第13話 麗剣と趣向。
さて、ここでギルドでの朝の出来事を書きましょう。
朝、バードスはシンスケと狩りをする前のウォーミングアップのため、仕事を探していた。
その時、受付嬢が近付いてきて。
「バードスさん、シンスケさんとのパーティー名をそろそろ決めてほしいのですが。」
受付嬢が訪ねてきた。
シンスケとバードスの二人は、まだパーティー名を決めていなかった。・・・いや、正確には考えてもいなかった。
なぜなら、二人はコンビだと思っており、パーティー名をつけなくても別にいいか、という考えであった。・・・まさか、必要だとは思ってもいなかった。このことにバードスは。
「え? コンビでもパーティー名がいるのか?」
この答えに受付嬢は。
「必要です。二人以上組んでいますので、これはもう立派なパーティーです。・・・・ですので、パーティー名早く決めてください。」
これに対して、苦悶の表情をするバードスは。
「あ~~~、考えてもいなかった。・・・昼頃にはシンスケも来るからその時に考えるは。」
少し呆れ顔をした受付嬢は。
「わかりました。なるべく早くお願いしますよ。」
そう釘を刺して、持ち場に戻っていった。
やれやれといった顔をしたバードスは、仕事探しを再開した。
・・・その時であった、ギルドの入り口の方で人の目が集中したのは、各冒険者達は。
「見ろよ、`麗剣`が戻ってきたぞ。」
「今回は、長期の仕事らしいからな、相当のものだろう。」
「やっぱ、美しいぜ、あの人達は。」
`麗剣`・・・この都市で頂点に君臨する冒険者パーティー、長いこと離れていたがその仕事を終え、このギルドに帰ってきた。
先頭を行くのは、リーダー。赤い髪をポニーテールにして首元あたりまでの長さ、装備は、腰の長剣、足から首元までのフルプレート、色は白銀色の鎧、胸の部分は意匠が施されており、左胸にカキツバタのような絵が描かれている。・・・顔立ちはスレンダーで、女優というより女スポーツ選手の整った顔であった。身長約一七〇センチ、歴戦の戦士を思わせる風格と気品を感じさせる。 名をティナ。
二人目は、盾の騎士 胸の所まである金色のロングヘアーをした、大きな盾と槍を持ち、こちらもフルプレート、足から首元まで、色は紅葉色の鎧、胸の部分に意匠があり、同じ位置にカキツバタの絵。・・・顔立ちは、こちらもスポーツ顔だがリーダと比べると目つきがきつい印象を持つ。身長約一八〇センチ 名をレオナ。
三人目は、斥候 青い髪をショートヘア、装備は短剣を五つ 青を強調した上半身は忍び服で和服ではなくウェットスーツの半袖タイプ、青の手甲、青の具足、下半身は青い布製のズボン、首に青いマフラーで尻尾の部分にカキツバタの絵。・・・全て青にした飾り気のない服、、顔立ちは、少し幼さを感じさせる子供顔、身長一四〇センチ、名をルミリィ。
四人目は、魔術師 緑色の髪にツインテール、装備は、身長ほどの魔法使いが持つ杖を持ち、緑色のマントに緑色の三角帽子、西洋風の緑色の貴族服を着ており男装に近い、左胸にカキツバタの絵が刺繍している。・・・顔立ちは、斥候と同年代の幼い顔立ちであり、どちらかというと中性で男でも女でも通用するが、女性である。身長一四〇センチ、名をミルフィ
このメンバーは全員女性であり、その実力は折り紙付き。
特にティナとルミリィはスキルを一つずつ持ち、魔術は、ティナは水の魔術、レオナは土の魔術、ルミリィは風の魔術、ミルフィは五属性の魔術を持つ、卓越した連携と固い絆で結ばれた信頼。・・・まさしく理想的なパーティーである。
しかし、`麗剣`というパーティー名はティナが、己につけた戒めを忘れないための名である。
・・・それは、彼女のスキルが望んでいたものだがある意味違うものであったが為、その話はまた次の機会に話そう。
さて、これほどまでに有名なAランク冒険者の帰還となれば、騒ぎになるのは必定であった。
彼女らを見たバードスは。
「`麗剣`が戻ってきたか。戦いてぇな、だが、あいつら全然相手にしてくんねぇし、はぁ~、つまんねぇ」
バードスは、彼女らに勝負を挑んだことがあるが、四人とも断った。
理由としては、魔物や悪党以外とは戦わないのが信条だ、と言われたからである。・・・それでも、バードスはしつこく言ってきたそうだが、無視され続けられたので諦めたそうだ。
昼頃、地球での換金を終え、異世界に来たシンスケ。
・・・ギルドの中に入り、バードスを探したが、あっさりと見つかった。
「よぉ!シンスケ、待ちわびたぜ。・・さぁ、行こうぜ、狩りによぉ。」
ずいぶんと急がせるなぁと思ったが。
まぁいつものことかと割り切り、出発しようとしたが。
・・・受付嬢が小走りで近付いてきた。
