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狩人の変わった生活  作者: 満たされたい心
第三章 狩人とは
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第127話 後始末。







 いきなりの咆吼。・・教会本部だけでなく町中に響き渡るような感覚。


 得体の知れない恐怖が周囲を支配した。


 騎士団は動揺していたが、私は。


「なんだ?!今のは!?・・・教会内に魔物でも飼っているのか?」


 この疑問に奥から。


「・・い、いや。・・・そんな物は、いない。・・連、中は、・・・そこまで、おろか、ではない。」


 息もろくにできない状態のまま話すロメル枢機卿。


 絶対安静なのにワザワザ説明してくれた。


 騎士は。


「・・とすると、外から侵入してきた?」


 ありえる可能性を口にしたが、否定したい気持ちであった。


 いくら騎士団が全員、本部に襲撃しているとはいえ、兵士達も熟練の手練れだ。簡単に破られるなど有り得ない。・・もし、破られたのなら教会の存亡に関わる。

 騎士団はお互いに顔を合わせ、すぐに行動を開始した。・・大司祭三名を縛り、米俵を担ぐように持ち、枢機卿は騎士がおんぶして運んだ。


 私を担ごうとした騎士にティナは。


「・・・こちらは私が持ちます。・・すぐに向かって下さい。・・私たちも後から行きます。」


 この言葉に騎士達は頷き、移動した。


 私はティナの肩を借りて教皇の間を後にした。






 アルトリネサイド。


 騎士団と共に研究室に向かう最中に響いた。・・・魔物の咆吼。


 方角から研究室方面だと確信した彼女は。


「・・!!すぐに向かいます!!」


 号令と共に走り出した。


 何が起きたのか分からないが、ここまで届く唸り声。・・・中型か大型の魔物が侵入してきた可能性が高い。だが、騎士団は無論、彼女もあの声は初めて聞いた。人のようで獣のような。表現するのが難しい類い。・・・こんな事は初めてな違和感であった。



 ・・・騎士団が研究室に到着したとき、煙が上がっていた。中に入ると周辺が燃えていた。


 薬草や薬が全て燃やされ、医療器具が全て壊され、中央にあった巨大なフラスコが木っ端微塵になっていた。

 

 しばし呆けた後、彼女は。


「・・・・!全員!!すぐに調査を!!生きている者がいるならばすぐに救護を!!」


 驚きのあまり少し思考が停止していたがすぐに再開した。


 呆けていた騎士団は彼女の命令で行動を開始した。・・・研究室に突入し証拠となる資料の回収とケガ人がいないか探索していた。

 ・・・しかし、幸いというべきかここでの証拠集めはほぼ完了し、研究員は全員捕縛し、連れ出されていた後だった。残っていた騎士達は研究室を閉鎖し、外で見張りをしていた。そのときに咆吼を聞き、慌てて入ると侵入者の襲撃を食らった。


 ・・・話によると、見た事の無い魔物が炎をはきながら大暴れしたと。


 それを聞いたアルトリネは。


「・・どんな魔物でしたか?・・見た事無くても特徴はあるはずです。」


 この質問に騎士は。


「・・それが、分からないのです。・・・何というか、特徴はあるようでないような。・・・その、混ざりすぎてよく分からない印象でした。」


 容量の得ない答えである。


 ・・あまりのいい加減な内容に先輩騎士が注意を言おうとしたがアルトリネが制止した。


「・・落ち着いてください。・・彼だってふざけている訳ではありません。・・混ざりすぎているとは、外見がチグハグというか生き物としておかしいという意味ですか?」


 疑問に騎士は。


「・・そんな感じです。・・・四本足ですが毛のある魔物、クマかゴリラのようで。・・しかし、上半身が人間で剣を振っていました。・・・顔はよく見えなかったのですが、光が三つ見えたので三ツ目だったと思います。・・・」


 ありのままに報告した。


 ・・騎士団は絶句した。それは人間でも魔物でもない。得体の知れない何かという印象のみである。


 アルトリネは。


「・・・そんな存在が今まで確認できていないだけでなく、いきなりの襲撃。それも研究室のみを破壊。・・・誰かが指示して行動した?・・・だとすれば教皇以外にもこの件に関係している者が?・・」

 

 思考の海に入っていった。


 しばらく見守っていたがさすがに次の行動を指示してくれなければ動きようが無い。


 騎士が`あの、ご指示を`の言葉にアルトリネは。


「・・はっ。・・失礼しました。・・では、証拠品の整理と保管。研究員達を取調室に、研究室の鎮火が完了しだい封鎖。・・外でも動揺が走っているでしょうから。私が行きます。・・・以上です。行動開始してください。」


