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狩人の変わった生活  作者: 満たされたい心
第三章 狩人とは
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第120話 発表と秘密。







 翌朝。


 私たちは隠れ家で起床。


 パンとスープの簡単な食事を終え、教会の広場に向かった。


 ・・・昨日のアルトリネの処遇や侵入について、気になるからだ。


 ・・広場に到着すると、何やら騒がしい雰囲気であった。


 騎士達が横並びに教会本部の前に立ち。・・人々も何かを待っているようだ。私たちも自然な流れで民衆の中に入った。

 しばらくすると門が開き、そこから現れたのは神官の中でも特に選ばれた人間が着るような高級感ある司祭服姿の茶髪の老婆と騎士団長アルトリネである。


 ・・アルトリネの姿を見た人々は。


「・・アルトリネ様、ご無事で。」

「・・大司祭様が一緒とは一体何が?」

「これからどうなるんだ?・・」


 安心と不安が入り交じっていた。


 ・・あの老婆は大司祭か。と言う事は上層部はほぼ真っ黒と考えるべきだな。


 大司祭が。


「・・・皆の者。・・昨日報じられた騎士団長アルトリネの謀反ついてだが。・・あれは誤情報だった。かの乙女の騎士を貶める為にある騎士がでっち上げの報告をしたのだ。・・無論、捕縛しようと動いたが、その者は逃亡の末、森の中で死んだようだ。」


 この発表に人々は安心と歓喜の声を上げた。


 ・・これからわかるようにアルトリネの人気は高いのだ。


 歓声の中ティナは。


「・・・隠蔽工作は用意済みだったと?・・・その騎士は身代わりなのでしょうか?」


 この言葉に私は。


「・・どちらかと言えば捨て駒だな。・・適当な騎士に罪を着せて彼女の謀反は偽りであり、悪いのはそいつにすれば話が進んで楽になるという所だろう。」


 不愉快な気分で言った。


 ティナは少し怒気を込めていた。・・・当然だ、自分たちの都合の為に殺されたのだ。その者の恨みや怒りはどれ程のものか、又、聞かされたであろうアルトリネの心情もどれ程の物か。


 ・・しかし、彼女は何も言わず、少し俯いて黙っていた。


 何か言いたいようだが言えない。・・鎧で見えないが金の首輪をつけられているのだろう。


 ・・彼女は薬で発情しきった体を抑えている効果。・・解除されれば羞恥など関係ない状態される。


 ・・まぁ実際はティナの暗示が掛かっていてそう思っているだけだがな。アルトリネが出てきた以上、奴らは薬が効いていると思っているのだろう。


 そう思っていると大司祭が。


「・・以上の事から騎士団長は任を解かれる事無く継続する事が決定された。・・不安な日であったろうが、これにて解決した。」


 締めくくりの言葉に人々は安堵の空気で満たされた。


 それを見届けた大司祭はアルトリネと共に中に入っていった。・・・扉が閉まると人々はそのまま散り散りになっていった。

 私たちも去り、街の中を歩く事にした。


 ・・その道中、私は。


「・・さてと、後はアルトリネの連絡待ちだな。・・・方法は分からんが、直接来る事は無いだろう。そんな事をすれば上層部がどんな行動に出るか分からんからな。」


 この言葉にティナも頷いた。


 ・・完全に後の先のやり方だが、今はこれ以外に方法が思いつかない。



 ・・・昼食をカフェの店で軽く済ました後、私たちに近づくシスターがいた。


「・・・失礼します。・・お花を無料でお配りしております。・・お一つどうですか?」


 花束を差し出してきた。


 私たちはいらないので断ろうとしたとき。


「・・アルトリネ様からの皆様への不安にさせた償いだそうです。」


 小声で話してきた。


 私たちはこれか?と思いつつ花束を受け取った。・・シスターはそのまま他人々にも配っていった。


 ・・・私たちは隠れ家に直行。・・中に入り、花束を確認した。


 すると中から手紙が出てきた。内容は、`今夜、秘密を明かす`と書かれていた。・・どうやら上層部は完全にアルトリネを支配したと思っているようだ。


 私は。


「・・随分早くに暴露するんだな。完成間近か?それとも自慢したいだけか?どちらにせよ今夜辺りで分かればこっちのもんだ。」


 相手の秘密が分かれば対処の方法に検討がつく。


 ・・世の中、一番恐ろしいのは。知らない事。未知の遭遇は危険極まる。好奇心を滾らせると言われる事もあるが、基本的には怖いだけである。

 ・・だが知ってしまえば怖くは無い。


 例え、どんな困難だろうと解ってしまえばどんな準備をして良いのか?どんな作戦を立てられるのか?・・・やり安く楽になる。

 例えるならゲームの攻略本を手に入れればボスの弱点や戦法も分かるので楽勝。


 ・・ティナは。


「・・とはいえ、何もしないのはよくありません。・・ある程度の道具を調達した方がいいでしょう。・・ポーションとか毒消しとか。」


 この言葉に私は頷いた。


 そうと決まれば買い出しである。・・・幸い、金はたんまりある。







 アルトリネサイド。


 夜。私室。


 彼女の心情は悪い。昨夜、飲まされた媚薬。・・・解毒はされたが今は暗示でそう思わされている。


 だが、この効果で審問官や大司祭を騙す事に成功した。・・・罪悪感は無い、相手は何か企んでいる以上探らなければ。


 そう思っていると。


「・・あら?不機嫌ね?今の待遇は嫌かしら?」

 