「ちょっと、バードスさん!パーティー名を決めてくださいと朝にお伝えしたでしょう。・・・何、ころっと忘れて行こうとしているのですか!」
ずいぶんとご立腹である。
バードスは、`いけねぇ、忘れてた`という顔をして受付嬢を見て、私に振り返った。
「・・・そうだった。シンスケ、パーティー名を決めなきゃいけねぇんだと、二人だけでも組んでいることに変わりねぇんだと。」
心底興味なしのバードス。
まぁそれは私にも言えることだ。・・・パーティー名には興味がわかない、ソロで活動すると決めていたのだから、しかし、組んでいる以上必要なことなら考えるしかなかった。・・・凝った名前は考えず、頭の中によぎったある言葉を言った。
「`激想`はどうだ?激し想いで動くという感じで考えてみたが。」
このパーティー名にバードスは。
「いいんじゃねぇか、なんか俺ら二人にピッタリな感じだしな、これでいこうぜ。」
バードスも賛同してくれた。
最初は興味なしの顔だったが、名前を聞いた途端、少し興奮したような顔になった。
・・・これを聞いた受付嬢は。
「では、`激想`で登録しておきます。あと、シンスケさん、一応ご紹介しておきますが、あちらにいらっしゃる四人の女性は、`麗剣`の方々です。・・・詳しくは、バードスさんに聞いてください。私はこれで、結構忙しいので。」
そう言って早々に受付場に戻っていった。
・・私はバードスに`麗剣`って?聞いたら。
「あ~~、女だけのパーティーで、かなり強いらしいぜ。確か、リーダーのティナは珍しい常時スキル持ちだって話だぜ。」
常時スキル持ち?初耳であったので聞いてみたら。
「あ~、スキルには二つの種類があって、発動型と常時型があってよ、発動は言うまでも無く自分の意思で使えるもんで、常時は自分の意思とは無関係に使い続けるらしいぜ。・・・・確か、常時は希らしく魔力を消費なしだって聞いたぜ。」
常時型は聞いてるだけですごいものだ。
メリットは、魔力無しでスキルを使えるのだから。・・・しかし、自分の意思でコントロールできなければ余計なトラブルをおこしてしまうデメリットもある。
私は、`麗剣`の方を見た。
彼女らは、一言で言えば美しいと思った。
だが、私がそう思ったのは。
「・・なんだぁ、見とれちまって、惚れたか?」
バードスは、にやけた面で言ってきたが。
「・・・・あぁ、あの美しい鎧に惚れてしまった。」
「そうか、美しい鎧に。・・・えっ?うつくしいよろい?顔とかは?」
少し唖然とした顔で聞いてきたバードスに私は。
「顔?・・・別に普通だと思うが。そんなことよりもあの鎧だ。あの二人が着ている白銀色と紅葉色を見てみろ。完全武装で露出はなく、飾り気はないようで、胸の部分に花を一輪刻んで味気ないものに綺麗さと強さと感じる。・・・まるで、この花こそが私たちの誇りであり、絆だと主張している。その証拠にメンバー全員に同じ花の絵が描かれている。素晴らしい。」
この感想を聞いたバードスは。
「おまえさん、妙なとこに興味を持つな。・・・そんなにいいもんかねぇ鎧って、着ていても邪魔なだけだぜ。」
この言葉にムキになった私は。
「何を言う!?鎧は己の身を守ると同時に己の誇りを具現化した物だ。鎧あってこそ戦士であり、戦士がいなくては鎧が存在する意味が無い。・・・バードス、おまえのその体格と性格では、体を自由に動かせないことと自分に合う鎧がないからそんなことを言うのだ。・・・よし、お前に合う鎧を俺が作ってやる。とりあえず、家に来い。お前の体を計らないといけないからな。・・・それでは早速行こう。」
そう言って席を立ち、バードスの腕を引っ張った。
あまりにも突発なことを言われたのか、放心状態で私の後をついていったバードスさんであった。
道中歩きながら、しくったと思った。
・・・魔方陣があるから家に来させなかったのに、なに自分で招待させているんだと心中思った。
しかし、鎧のことにバードスは無関心であったので、つい熱く語ってしまった。仕方ない、魔方陣のある小屋に入れなければいいのだ。・・・鍛冶場に直通で案内すればいい。
家に到着し、鍛冶場に向かった。
家を見たバードスは。
「へぇ~~、これがお前の家か、中々いいもんじゃねぇか。ここにお前一人で住んでいるのか?」
この質問に私は。
「昔は、師匠が住んでいたのを、俺が譲りもらっただけだ。・・・それに、ここの暮らしは気に入っている。狩りをするのも鍛冶をするのも、この森の中なら自由にできるからな。」
そう言って、鍛冶場に到着。
早速、バードスの体を計った。・・・上半身と下半身、体の幅を計り、さには、バードスにふだんのからだをどう動かしているのか見せてもらい、ある結論に達した。
率直に言うと、全身鎧は無理だ。力で押すタイプとあらゆる方向に体を動かすゆえに、その為考えたのが、部分鎧であった。・・・バードスは、今、肩と胸当てと手甲とすねの部分の具足のみ、他は鎖帷子のみであった。ならば着けるのは。
