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狩人の変わった生活  作者: 満たされたい心
第三章 狩人とは
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幕間 知る事のない出来事。

今回のは短いので早めに投稿します。








 暗闇の中、一匹の獣がうねり声を上げた。


「・・・あぁ、どこだここは?・・何故、私は生きている?」


 姿が見えない闇の中、獣は混乱していた。


 そこに。


「・・お目覚めですか?我が友よ。」


 現れたのは紫のフードを被った白骨死体だった。


 しかも動いて喋っている。・・ゾンビ、もしくはリッチの類いである。


 獣は。


「・・誰だ?・・いや、その気配は?・・・ヴィルか?・・その姿は一体?」


 疑問が獣を支配する。


 白骨死体、ヴィルは微笑みながら。


「・・気にするな。お主を生き返す代償でこの姿になっただけだ。・・この姿はいいぞ。空腹も睡眠も感じない。働き通せるというものだ。」


 笑っていた。


 獣は分かっていた。それは人を捨てるのと同義であり、楽しみも何もない哀れな末路。・・・だが、獣は何も言わない。・・・友がそう言うのなら信じて聞くのみである。


 獣は。


「・・・して?何故に私を蘇させたのだ?・・・何が起きたのだ?」


 この質問にヴィルは。


「・・・悔しくないか?あの死を?」


 獣は無意識に痛い思いを感じた。


 殺された夜。


 ・・・襲撃した魔物が強かったとはいえ、私自身もかなりの年だ。・・・体が思うように動かなかったという無念があった。


 獣は。


「・・思う所があるが。私とて戦士。・・・戦いで死ぬのは当然だ。」


 悔い無しと言いたい気持ちだ。


 ・・・未練があってはならない。戦士として生きていた時代、戦場は死と隣り合わせ、誰が死んでもおかしくない。


 ヴィルは。


「・・本当か?・・本当にそう思うのか?・・お前だって分かっているだろう?・・ヨルネは優しすぎると。」


 この言葉は今まで受けてきた攻撃よりも痛く、胸に突き刺さった。


 ・・・獣も承知している。ヨルネは政策者としては才がある。・・だが、優しい感情は、人としては素晴らしいが、王としては失格である。

 ・・上に立つ者は、時として冷酷で残酷な事を言わなければならない。


 例え、周りから何を言われようと国の存続を最優先にする。・・・それが王であり、為政者の務めだ。・・・ヨルネはその部分が甘い。


 獣は。


「・・例え、それでヨルネの支持が落ちたとしても、それはあの娘が選んだ道だ。」


 あくまでも我関せずを貫く獣。


 ヴィルは。


「・・・その結果、帝国が混乱に陥り、多くの民衆達が死に、他国の者達がこれ幸いと攻め込み、全てを蹂躙されたとしてもか?」


 この言葉で獣は激しい怒りで満ちあふれていた。


 ・・・そんな事は断じて許せない所業。


 獣が国を守っていたのは人々が安心して暮らせるようにしていたからだ。


 ・・・若い頃、他国に攻めたのも自国の民達を魔物達から守る為。飢えさせない為に資源などを奪いに行った。・・例え、どんな汚名を被ろうともそれだけは譲れない。


 獣は。


「・・・友よ。・・・そこまで私を怒らせて、何をする?」


 疑問にヴィルは。


「・・・友に国を統べて貰いたいのだ。・・・欲をいえば、大陸を統べて貰いたい。・・・争いのない平和な世界を。・・・・絶対の強者が支配する世界を。」


 悪魔の囁きと呼べる言葉は。


 獣に残っていた良心と悔い無しの心は音もなく壊れた。


 獣は。


「・・・いいだろう。・・再び帝国を治め、大陸を支配してやろう。・・・例え、人々が恐怖に怯え、私を、いや、我を恐れようと構わない。・・・恐怖こそが争いのない世界を作る唯一にして絶対の理。」


 激しい咆吼が空間に振動を与えた。


 笑みを浮かべるヴィルは。


「・・・その意気だ友よ。・・だが、今は待て。・・その体は未だ十全に活動できない。・・それに戦力は必要だ。・・・いくら友が強かろうと数の前では無意味。・・・作戦を練るからここで待っていてくれ。・・・ディオン。」


 この言葉に獣、帝国の前皇帝ディオンは静かに頷いた。








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満たされたい心
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