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狩人の変わった生活  作者: 満たされたい心
第三章 狩人とは
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第122話 集いと念願。








 三日後。昼。


 教会本部最上階。


 教皇並びに大司祭しか入れない部屋で会議がおこなわれた。


 金髪の大司祭が。


「・・教皇様。遂に完成いたしました。」


 その言葉に教皇が。


「・・そうか、完成したか。・・・長かった。実にな。」


 薄ら笑いをした。


 この報告は教皇にとって最も聞きたかった言葉。・・・待ち遠しかった言葉。・・・狂い笑いをし、目が正気ではなかった。


 茶髪の大司祭が。


「・・しかし、臨床実験はされたのですか?」


 この疑問に金髪の大司祭が。


「・・問題ありません。実験は複数回しました。・・・いずれも成功でした。まぁ被検体には今後の実験に使いますが。」


 邪悪な笑みである。


 ・・新薬の恩恵を受けて良いのは教皇様だけ。他が享受していいわけがない。・・しかし、殺すのも勿体ない。その為に色々と実験をする。幸か不幸か、新薬の影響で中々死ねない。


 ・・教皇が。


「・・ふふふ。実に素晴らしい響きだ。・・・それで?いつ頃開始できる?」


 期待に満ちた目。


 金髪の大司祭が。


「・・お望みとあらばすぐにでも。」


 この言葉に教皇が。


「おお!!そうか。ではすぐにやろう。」


 そう言って立ち上がった。


 その時、傍観していた白髪の大司祭が。


「・・とすると騎士団長を連れていきますかな?・・あの娘の出番がきたのだから。」

 

 この言葉に教皇が。


「・・まだだ。研究室で一部始終見せたいと思うが。・・少しつまらん。・・成功し、私の姿を見せる時に連れてくるように審問官に厳命せよ。」


 この指示に白髪の大司祭は敬礼した。


 その時、傍観していた枢機卿は。


「・・では教皇様。早速向かいましょう。・・皆が待っております。」


 この言葉に教皇は。


「・・おぉそうか。さっさと行くとしよう。・・世紀の瞬間を見逃さないようにな。」


 上機嫌で席を立った。




 五人は研究室に向かった。


 そこには、数多くの研究員が並び、中央のフラスコの道を妨げないようにしていた。


 教皇がフラスコの前に立つと金髪の大司祭が。


「・・では教皇様。早速、新薬を投与させていただきます。」


 そう言って注射器を出した。


 中には金色に輝く液体が入っていた。・・・教皇は頷き、右腕を差し出した。大司祭は躊躇いなく注入した。


 ・・投与が完了すると大司祭が。


「・・では、この中に入ってください。体が安定するまで液体が教皇様を守ります。ご安心を呼吸はマスクがあります。」


 フラスコの頂上に続く道を指し示した。


 教皇は疑う事無く進み、到達すると。上からロープで吊られた台が降りてきた。教皇がそれに乗るとフラスコの中に。

 ・・下に到達し、台はせり上がり、変わりにチューブに繋がれたマスクが降りてきた。


 教皇が装着すると同時に大量の緑色の液体が流れ込んできた。その勢いは弱いまでも四方八方から流れ込んできているのであっという間にフラスコの中を満たした。


 それを見ていた枢機卿は。


「・・これでようやくか。・・」


 誰にも気付かれる事無く呟いた。









 アルトリネサイド。


 彼女は今、特別室で吊されていた。・・表向きは執務室で仕事をし、誰であっても入室は許可しないという名目で。・・彼女の息は荒く、鎧の所々に擦れた後がある。

 今まで何をされたのか想像がつく。


 審問官が。


「・・ふふっ。ようやく素直になったはね♡・・・そうでないと貴女の教育係として私の立場が無いわ。」


 そう言いながら彼女の顎を猫撫でした。


 彼女は少し疲れた顔をして。


「・・一つ良いでしょうか?・・何故、こんなことを?」


 この質問に審問官が。


「その質問何回目?結構聞いてるわよ?・・でもダメ♡・・大司祭様から完了するまで秘密にするようにと言われているから。・・・で・も♡・・今日で教育は終りだからヒントだけあげるわ。・・・貴女が無駄な抵抗しないようにするのが私の仕事。」


 妖艶な笑みで答えた。


 この答えに彼女にとって想定内である。・・今まで何度も聞いてきた事で理解していたからだ。しかし、ある時、彼女は知った。

 ・・何故、自分にこんな事をするのかを?それを聞いたとき、彼女は不快且つ嫌な感覚を味わった。


 審問官が。


「・・あら?何を考えているのかしら?・・顔が不愉快と書いているわ?・・・これは教育が必要ね!!」


 その叫びと同時にムチと悲鳴が木霊した。








 シンスケサイド。


 夜。


 この三日間、アルトリネの情報に進歩は無かった。審問官にいくつか質問したが実のある物はなかった。

 ・・こうなっては破れかぶれだと思った矢先。彼女の情報に()()()()が接触し、事の真相を聞いた。・・・正直、やる意味は分かるがその後が分からないと思う内容である。


