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狩人の変わった生活  作者: 満たされたい心
第三章 狩人とは
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第119話 救出と脱出。







 アルトリネの救出に成功した。


 敵に見つかる事無く、遂行できた。・・ある意味奇跡である。


 アルトリネが。


「・・・申し訳ありません。あなた方にこんな危険な目に遭わせて。」


 謝罪の言葉に私は。


「・・手伝うと言ったろう?・・・捕まったからと言って`ハイ帰る`なんてのは気分が悪い。・・それだけだ。」


 普通に話した。


 アルトリネは何故かそっぽを向いた。


 それを察したティナは。


「・・で?なんで捕まったのですか?」


 話を強引に戻した。


 アルトリネは気を取り直して。


「・・そ、そうですね。・・まず、私は情報を集めようと教会内を調査していました。・・団長の地位ですから大概の場所には入れたのである程度は集まったのですが、その時に私の知らない極秘の研究室があることが分かったのです。・・・そこに向かう途中、教皇側近の騎士達が立ち塞がり入る事ができなかったのです。」


 そう述べた。


 私は考えながら。


「・・教皇側近の騎士?・・アルトリネの命令でも動かないということか?」


 マンガでもよくある職。


 とある人物の側近は例え、自分よりも上の立場の人間からの命令でも動かない。・・・秘密を共有し、その恩恵を得る。・・恐らく、外道の類い。


 アルトリネは。


「・・そうです。彼らは教皇の命以外には絶対に動かない。・・諦めて、今まで集めた情報でシンスケ達と相談しようと思いました。・・・整理しているときに側近の騎士達が突然現れ、私を拘束したのです。・・`教皇の命だ`とその一点張りで。」


 暗い顔をした。


 ・・・いきなり現れて訳も分からずに捕まったか。一番キツく辛い仕打ちである。


 私は。


「・・街では貴女が謀反の疑いで捕縛した事になっていますが。・・知っていますか?」


 この言葉にアルトリネは。


「・・私が謀反?・・何故、そんな事に。・・」


 驚いていた。


 どうやら知らないようだ。


 私は簡単に説明し。


「・・上の連中が君を捕える為に都合の良いように提示したのだろう。・・欲深い奴がよくやる手だ。」


 舌打ちをした。


 ・・地球でも不正や失敗をすれば他人に押しつけたり、ウソを報告する。・・人間の醜い事この上ない。

 アルトリネは沈黙し項垂れていた。


 ティナは。


「・・さてと、救出も成功しましたので脱出しましょう。・・・今は逃げる事を考えましょう。」


 その言葉に私は頷いた。


 何時までもここに居る理由は無い。


 立ち上がろうとしたときアルトリネが。


「・・いいえ。私は逃げません。」


 驚愕の言葉である。


 私は目を見開いて。


「・・どうしてだ?!今逃げないと殺されるかもしれんのだぞ!?」


 当然の反応である。


 このままでは秘密を知った人間は消されるのが常識である。


 アルトリネは。


「・・それは心配ないと思います。・・審問官は私に発情させる媚薬を飲ませ、首輪を使って操ろうとしていました。殺す気なら投獄された時点でしています。」


 冷静に答えた。


 私は。


「・・?媚薬?・・何をされたのだ?」

 

 この質問にアルトリネは赤面しながら審問官にされた事を説明した。


 聞き終えた後ティナは。


「・・・確かに、傷をつけるなと命令されたのなら何かに利用しようとしている。・・・媚薬で体の制御ができなくなり、首輪でそれを操作、逆らおうとすれば発情させる。・・・女を操るのに好都合ですね。」


 最後の部分は怒気を込めていた。


 当然である。私もそういう趣味はあるが、相手が嫌がる事は絶対にしない。・・・後味が悪い。


 ・・私は。


「・・とするとこのままアルトリネと一緒に逃げるのは得策では無いな。・・・逃げたら指名手配を受け、国民達の信頼も低下。・・・捕まったら犯罪者の烙印を押されて強制労働かそれ以上の事をされてもおかしくは無いか。」


