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狩人の変わった生活  作者: 満たされたい心
第三章 狩人とは
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第125話 シンスケ対アレイスター。

  






 教皇の間で倒れるアルトリネ。・・・その側には炎のように煌めく大剣を持った男がいた。


 私は冷静に周囲を見渡した。


 部屋の中には無数の騎士達の死体。・・左隅には倒れる三人の大司祭。・・右には腹から血を出して倒れている老人。おそらく、あの人が枢機卿。・・・情報提供してくれた人物だ。


 ・・教皇は。


「・・おやおや。残りの騎士団が来たか?だが、遅かったな。団長はこの通り、虫の息だ。トドメを刺す気はないが。俺を拒んだ。それ相応に躾なきゃいけないんでな。・・忙しい事この上ない。・・今なら見逃してやる。・・とっとと消えろ。」


 愉悦に満ちた顔で宣言した。


 騎士団の表情は怒りで満ちあふれていた。・・・同胞達を殺し、団長を倒しただけでなく辱めようとする外道。・・・許せるはずがない。


 ・・・狂った獣の如く襲いかかろうとする騎士団を見て、私は冷静にスキル`看破`を発動。




 個体、人間。

 性質、肉体変化。

 魔術、火。

 スキル、加速・召喚。

 弱点、なし。




 見落とす事のできない項目に私は。


「!!皆さん!冷静に!!教皇はスキル`召喚`というものを持っています。何を召喚するかは分かりませんが、無闇に突入したら返り討ちに遭います!!」


 叫び声に騎士団は止まった。


 その光景を見ていたアレイスターは。


「・・・ほぅ。俺のスキルを知っている?どこで?・・いや、この事を知っているのは先代教皇と大司祭のみ。・・あいつらが誰かに話す事はない。・・どうやって知った?そこのオワリの人間?」


 かなりの殺気を込めて聞いてきた。


 私は。


「・・俺のスキルで見た。・・それ以外は話す気はない。」


 無表情で答えた。


 自分の能力を自慢げに話すのは戦いにおいて致命傷になる。・・・現に、私はアルトリネのスキルを二つだけ、`猛進`と`肉体向上`以外知らない。・・・噂によれば五つほどスキルはあるという。


 アレイスターは。


「・・何も話す気はないと?・・慎重か?それとも臆病か?いずれにしても早めに殺した方がいいな。」


 殺気があふれ出ていた。


 どうやら私は危険人物に認定されたようだ。


 私は。


「・・・騎士団にお願いがあるのですが。・・」


 続きを言う前に騎士が。


「・・分かっている。団長を連れて下がれだろう?・・正直、屈辱だが。・・勝てる気がしない。後を頼む。」


 全員同じ気持ちである。


 私はティナに顔を向け。


「・・ティナ。・・手出し無用。」


 この言葉にティナは頷いた。


 私は剣を抜き。


「`雷人招来`!!」


 雷魔術の強化を発動。


 一足でアレイスターに向かった。


 アレイスターは剣を構えて。


「・・スキル`加速`。」


 一瞬で消えた。


 私は慌てる事無く止まり、周囲に気を配った。・・・いかに相手が速かろうが攻撃する際には殺気がある。前にそんなマンガを読んだ事がある。

 その時、首筋に冷たい気配を感じた。


 私は剣を左側の首辺りで防御した。・・・次の瞬間、`ガキィィィン`と激しい音が私のすぐ側。防御した剣から響いた。

 ・・・音が止んだとき、そこにはアレイスターの横薙ぎからの剣が現れた。


 アレイスターは。


「・・ほぅ、俺の動きが見えたのか?それとも勘か?・・いずれにしてもお前は先に始末するという俺の考えは正しかったようだな!!!」


 そう言って剣に力を込めた。


 両手で押さているのにすごい力。`肉体向上`もなければ筋力を増強するスキルもない。・・と言う事かは元の力という事になる。


 肉体のレベルは高いと感じた私は。


「・・`火焔達磨`!!」


 体から炎が吹き上がった。


 驚いたアレイスターはすぐに後退した。・・アレイスターは自分の体をチェックした。マントは少し焦げたがすぐに鎮火。・・鎧も無傷。・・剣も無事。だが、髪の毛を触ったとき、少しだけ焦げた髪の毛が手に付いた。


