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狩人の変わった生活  作者: 満たされたい心
第三章 狩人とは
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第128話 騒動の終り。







 教会の混乱は壮絶なものであった。


 本部からのいきなりの咆吼と黒煙。・・・何者かが侵入し、騒動を起こしたのか?と住民達は不安で一杯であった。

 教会本部の広場ではほとんどの人々が集まっていた。


 入り口には騎士達と兵士達が揉め事を起こしていた。


「中に入れてくれ!!何が起きたのか確かめたいのだ!!」

「だからダメだ!!団長から何人もたりとも入れてはならないと命令がきているのだ!!」


 怒声が鳴り響いていた。


 心配と恐怖が全てを支配していた。・・・・その時、扉が開き、出てきたのは騎士団長アルトリネである。


 その姿を見た人々は。


「アルトリネ様!!一体何が?!」

「先ほどの叫び声は何だったのですか?!」

「教会は大丈夫なのですか!?」


 様々な声が飛び交っていた。


 アルトリネは皆から見える位置に立つと。


「・・・お静かに!!・・皆さんの心配はごもっとも。ですが大丈夫です。・・・雄叫びを上げた魔物は何処かへと消え去りました。・・・ただいま、騎士団が周辺の警備と調査をしています。」


 この言葉に人々は安堵した。


 正直に言えば、魔物が討伐されていないことに不安はあるが。・・・どこかに消えたのなら少なくとも危険は無い。


 少しの動揺が収まるのを見届けたアルトリネは。


「・・皆さんにお伝えしたい事があります。・・この教会で起きた事を全て・・・」


 アルトリネは教皇並びに大司祭達の計画を話し始めた。


 ・・・隠された研究。・・・犠牲者。・・・隠蔽工作。・・・教皇の若返り。


 それらを聞いた人々に再び動揺が走った。上層部がそんなひどい事をしていた事、素直に受け入れきれない気持ちで周囲に蔓延していた。


 アルトリネは。


「・・皆さんの気持ちは分かります。今回は不測の事態が起きた故にこのような形でお話しする事になりましたが。・・後日、詳細な情報の公開をいたしますので、しばらくの間、お待ちください。」


 そう言いながらアルトリネは教会の中に戻っていった。


 残された人々は互いに顔を合わせながら、`これからどうしたらいいのか?`という気持ちで一杯であった。


 その様子を見ていた騎士団の一人が。


「・・皆さん。ここは解散し、各自、元の生活に戻って下さい。」


 この言葉で民衆達はようやく動いた。


 人々は考え事をしながら自宅へと戻っていった。






 教会内。


 魔物の襲撃はあったが研究室が破壊されただけで人的被害はゼロ。・・・調査は終わっていた為、中には誰も居なかったと言うが、入ってきた騎士達は怪我を負っていても死人はいない。


 偶然と幸運があってもあまりにも不自然。


 そう考えているとティナは。


「・・確かに、物品のみを破壊して消えるというのは魔物としてはおかしいです。誰かが操っていると考えるのが自然。ですが、一体誰が?」


 そう考えているとアルトリネが来た。


「・・それについては私も同意見です。・・しかし、枢機卿の話ではこの件に関わっている外部の人間はおりません。・・・とりあえずは保留にして現状の改善を最優先にします。お二人はこのまま用意しました部屋に行ってください。」


 真面目な顔で指示してきた。


 正直思う所はあるが、これは非正規の依頼。・・・冒険者、ましてやAランクが関わっていい案件ではない。


 私は。


「・・分かった。休んだ後に人々に見つかる事無く教会から出る。それでいいな?」


 この言葉にアルトリネは頷き。


「・・その際は騎士団が送ります。調査という名目で。」


 補足してくれた。


 私たちは頷いて騎士に連れられて部屋に向かった。






 翌日の正午。


 アルトリネは再び人々の前に立ち、詳細な情報を公開した。


 ・・今回の事件に関与した大司祭三名は身分を剥奪の上に追放処分。ただし、他国に迷惑をかける訳にはいかないので最も親しい関係である共和国の王族に三名をどこかの辺境に監禁してもらった。・・・投獄に等しい処置である。


