしまうが。それでも貫く者は歴史に名を残す。
少し逸れたが、この仕掛けで確定した。ここはあの錬金術師が造った場所である事に。私はティナに推測を説明した。
進んでいく事三十分くらい経った頃。何の変哲のもない一本道の奥から異様な気配を感じた。
私は`探知`を発動。赤い点が三つ。こちらに向かってきている。
私は。
「・・敵だ。数は三。」
短的に述べて剣を抜いた。
ティナも同様にオリハルコンの剣を抜いた。左右は石の壁。抜け道はない。背後は誰も居ないが罠がある。・・・警戒しながらでは追い付かれる。
ならば、迎え撃つ以外なし。・・・不退転の構え。
奥の暗闇から緑の二つの点が光った。位置からして目玉だろうが光るのはロボットぐらいだろう。
・・・思っていると出てきたのは身長二百センチの黒い人間、頭はハゲ。服は着ていない裸だが大事な部分がない。それ以外で特徴は無い。・・・何というか動く人形みたいである。
ティナは。
「・・・これがホムンクルスですか?・・・何というか人形みたいですね?」
うまく表現できない答えである。
私も同様だった。・・・そう考えているとホムンクルス一体が右腕が伸びて襲ってきた。私たちはそれを回避。伸びた右腕はそのまま元に戻った。
私は。
「・・・距離を取っての戦闘は無理のようだな。・・・さすがは異世界の遺跡。何でもありだな。」
愚痴を言いながらも笑った。
この分だと遺跡内にいる全部が、手足が伸びる個体と考えていくしかない。・・・やりにくいがこういう獲物がいてうれしい。修行にはもってこいである。
私は剣を構えながら突撃した。
魔術を使ってもどこまで耐性があるか分からない。・・・しかも通路も三人揃って通れるほどの幅。視界が悪くなる魔術はこちらが不利になるだけだ。
ならば、近接戦でいくしかない。・・・ティナは状況を察したのか私の後ろで待機。
ホムンクルスは驚きもせず、迎え撃った。二体の右腕が伸び、向かって行く私に狙いを定めて。・・・それを走りながらギリギリで躱した。剣が届く範囲に入ると、右横払いをした。
ホムンクルスの腹は斬られ、青い血が噴出した。
今更、血の色が違うだけで動揺しない。・・・だが、腹の傷がすぐに塞がった。これには驚いた。ここまで回復力がある事に。続いて三体目が左拳で殴ってきた。
私は。
「・・雷掌!」
左手の平からの雷を放った。
威力は大体千ボルト。オオカミが気を失う程度の威力。・・・それを受けた三体目の左拳は大きく弾き飛ばしたが体勢を崩せなかった。私はすぐにその場から離れた。
一体目が何かする感じだったからだ。
私が下がると同時にティナが。
「・・氷結領域!!」
剣を地面に突き刺し、一直線に氷の道が現われた。
氷は三体の足に絡みつき、凍り付かせた。
動かない三体に対して私は。
「・・雷剣撃!」
雷の剣で斬りつけた。
三体の胴体を真っ二つにした。・・・すぐに再生するかと思い、トドメを刺そうとしたがホムンクルスの体が突然溶け出した。まるで氷が溶けるかのように、水となって消えた。
私は。
「・・再生能力にも限界があるという事か。・・援護ありがとう。」
礼を言った。
ティナは。
「・・・パートナーとして当然の事をしたまでの事です。・・しかし、こんな魔物がいるとは、地球の発想は恐ろしいです。これでは『閃光』が手こずるのも無理はありません。」
険しい顔で死体があった場所を見た。
私は。
「・・・?『閃光』が手こずったとは?・・彼らも依頼でここに?」
この疑問にティナは。
「・・いいえ。一年前のクラーケン事件。・・あの時に『閃光』が失敗し、討伐を成功する為に伝説の武器を探しにここに来たと聞いた事があります。・・最も本当に来たかは分かりません。彼は時間稼ぎのつもりのようでしたから。」
呆れた表情であった。
・・・同感だ。ローデルとは一・二回しか会っていないが、大体分かる。・・・あの性格では危険な事はせず、目立つ事のない場所では無理はしない。
冒険者というよりアイドル?みたいな感じだ。・・・自分が主人公になっていると思い込んだ。
・・別に私は選ばれた勇者のつもりはない。異世界に来れたのも倉にあった本を見つけ、遊びでやっただけだ。こんなんで選ばれたなんて絶対に思わない。
中途半端な気持ちは不愉快すぎるからだ。・・・過去の事を思い出すのは止めて先に進んだ。
遺跡内の探索は一言で言えばかなり疲れた。
・・・行く先々で現われるホムンクルス達との連戦。しかも暗闇からの奇襲が多く、今まで戦ってきた場所の中で一番の苦労である。
・・・体に疲労が溜まったと感じると安全だと思われる所で小休止。持参した水や陣中食の団子で補給。当然、二人同時では食べず、一人が食べ、一人が見張り。食べ終わればすぐに交代。
仕事の昼食時間みたいな休憩はない。・・・今までの冒険者生活は楽だったのかと実感した。
そんな繰り返しをしていると鉄扉を見つけた。
見るからに怪しい扉に私は`解析`を発動。・・材質は鉄、それ以外に目立つ物は無い。続いて`探知`を発動。奥は広い空間があり、敵性反応はない。
私はティナに目配せした。ティナは頷いて剣を抜いた。
反応はなくても警戒しないわけにはいかないからだ。・・・私はゆっくりと扉を開けた。
そこは何かの実験場。
周囲には棚が一杯並んでおり、沢山の実験道具や薬が山のようにあった。だが、何よりも気になったのは場所の中央にある巨大なフラスコ。・・・・これは見た事がある。
一年前の教会事件で教皇が若返るのに使ったとされる実験道具。
何故ここに?と疑問に思ったが、この場所は昔から存在する。・・・であれば教会から持ってきたということは絶対に無い。そもそもあれは破壊されて無くなっているのだから。
そう思っているとティナが。
「・・・これは教会の?・・ですが壊されたはず。・・・ということは元からここに?・・・だとすれば誰が?」
ブツブツと独り言を言っていた。
私も同意見な気持ちであった。・・・その時、いきなり警報が鳴り響いた。
`警告!警告!・・・実験場に侵入者あり!・・スパギリストを起動します!!`
女性の放送が鳴り響いた。
こんな物まで作り出すとは昔の偉人の頭脳は現代人を超えていた。
そんな感想を抱いている場合ではない。・・・目の前のフラスコが沸騰するかのように泡を吹き出していた。私たちは後ろに飛んだ。
フラスコから何かが飛び出した。