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狩人の変わった生活  作者: 満たされたい心
第三章 狩人とは
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第129話 時は流れ。







 教会の事件から一年が過ぎた。


 私たちは帝国で狩人兼冒険者稼業をしていた。・・・あれから色々あった。


 教会では、教皇の死後。・・・混乱していた教会は落ち着きを取り戻し、ロメル枢機卿はアルトリネを正式に教皇に任命。それを受託した。

 彼女自身、上に立つ気はなかったが。・・・上層部の不正を見てきた以上、無関心を貫くには無理があった。


 渋々ながら教皇の席に着き、騎士団長の地位は誰かに譲る事無くそのまま継続。


 両立できるほど簡単ではないはずだが、アルトリネ曰く。


「・・この身が働ける今こそ、働くのは当然です。」


 そう言っていた。


 ・・・地球でニート暮らしをしている連中に聞かせてやりたい台詞だが、重度の仕事中毒だ。・・・過労で死ななければいいのだが、その辺りは騎士団が助力してくれているはずである。


 そして、オワリの里の調査もおこなった。


 理由としては最近、里からの物資が滞っており何かあった可能性がある。しかし、当時の上層部が中々許可を出さず、ギルドへの依頼も出せない。

 だが、この機会にアルトリネが騎士団に調査を命じた。


 同行者として里の商品を納入してくれる複数の商人達と共に。


 ・・・里に到着したとき彼らは絶句した。何しろ、里には子供と老人しかおらず。若い者達が一人も居ない。


 話を聞くと。


「・・・だいぶ前に、この里に変な霧が現れてのぉ。・・そしたら、全員、気を失って。・・気付いたら若い衆が皆、居なくなったのだ。」


 脱力の老人が答えてくれた。


 里の人々も活気がなく、作る者が老人のみで子供はお手伝いだけ。・・・生産量も激減するのは当然である。このままでは里は崩壊するかも知れない。


 商人達は復興の支援をおこなおうとしたが、老人の話では。


「・・ここでは外の人達に助けを求めるのは禁止されているのだ。・・それが掟故に。」


 言いにくそうに答えた。


 ・・・以前なら堂々と断っていたのだが、この現状では存続はかなり厳しい。しかし、掟がある以上破るのも抵抗がある。・・・老人達はどうしたらいいのか分からない顔をしていた。


 それを察した商人の一人が。


「・・でしたら、我々が勝手に助力した場合はどうですか?・・・助ける金銭は求めず、抗議する声も聞かず。ここでの仕事も勝手に見て聞く。・・・自由気ままに里の復興を勝手にする。・・あなた方はそれを無視する。・・どうですか?」


 かなり強引なやり方で支援を申し込んだ。


 ・・里にとってもありがたい。人手が足りず、技術も知識も生きている内に子供達に教えられるのか不安な日々だった。

 しかし、これならば技術を後世に残すことができる。


 ・・・商人達の腕利きの職人達は見るだけで大概の事はできる。細かい事は老人達がさりげなく大声で言えば良い。・・滅茶苦茶な方法だが、掟を破っていないはずだと強く思う事ができるはずだ。


 里の老人達は。


「・・・勝手にしてくれ。」


 少しだけ笑顔で答えた。


 商人達はそれを了承だと受け取り、行動を開始した。


 教会は新たなる一歩を踏み出したのだ。



 





 そして、王国では新たにAランク冒険者が生まれた。


 `梟`というパーティーだ。・・一年程前、魔物の騒乱で活躍し、CからBランクに昇格した射撃専門の冒険者達。・・・そんな彼らがAに昇格したきっかけは王都で起きた密売事件。


 ・・何でも、王国の鉱石を大量に手に入れた集団が裏ルートで他国の裏組織に流していた。・・実際、そんな組織がある事は知らなかった。


 ティナに聞いてみたら。


「・・・まぁ、普通に生活していれば出会う事はありません。組織が接触するのは自分たちに利益をもたらす者だけです。・・・高ランク冒険者に声をかける事は絶対ありません。」