 審問官が現れた。


 ノックもなしに来るのは失礼極まる。・・・だが、彼女は何も言わない。・・言った所で無意味であり、何をされるか分からないからだ。


 そんな態度に審問官が。


「・・生意気ねぇ。・・これは教育が必要かしら?」


 舌なめずりした。


 彼女は身構えた。


 しかし、審問官が。


「・・と言いたい所だけど、大司祭様がお呼びよ。」


 呼び出しであった。


 ・・教会内でも極秘扱いされる部屋。一体何を企んでいるのか?彼女の考えはいかにして未然に防ぐ事ができるのか?それだけである。


 ・・案内され、着いた場所が例の騎士達が守る部屋。


 審問官が合図を出すと扉が開き、中に入った。


 ・・そこには、ビーカーや試験管など数々の実験道具や貴重で中々手に入りにくい薬草が並べられていた。

 そして、一番注目したのが、目の前にある巨大なフラスコ。・・・人一人分楽勝に入れるサイズ。


 彼女は。


「・・何ですか?ここは?・・薬の実験室にしては異様な。」


 あまりの事に言葉が見つからない。


 ・・この雰囲気は新薬の作成だと分かるが、妙に違和感というか禍々しさを感じる。


 絶句している中、近づいてきたのは金髪の大司祭。


「・・ようこそ、騎士団長。我が研究室に。・・君がここの事を探っていると聞いて先手は打たせて貰った。・・まぁどっちみち、君は媚薬を飲むことに変わりは無いのだが。」


 薄ら笑いであった。


 彼女は。


「・・どういうことですか?・・私にあの薬を飲ませて、いった、い!!」


 続きを言う前に体に強烈に熱い物を感じた。


 呼吸が荒く、立っているのがやっとだった。


 隣にいる審問官が。


「・・ちょっと、あまり不遜な態度はとらないでくれる?・・自分の立場を忘れたの?」


 悪い笑みで右手の金の指輪を見せつけた。


 ・・あの指輪は首輪の制御装置。使用者の思念でオンオフをすることができる。・・・首輪の効果がなくなり、発情状態にされた。

 あまりの苦しさに片膝をついた。


 それを見た大司祭は。


「・・それくらいにしたまえ。・・話が進まない。」

 

 その言葉に審問官は手を引いた。


 首輪の効果が発動し、通常状態に戻った。・・・深い呼吸を繰り返していると。


 大司祭は。


「・・・そのままでいいから聞きたまえ。・・我々は教皇様の命により、ある薬を開発していたのだ。しかし、それがとても難航していてね。材料所か作り方すら分からず、困っていたのだ。・・そんな時だ、私がある露天商の薬売りに出会ったのは。・・・最初は胡散臭い商人だったが、その薬はかなりの貴重な代物ばかりだった。・・ダメ元で私は新薬のことを話したら、これを渡してきたのだ。私が求める新薬に近い薬が。」


 そう言って出してきたのは小瓶に入ったオレンジ色した薬であった。


 見せられた彼女は何の薬か分からず悩んでいた。


 それを見た大司祭は。


「・・分からないだろう?・・これはな、促進剤だ。・・あらゆる物に働きかけ、活性化させ、増大させる。その効果は素晴らしい。・・これを使っていくつかの実験をおこなったが、成功だ。・・・まぁ、被検体は全員死亡したがな。」


 そう言いながら鼻で笑った。


 彼女は不快感を露わにしようとしたが、審問官の目つきで押さえ込んだ。


 大司祭は。


「・・そして!!これを手に入れてから我々は天運に恵まれた!!・・見つからないと諦めていた貴重な薬草が次々と見つかり、実験の成果も向上!!数ヶ月か数年かかると思われた新薬があと三日で完成だ!!」


 芝居がかった台詞を言いまくった。


 彼女は冷静に。


「・・その新薬とは何ですか?・・聞かせて貰っても構いませんか?」


 あくまでも丁寧口調で尋ねた。


 調子に乗ったのか大司祭は。


「・・・教皇様が伝説になる薬だ。」


 狂った狂信者の笑顔で言った。






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満たされたい心
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