 それからは研究で犠牲になった人々を弔いが始まった。・・・その最中、先のアルトリネの事件で罪人にされた騎士は名誉回復し、同じように埋葬された。

 そして、教皇不在となった現在、ロメル枢機卿が仕切る手筈だが怪我がひどくまともに動けない。・・・その為にアルトリネが教皇代行の任を正式に受けた。


 そして、私たちはアルトリネに呼ばれて。


「・・お二人には感謝しかありません。本当にありがとうございました。・・・これは、報奨金になります。・・受け取って下さい。」


 ぎっしりと詰まった小袋を渡してきた。


 私はそれを受け取り中身を見ると金貨がたくさん入っていた。・・・見積もっても百枚はある。


 私は。


「・・・ありがたく貰っておくよ。・・色々な意味で。」


 含みのある言葉にアルトリネは納得した顔をした。


 ギルドを通さない非正規の依頼。・・・教皇の不正を暴く為とはいえ端から見れば謀反そのものである。この金はお礼と共に口止めの意味でもある。

 こう言う場合のお金は後ろめたさが付くものだが、受け取らないと相手は心配する。


 この件で脅してくるのではないか?と。・・受け取る行為が相手の安心と信頼を保つ場合もある。


 そして、私たちは騎士団の調査に便乗し、森の中で別れた。・・・騎士達もお礼の言葉を言ってくれた。・・・人助けも悪くはないが、大手を振ってやるというのも気恥ずかしい。


 裏で動き、裏で解決する。・・・目立ちたくない者の動きとしては最適だ。・・だが、王国や帝国で目立たない行動をしているはずなのに、なんで王族や関係者は公表するんだ?と真剣に考えさせられる。


 この考えにティナは。


「・・・それが国というものです。解決したのが自分たちなら派手に宣伝しますが、他者が解決したのならその者の功績にしないと後から取り返しの付かない事態になります。・・信頼を損なうのは国の存亡に関わります。」


 説明してくれた。


 地球でも似たような事がある。・・・会社では納期に間に合わせる為に本来の合格基準を無視して送る事がある。

 そして、その製品に不備があった場合。・・・送った人間を罰則にし、会社自体は悪くありませんと吹聴すればいい。


 ・・・どこの世界でも信頼は絶対という事か。


 私は複雑な気分で帝国に戻った。



 帝国王都。


 一週間くらいは空けているが、冒険者が長期に渡り、不在は良くある事。気にする事無く帰宅したとき。・・玄関口にゴルトール将軍がいた。


 私たちの姿を見た将軍は。


「・・帰ってきたか。・・国境戦について話があるんだ。中に入れてくれないか?」


 その言葉に私たちは頷き、中に一緒に入った。


 お茶を出し、三人が席に着いた。


 私は。


「・・それで?国境線に何か?」


 この質問に将軍は。


「・・いや、あれはウソだ。周囲の人が疑いを掛けないように言っただけだ。・・・本来の要件は。・・教会についてだ。」


 何やら非難するような将軍に私は。


「・・え~~~と。どういうことで?」


 一応の誤魔化しに将軍は。


「・・無駄だぞ。教会の情報はこちらでもきている。・・教皇の死。・・大司祭達の国外追放。かなりの大事になっている。・・その中で、オワリの鎧を着た男性と灰色の鎧を着た美しい女性がいたと聞く。・・・遠回しな言い方は好きではないから率直に言う。・・・何で教会に関わった?」


 偽りは許さない顔。


 私たちは顔を見合わせた。・・日本の鎧に。スキルによる美貌の効果。言い逃れをするには難しい。


 私は。


「・・・将軍。ここでのお話は陛下以外に話さないでいただけませんか?」


 この言葉に将軍は静かに頷いた。


 感謝の意を込めて私は全貌を説明した。



 全てを話し終えた後、将軍は。


「・・・はぁ、・・・いくら騎士団長からの依頼とはいえ、ギルドを通していない仕事は。・・・と言いたいが内容が内容だ。おいそれとは言えまい。・・・だが、これっきりにしろよ。君たち二人の功績は素晴らしい。・・・だからこそ、評判を落とすような事はするな。・・・お互いの為にもな。」


 念押ししてきた。


 お互いの為。つまり、国から認められたAランクが非正規の依頼を受けるのは良くないという事だ。例え、相手が善良な人間であろうとも。


 私は。


「・・・そうさせて貰います。さすがに疲れましたよ。今回のは。」


 疲れ顔で答えた。


 目立ちたくないとはいえ、不法侵入に国家反逆。・・・悪党を成敗するとはいえやっている事は犯罪だ。どこぞの時代劇の主人公でもあるまいに。


 ・・・将軍は。


「・・分かってくれたのなら別にいい。・・・それでは私はこれで失礼する。・・たまには王国にも帰省しろよ。・・あっちでもAランクだからな。」


 この言葉を残して将軍は家を出た。


 残された私とティナは


「・・王国でも活躍しないとダメか?」


 げんなりする私にティナは。


「・・それが高位冒険者の運命です。」


 簡潔に述べた。


 私はため息をついて今後の活動を考えた。・・・狩人と冒険者。当初は両立は簡単だと思っていたのに。・・なんでこんなに難しくなったのだ?と真剣に悩んだ。




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