 アレイスターは。


「・・・き、きさま---!!!俺の髪をよくも!!!」


 かなりの咆吼を上げた。


 大声は凄まじく、耳を咄嗟に塞ぐほどであった。・・・アレイスターはひとしきり叫んだ後、肩が上下するほどに乱れた呼吸を整えていた。


 そして、顔を上げたとき。


「・・・失礼。取り乱した。・・貴様ごとき低俗な輩にムキになるとは、俺も大人げない。」


 何故か冷静になっていた。


 だが、分かる。・・・あの髪の毛はアレイスターにとってはかなり大事な物。でなければ見た瞬間からあそこまで大声を上げる事はない。

 人間は大事に思っている物を傷つけられるのを極端に嫌う。


 当然のことだが、それを他人が知っているかというと知らない事も当然。・・・知らないうちにやってしまう事もよくある。・・・だからこそ、大声を上げた時点で髪の毛が大切だとすぐに分かった。


 私は。


「・・冷静になっても今の事を無かった事にはできないと思うが。・・ひょっとして昨日まではハゲだったとか?」


 憶測且つ挑発の発言をした。


 ・・・まぁ相手が百戦錬磨の強者ならこの程度の挑発には乗らないと思っている。例え、計画が成功し有頂天だったとしてもだ。・・・私は苦戦を覚悟で剣を構えた。


 だが、アレイスターは何故か震えだし。


「・・きさま。忘れたいことを堂々と。・・絶対に殺す!!」


 怒り顔のまま突撃した。


 しかもスキルを使わずに。・・・正直、拍子抜けである。あんな子供じみた挑発に乗るとは短気すぎる。

 私は冷静に剣で突進してくる大剣を受け止めた。


 ・・・力が向こうの方が上ならば受け流す。・・・大剣は流れる水の如く左に逸れた。私は間髪入れずに剣を斜め左下から攻撃した。・・・アレイスターの鎧に傷跡を残したぐらいで本体には届かなかった。


 私は追撃しようとしたら。


「・・スキル`加速`」


 一瞬で視界から消えた。


 アレイスターは私の前方から十メートル離れた場所に立っていた。・・・アレイスターは自信の鎧を見た。・・一筋の線。しばらくしたら消える擦った物では無く。一生消える事のない線。


 アレイスターはすぐに顔を上げ。


「・・俺の鎧によくも。・・・だが、激情に任せて勝てる相手ではないな。仕方ないな。・・・」


 不気味な笑みを浮かべた。


 ・・その時である。私の背後から嫌な気配を感じたのは。・・・私は直感に近い感じでしゃがんだ。すると、私の頭を通過する何かが飛来した。

 すぐに見上げると回転する物体である。


 円盤?UFO?・・そんな考えをしていると物体の回転が止まった。


 現れたのは剣だ。ロングソードだがどこか禍々しい雰囲気を出していた。


 後方にいる騎士が。


「・・バカな。あれは。・・・」


 驚きの声を上げていた。


 チラッと見るとアルトリネは騎士団に回収され床で眠っていた。助け出す事には成功したようだ。


 だが、今はそれよりも私は。


「・・何です?知っているのなら教えていただきたい。」


 急かす私に騎士が。


「・・あ、あぁ。あれはリグレッドソード。・・戦場で無念の内に兵士が死亡したとき怨念や憎悪が剣に宿り、生者を殺す為に浮遊すると言われる魔物。・・だが、あれは数十年前に全滅され、以後、自然発生しないように回収する風習ができた。・・・それ以降、全く出なくなった魔物だ。」