 騎士団に命令を下した。


 事態は急変し、やる事も増えたが、それでもこれ以上の犠牲が出る事はない。・・・今はそれだけで充分である。







 ????サイト




 教会の森深く。そこには四匹の魔物がいた。


 `竜王バムハル``叡智レドルザ``運命ルムビ``千毒ラテス`・・・教皇の思惑を影ながら支援し、願いを叶えさせた元凶。


 ルムビは。


「・・それにしても。研究室だけでなく、教皇まで殺すとはねぇ~~~。生かしておいた方が面白くなるんじゃない~~~?」


 この疑問にレドルザは。


「・・あの教皇がローデルのように扱いやすい人間ならな。・・・行動や性格から同類だと思っていたが、戦いになった途端。・・別人のように冷静になった。異世界人の特性にも早くに検討をつけていた。経験と実績は本物という事だ。生かしておくとデメリットしかない。」


 この説明にラテスは。


「・・叡智殿の言うとおり。・・・懐柔しやすいと油断したらこちらの寝首を掻きにいく可能性がある。我々に付いて協力する事は絶対に無い。それが教会の騎士だ。」


 確信じみた答えである。


 教会は基本、魔物を討伐する事が信条であり、利用する所が捕獲すらしない。現に教会の冒険者ギルドは新入試験は他国のように魔物を使う事はせず、騎士団に依頼して試してもらうのが決まりになっている。


 ルムビは。


「・・なんかつまんないやつねぇ~~~。始末してよかった?て感じ?・・・にしてもどんな毒を使ったの?」


 この質問にラテスは。


「・・あぁ、大したものではない。教皇が服用した若返る薬に使った促進剤。あれの効果を逆転、つまり抑制させたのだ。・・・その結果、若い状態を保つ効果が上手く働かずに停止。・・戦いの最中に使用したスキルや聖剣の魔力消費に加え、あの重傷。・・・自滅してもおかしくない。」


 微笑みながら手元にいる蚊を眺めながら答えた。


 ・・・戦いが終わり、教皇が立ち上がった瞬間に音もなく蚊が近づき、首筋に毒を注入したのだ。・・・毒の効果もさることながら、教皇はかなりのご高齢。無茶な運動などできるはずがない体だ。


 ・・・しかし、若返った事でそれを気にする事無く暴れたのだ。


 効果が抑えられれば今までの反動で老ける以上に動きすぎで死んでしまう。・・・要するに過労死である。


 ラテスは。


「・・叡智殿、証拠隠滅に協力を感謝する。あのキメラのようなナイトゾンビの性能はどうでしたか?」


 この質問にレドルザは。


「・・まずまずと言った所だ。・・・力は勿論、動きにも問題はない。制御の方もファルコンに任せた状態。・・・実験は成功です。」


 喜びに満ちあふれていた。


 ラテスは`そうか`という表情で同意した。やはり、制御を任すにはそれなりに知能が高く、簡単に倒されない存在が一番という事か。


 やり取りがあらかた終わったのを見計らってバムハルは。


「・・では此度の件はこれにて終了だ。・・・これから先、人間達は混乱と収拾に全力を注ぐだろう。・・・それに、しばらくは騒動を起こしそうな人間も居ないようだからな。」


 この言葉に三匹は同意した。


 帝国の第二王女と教会の教皇。・・・この二人と同等の野望と欲を持っている者はいない。それに加えて、帝国は新たに即位した皇帝は平和主義者。教会は誰が上に立つかは知らないが少なくとも野心溢れる人物は今回の功労者達にはいない。

 ・・・王国と共和国は変化はないが。・・二人の王は野心や欲望を全く持たない人間。王国の国王は騒動が嫌いで平穏を大事にするタイプ。共和国の国王は仕事一筋でそれ以外は何もしないタイプ。


 何かが起きる可能性はゼロである。


 バムハルは。


「・・では、帝国の時に言った。しばらくは自重する件。・・・ここから始める。他の三匹にも伝わっているだろう。我々の手出しは禁止とする。・・・異論はあるか?」


 この言葉に三匹と遠くから聞いている三匹は沈黙した。


 七天魔も分かっている。・・・これ以上の介入は戻る事のできない戦争になる可能性がある。負ける気はしないが、面倒くさいことこの上ない。

 面白そうだから手を出したり、支援することはあるが、つまんない事には一切手出ししない。


 それが`七天魔`の方針である。


 バムハルは。


「・・では、これにて解散。」


 その言葉と同時に黒い霧が四匹を覆い、姿を消した。








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