 ・・・教皇の目的。・・・新薬の正体。・・・アルトリネの処遇。・・これらの事が一つに繋がる程の事であった。


 ・・・人気が少なくなり、誰もが寝静まった頃、私は。


「・・・さて、ここから先は絶対に勝たなければ俺たちに未来はない。・・そんな戦いに身を投じるとは俺の人生はどうなっているのだ?」


 本気で考えさせられた。


 隣にいるティナは。


「・・そう言うことを言うと私も思ってしまいますよ。・・いくら内容が見過ごせないとはいえ、一冒険者が関与して良い事例ではありませんから。」

 

 そう言ってため息をついた。


 そんな彼女に私は。


「・・・後悔しているのか?俺と一緒にいることが。」


 この言葉にティナは。


「・・後悔?そんなものはありません。・・先ほどの意見は冒険者としての意見です。・・・個人としては愛する人と友人を助ける為に行動する事に何の迷いもありません。・・それに、二日前にも言いましたが。私を安全な場所に送るのはやめてください。・・・私の覚悟を汚さないでください。」


 まっずぐな瞳である。


 私は。


「・・・そうか。これ以上は何も言わない。・・・そう言えば、あの囚人が騒いでいないと聞いたときは驚いた。何かの間違いかと思った。」


 強引に話を切り替えた。


 あの囚人、侵入したときに出会した迷惑男だ。あの後、男は騒ぎを起こさず、何もしていなかった。不審に思ったマリアルが訪ねた所。

 `昨夜?・・何かあったような気はするが、何も`という返事だった。


 どうやらスタンガンの威力が強すぎたのか、記憶が飛んでしまったようだ。・・不幸中に幸いであった。

 ティナは。

 

「そうですね。これで不安要素が消えて良かったです。・・それにしても情報提供者があの方とは?余程、気に入らなかったのでしょう。」


 そんな感想を述べた。


 それについては同意できる。いくら上司の命令とは言え、やって良い事と悪い事がある。それを見極めて進言する人物がどれだけいるのか?・・ある意味、希少な存在と言える。 


 そんな考えをしていると、目の前にマリアルが現れ。


「・・準備が整いました。こちらへ。」


 そう言って案内されたのは教会本部の隣にある騎士団の詰め所。


 そこには騎士甲冑に身を包み、命令を待つ騎士達。・・・総勢三十名。


 ・・その一人が。


「お話はシスターマリアルからお伺いしております。・・共に団長をお救いし、この国の安寧を守りましょう。」


 そう言って手を差し出した。


 私は。


「・・俺にできる事はたかが知れていますが。全力でやらせていただきます。」


 握手した。


 そのやり取りを見ていたマリアルは。


「・・では作戦の概要を説明します。・・まず、騎士団は三つに分かれてください。・・一つはアルトリネ様を救出し教皇と大司祭三名を捕縛。二つは研究室の掌握。三つは教会の出入り口を全て封鎖し、何人も通さない。」

「・・そして、シンスケさんとティナさんはアルトリネ様の暗示を解き次第、研究室に向かってください。・・理由としては国のトップは騎士団で捕える事が大前提である事。それと隠し部屋がある可能性がありますのでシンスケさんのスキルが有効です。・・・何か質問は?」


 この言葉に騎士の一人が。


「・・あの、私は出入り口封鎖チームですが。・・もし、信頼できる兵士が現れても中には入れないでよろしいでしょうか?」


 この質問にマリアルは。


「・・我々のおこないは謀反です。・・・例え、友人だろうと信頼できる人であろうと作戦に支障をきたす可能性が一%でも増やしたくありません。・・何か言いたい事はありますか?」


 騎士は首を横に振った。


 ・・そう、これは謀反。例え教皇が非道をしていても証拠を揃えていない状態で国のトップにケンカを売る事は御法度。・・・しかし、証拠を集めるのに研究室に向かわなければならず。・・・しかも警備は厳重。

 最初に集中して攻めて、証拠を手に入れたとしても教皇が大司祭の独自判断だとすれば丸く収まる。・・・その後は狡猾に静かに実行する。・・・だからこそ今しか無い。


 教皇が薬を投与し、有頂天になり、言い逃れのできない状況にすれば捕まえられる。


 ・・今夜が最大最後の好機である。


 他に質問が無いと判断したマリアルは。


「・・・・それでは作戦を開始します。」






 時は少しだけ遡る。


 研究室にいる職員達と大司祭達は驚愕の表情をしていた。・・・中央にあるフラスコが突如として泡立っていたからだ。

 その勢いは凄まじくまるで温度九十度以上の沸騰しすぎたお湯そのものであった。


 周囲の者達は慌てていた。・・・この中には教皇様が入っている。万が一死んでしまったら死刑を一千回受けても足りないほどの罪である。・・・どうすればと混乱している瞬間。


 フラスコから飛び出る影があった。


 研究員達と大司祭達がそれを目で追った。・・影が着地すると同時にその姿はハッキリと見えた。


 身長百八十センチ。赤い短髪。上半身裸で下半身は布製のズボン。体の肉質は中肉といったイメージだが弱いと感じられない。・・・何故なら体から発している覇気と魔力が凄まじく、周囲の者達は固唾を飲む感じで見守っていた。


 フラスコから出てきた男は。


「・・くくっ。・・ハーハッハッハッハッハッハ!!!!戻った!!戻ったぞ!!!俺に若さと力が戻った!!!!髪の毛も戻った!!スキルも!!魔術も!!これで使いたい放題だ!!!」


 高笑いをして己の理想が叶ったと興奮している男。


 教皇アレイスターである。








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