 簡潔に説明してくれた。


 だとすればアレイスターが秘匿していた魔物?それにしては手懐けすぎている。まるで主従関係のように。


 ・・そう思った時私は。


「・・・成る程、`召喚`の力ですか?」


 この質問にアレイスターは。


「・・正解だ。俺のスキル`召喚`は一度見た魔物を召喚し、使役する。数に限りは無いが、魔力が無くなれば消える。・・便利だろう?」


 愉悦に浸っているのか説明してくれた。


 ・・・補足としては何でも召喚できるわけではない。召喚できるのは人間サイズの魔物のみ。つまり、オークやオーガといった大型の魔物は召喚できず、ゴブリンやスライム、ファルコンといった小型の魔物だけである。・・・しかも、召喚する魔物はどこかに生息する物では無く、術者の魔力で構成された無垢の存在。・・・それには意思はなく、ただ術者の命じるままに動く人形。

 シンスケには知るよしもない`召喚`の特性である。



 私は内心焦っている。・・・魔物を召喚という事はゴブリン、又はオークを召喚するという事になる。だとすれば早めに決着をつけねばならない。

 幸い、召喚されているのは浮遊する剣一体。・・・対処はできる。


 そう思った時、不意に何かの気配感じた。私は`探知`を発動。・・・周囲に赤い点が三つある。


 私は。


「・・・奇襲をするなら同時にした方が良かったのでは?」


 この言葉にアレイスターは。


「・・気付いたか。・・そうでなくてはな面白くない。」


 指パッチンと同時に周囲にいた物が姿を現した。


 出てきたのは同じリグレッドソード。・・・さっきのと合わせて四体。まずい、二刀流にしても不利。・・・今のままでは対処は無理。


 私は。


「・・ならば、こちらも出し惜しみ無しでいく!・・スキル`物質変換`!!」


 地面に手をつけ、大理石の床を鉄に変えた。


 そこから無数の鉄の触手が伸び、私の周囲を囲った。・・・触手はタコのようにうねりながら得物が来るのを待っていた。


 アレイスターは。


「・・周囲を把握し、俺のスキルを見抜き、身体増強に加え、物質を変換し操る。・・・少なくとも四つはあるという事か?・・・貴様、本当に何者だ?」


 警戒心を強めていた。


 私は。


「・・・ただの狩人だ。それ以上でも以下でもない。」


 真剣な顔で答えた。


 さすがに異世界人だと言うわけにはいかない。・・・どんな情報も相手にとっては有利になるだけだからだ。


 アレイスターは。


「・・そうか。ならば、死ぬがいい!!」


 その叫びと同時にリグレッドソードと共に突撃してきた。


 私はスキルで鉄の触手を操った。・・相手の手数が多いのならばこちらはそれ以上の手数を用意すればいい。・・・しかし、このやり方は初めてだ。


 ハッキリ言ってぶっつけ本番。


 しかし、あらゆるアニメやマンガを見てきた私は当然、触手が動く物も見ている。・・・悟られる事無くリグレッドソードの行動を封じるのは簡単。・・多分。

 回転する剣が四方八方から襲いかかってきた。


 それを鉄の触手が迎撃する。・・・本来ならばすぐに切断される所だが、鉄でできている。簡単には斬れない。

 アレイスターはその隙をついて大剣で襲いかかってきたが、鉄の触手がムチの如く迎撃。大剣を弾く。


 アレイスターは。


「・・ちっ。炎よ。燃え上がれ!!」


 大剣から炎が噴出。


 驚く事はない。・・魔術が火と表示されていた。


 私は。


「・・炎よ。纏え!」


 鉄の触手に炎が纏った。


 雷にしようかと思ったがそれだと迫力が無い。・・・火の方が例え威力がなかろうと相手を牽制するのにうってつけである。

 炎の触手が炎の大剣に対抗。・・・当然ながら回転剣にも注意を向けている。


 激しい攻防。回転剣が接触しては離れ、アレイスターも思い通りに事が運ばず、顔の額にシワを寄せている。・・・少し焦っているのかそれともイラついているのか?・・そんな中、回転剣に異変が生じた。


 触手に体当たり。長く当たり続けている。・・・力押しによる強行突破か?私は触手を回転剣をはたき落とした。・・・勢いをなくした回転剣を纏わせるように触手を動かした。


 四本の剣は止まった。


 その時である。頭上に影ができたのは。・・・上を見上げるとアレイスターが上段構えで落ちてきた。






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