「それじゃ、腹の部分と太もも、後は二の腕にも着けるか。」
この言葉にバードスは。
「ん? 腹と太ももはわかるが、なぜ、二の腕も?肩と手甲があれば十分だろう?」
もっともな答えだが。
それに対して私は。
「・・・確かにそうだ。しかし、二の腕は防御するのに難しい部分だ。手甲で攻撃を防ぐの簡単だが、二の腕を狙われたらとっさに防げないからな。・・・ここの部分もちゃんと着けないと身軽なやつとの戦いで不利になっちまうぞ。・・そういうタイプは、弱点ばっかり狙うからな。」
地球の家にパソコンが置いてあり、ネットに繋がっているのでオンラインゲームをして研究している。・・・暗殺者のプレイヤーは相手の弱い部分を一撃必殺で攻撃してくる。
バードスは。
「ふ~~ん、そういうもんか。・・・んじゃ、ちゃちゃと終わられせてくれ。家の中で寝てもいいか?」
この言葉に私は頷き、バードスは家の中に入っていった。
早速鍛冶を開始した。`物質変換`で鉄を作り、火をおこした。
夕方になり、完成した。
・・・能力と併合して作ったので短時間ですんだ。簡単に言うと、形状や厚みをハンマーで打ち、細かい部分や色は能力を使った。・・・そんな感じで作業をした。
ん? ならばなぜ全部、能力で作らないのかって、その方が早いんじゃないかと思ったか。
・・・そんなのは鍛冶をしたとは言えないからだ。火に鉄を入れ、ハンマーで打つ、この行為に意味があるのだ。・・・それこそが男のロマンだ。
私は誰に言ってるのだ?まぁいい出来上がったのでバードスを呼びに行った。
あくびをしながらバードスは出てきた。
「ん?できたのか? 意外と早いな。」
この言葉に少し濁らせて、私は言った。
「部分だけだからな、それに飾り気もしていないからな。・・・なにか意匠をつけようかなと思ったが、下手につけて気分を悪くするわけにはいかないらな。・・・お前のことだから、そんなものはいらないと思ったからな。」
これを聞いたバードスは、`そりゃそうだ`という顔をした。短い付き合いだが、なんとなくこいつのことを理解したつもりであった。
早速、バードスに鎧を着けることにした。・・・腹の部分を鉄の腹巻き風にした、胸当てと腹巻きのちょうど真ん中あたりに隙間が空くくらいのもであった。
・・・試しに動かしてみたらと言った、上下右左、うん、鉄どうしが接触してこすれることなく、斧を振り回して、動かしても苦も無いみたいだ。二の腕も着けてみた。・・・同じく接触してこすれることなく問題なし、すねの部分も問題なし、これを着たバードスは。
「悪くないな、動かしても痛いとこはないし、きつくもない。・・・かといってこすれることもない、完璧な仕上がりだ。これほどとは正直思ってもみなかったぜ。」
かなり感心したようでよかった。
作ったものを気に入ってくれるのならこれほどうれしいことはない。
お世辞を言っているのかなぁと思ったが。・・・バードスは、感情で動くタイプだ。そんな細かい言い方はしないと思った。
家の中に入っいたバードスは。
「・・・そういえば、家の中に見たことのない鎧があったが、あれはその師匠のものか?」
この質問に私は。
「いや、あれは俺の処女作と言うべき鎧でな、狩人の仕事には向かないから置いているだけだ。」
この答えに不満を持ったバードスは。
「なんだよ、せっかく作ったのに着ないなんてもったいないことを、あれだけ鎧のことで熱く語っておいて自分は着ないなんて、そんなやつが鎧のことを語っていいのか。・・・狩人だからと着ないなんて理由にはならないだろう。」
この言葉に私は衝撃を受けた。
そうだ、自分は狩人だから身軽な方がいいと言う理由で着なかったが、この世界では力の強い魔物がいるし、私は小手先の罠や素早い動きで敵を翻弄するわけでもない。・・・力押しでやるのが今の私の主流である。
私はある決意をした。
「それもそうだ。よし、俺も明日鎧を着てギルドに向かうよ。・・・ただ、兜は派手すぎるから、隣にある上向きの三日月のを着けていくよ。」
これに対して、バードスも`確かにあれは派手すぎる`と言って笑った。
もう遅くなったので、バードスを家に泊めることにした。このまま帰すのは後味が悪いからだ、食事は保存している干し肉と味噌玉と薬草と干し米がある。・・・・干し米については、この世界に小麦に似たものがあり、それを試行錯誤して加工したと説明した。・・・とりあえずに味噌汁風お粥を作り、干し肉を焼いて出した。
全部食べた後、布を床に敷きバードスはそこで寝た。私は簡易のベッドで寝た。
ギルド内のギルド長は。
「そろそろ、魔物共が動くときだな。」
報告書を見ながら、そう呟いた。