 きっぱりと答えてくれた。


 それもそうだ。・・・地球でも普通に暮らしている一般人に裏組織が関わる事はない。自分から首を突っ込まない限りは。

 ・・そんな連中とやり合うきっかけになったのは`梟`が商人からの依頼で鉱石の護送をしていた。


 その時に襲ってきた盗賊達を返り討ち。捕縛して洗いざらい喋らせた。・・・手段はかなり強引なやり方で。

 ・・盗賊達から密売を聞いた`梟`は護送任務を終え、ギルドに報告。


 そのまま密売を摘発する依頼を受けた。・・・本来なら王国の騎士団がすべきだが、証拠があまりにも少なすぎる。証言だけでは大手を振って活動できない。


 その為に`梟`に依頼をしたのだ。


 ・・・三日間の調査の末、密売組織のアジトを発見。潜入し、書類証拠だけでなく、そこから出てきた貴族を捕える事に成功。ギルドに報告し、ギルド長が国王に報告。

 ・・本格的な調査が開始しされた。


 結果、組織は壊滅。手を貸していた複数の貴族を捕縛、位の剥奪処分にした。


 ・・この功績から`梟`は国王に認められ、Aランクに昇格した。・・同業者として良い話である。・・・冒険者が国の為に尽くしている。素晴らしい。

 ・・私のような自分勝手とは訳が違う。


 ・・何で私がAランク、しかも二国に認められたのか。・・・つくづく変な話である。


 王国と言えば、バードスとレオナの赤子が生まれたそうだ。・・・都市アルムに来たときに知った。見てみると可愛い緑髪の少女。両親の遺伝をちゃんと受け継いでる。


 レオナは。


「・・そういえば、お二人の子供はまだなのですか?」


 この疑問に私たちは苦笑いをした。


 何しろこの一年、まともに抱いた事がない。・・夜にやっている事は拘束プレイ。・・・磔や手枷だけでなく、首輪をつけたラバースーツで遊んだ事もある。


 ・・勿論、女騎士が一番のお気に入りだが、趣向の違うこともやってみたい。


 ・・話は逸れたが、別の意味で夜を過ごしている為、そういうことは未だしていない。


 ティナは。


「・・してはいますが、・・・中々に当りません。」


 赤面しながらウソをついた。


 レオナは苦笑いをしながら無言で赤ん坊を抱かせてくれた。



 一方、ミルフィとルミリィとマチルディは、相変わらずの仲良し・・・と言えばいいのか。


 ある日、マチルディがミルフィと決闘し、勝ったそうだ。マチルディはかなり喜んでいた。


 ・・・その夜、マチルディはミルフィに首輪をかけ、愛玩のように可愛がったそうだ。ルミリィはその光景を椅子に縛られた状態で眺めていたそうだ。・・だが、それも長くは続かなかった。


 ・・・一週間くらいで止めたそうだ。


 理由としてはミルフィが悲しそうな顔をしていたと。`貴女のことは好きだけど、恋人としては見れない。・・ごめんなさい。`と本気で泣いたそうだ。


 マチルディはかなりショックを受け、ミルフィとルミリィを解放したと。


 ・・・その後は二人の前から姿を消そうとしたが、ミルフィが。


「・・・別に嫌っていないわ。・・あの行為だって、悪くないとは思うわ。・・今度はルミリィと一緒に。・・」


 この言葉でマチルディは思いとどまり、今でも雑貨店`百合`で幸せに働いている。




 共和国ではAランクになった冒険者は未だにいない。・・大事件など起きる国ではない。海の魔物がいる以上、下手な事を考える輩はいないのだ。教会との中間にある森も魔物が出るがどれも脅威判定のないものばかり。

 ・・ある意味、平和な国である。


 だが、何もないわけではない。


 事件から半年後、共和国の冒険者にある依頼があったそうだ。


 内容は`生態調査`。


 ・・・共和国近辺の魔物たちにおかしな動きがあるという報告があった。・・・縄張り争いがかなり激増し、近隣の村々に被害が出ている。

 このまま放置すれば共和国の王都にも危険が迫る可能性があった。


 国としては兵士達を派遣したいが万が一の事を考えて王都の防衛に徹して貰う事が決まった。


 その為に調査は冒険者パーティーが複数、ギルドから依頼を受けて調査して貰った。


 ・・・数日に及ぶ調査の結果。


 争っている魔物たちの大半が住み処から逃げ出し、新しい場所を確保する為に争っていた。逃げ出した理由を調べる為に現地に向かった。

 惨劇と呼ぶに相応しい光景が広がっていた。


 ・・・焼け焦げた木々。・・・抉れた大地。・・・バラバラになった魔物たちの死骸。


 何か不吉且つ悪意のある災害が過ぎたような印象であった。


 無論、そこだけでなく他の住み処でも同様の被害があった。


 これらを見たパーティーの一人が。


「・・・何かおかしいですね?・・災害が起きたのなら住み処と住み処の間にある木々も被害があるはずなのに。・・ピンポイントで住み処のみ荒らされています。・・まるで、意思のある災害がおきたような。」


 この意見はある意味当たりである意味外れである。


 ・・・当たりは住み処のみを狙っている事。ここで殺戮と破壊をする事に意味があるような行動。


 ・・・外れはこれだけの被害を人間は無論、魔物でも無理な事。何しろ切り刻まれ、焼かれ、抉られて穴まで開いている。これだけの力を持った魔物など聞いた事もない。


 現状では自然的か?人工的か?この二つで悩まされていた。



 ・・・しかし、ある夜。


 冒険者パーティーが森の中で野営しているとどこから唸り声が響いた。・・・魔物が暴れているのかと思い、音の方へと向かった。

 すると、魔物の住み処を何か得体の知れない存在が破壊していた。


 ・・・周囲は焼かれ、炎がかがり火となって照らしていた。


 その為に破壊している存在をよく見る事ができたのだが、それでも得体が知れない。何故なら、まともな形ではないからだ。上半身は人間だが三ツ目。下半身はクマのようなゴリラのような。あまりにもツギハギ過ぎてどう表現したら良いのか分からない。


 ・・しかし、その強さは桁違い。


 Bランクの複数パーティーが国の騎士団と共闘しても勝てるか分からない。


 ・・・それだけの威圧と恐怖がその場を支配していた。存在は一通り暴れると黒い霧に包まれて消えた。残ったのは燃える木と抉られた大地と魔物たちの死骸。

 一連の事件はアレの仕業で間違いない。


 パーティーはすぐにギルドに報告。


 ・・・あまりの内容に最初は信じられなかったが、別のパーティーがそこに行くと報告書通りの被害があったのは確認が取れた。


 ギルドは緊急報告として王城に報告。・・・王族並びに貴族達は会議をおこない、周囲の警戒ならびに警備の強化を図った。


 得体の知れない存在。・・・それが討伐されるまでは安心して暮らせない。ギルドからも定期的の調査を依頼。報酬金は無論、自身の力量を上げたいのなら騎士団が武術指導と魔術指導をしてくれる。


 経験の浅い冒険者や更に強くなろうとする冒険者が依頼に殺到。・・・共和国の冒険者レベルは他国よりも上になったのは言うまでも無い。



 そして現在の私たちは。




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