 簡単に未来像を描いた。


 ・・・逃げる事は起死回生を得るチャンスだがそれまでは犯罪者として追われる日々になる。・・・アルトリネに味方してくれる人はいるかもしれないが、疑心暗鬼に落ちる可能性がある。

 ・・・ならば、相手の策に乗るのも一つの手かも知れない。


 私は。


「・・・しかし、解毒剤を飲んだ以上。効果が切れている。・・バレるのも時間の問題だ。」


 不安の言葉を発した。


 ・・・いくら芝居をしてもボロが出る可能性がある。ましてやアルトリネはそういう役者には不向きだ。真面目すぎてウソをつけない。


 アルトリネは考え込んで。


「・・・その通りです。・・・ですのでティナさん。頼みがあります。・・・私に暗示を掛けてくれませんか?」


 この提案にティナは。


「・・それは無理ですよ。・・アルトリネさんは魔力が高くて掛けにくいのです。それは知っているでしょう?」


 困ったように答えた。


 ・・確か、前に警察官二人を暗示にかけたときは魔力が無い故にできたこと。・・アルトリネのように魔力が高ければ不可能。


 アルトリネは。


「・・・いいえ。一つだけ方法があります。・・・この磔台の枷には魔力を封じ込める効果があります。・・・驚くのも無理はありません。私もここに磔にされたときに聞かされたのです。・・・ですので、私が再びここに磔になり、ティナさんは暗示を込めた水を飲ませてください。・・後は、あなた方くる前の状態にするだけです。・・・無論、暗示を解除できるように私たちだけしか知らない言葉でお願いします。」


 説明した。


 ・・・枷にそんな効果が。・・まぁそれが無ければ大人しく捕まる魔術師はいないか。


 私は。


「・・・ならば、`日本`はどうかな?・・・異世界の英雄物語は教会にはあるが、聞く限りではフィンランドあたりの人かも知れない。・・・そんな人が日本を知っているはずが無い。・・どうかな?」


 この言葉に二人は頷いた。


 ・・早速行動を開始した。



 ・・・私はアルトリネを磔にし、ティナは暗示用の水を作成。空になった解毒剤に喉が渇いたときの為に持ってきた緑茶を入れた。

 ・・・暗示の水が完成し飲ませた。


 ティナはアルトリネの前で。


「・・・あなたは発情するいけない女。・・・その火照りは自分では抑えきれない。・・・解放の言葉は`日本`。」


 暗示をかけ、アルトリネはぐったりと眠った。


 ・・・それを見届けた後、私たちは部屋を出て、脱出した。




 ・・・施設内を慎重に進み、物置部屋に到着。・・・`物質変換`で穴を開けては閉じ、ロープを伝って外へ。無論、ロープは回収。

 ・・・脱出に成功である。



 隠れ家である空き家に向かう途中私は。


「・・・しかし、暗示をかけては俺たちとの連絡はどうするのだろう?・・まさか、今夜の事が全部忘れられるとか。」


 不安の気持ちにティナは。


「・・・問題ありません。記憶は残ります。・・暗示を解く言葉を知っていてもアルトリネ以外の人が言わない限り解ける事はありません。・・・無論、本人がそれを言う事もできません。この世界の暗示はそう言う仕組みです。・・連絡方法は彼女から何かしらの手段を使うでしょう。それを待ちます。」


 説明してくれてありがとう。


 ・・・一安心して帰る途中ティナは。


「・・ですが、分からない事が一つ。何故、外壁をスキルで開けなかったのですか?・・・ワザワザロープを使う必要は無いと思いますが。」


 この疑問に私は。


「・・あの壁は石でできているからな。・・・俺のスキルは鉄に類似する物を変えるが、それ以外に変える事はできない。・・・施設も石造りだが、場所的に考えて兵士が気にする事は無いだろう。・・・しかし、外壁は街の人も見ている。・・何時もと違うと感じられたら兵士を呼ばれて、侵入者がいたと発覚する恐れがある。・・・ただそれだけだ。」


 ティナは納得したように頷いた。


 施設内の兵士達が気にするのは収容された犯罪者のみ。だが、街の人々の中には些細な事で違和感を感じる人がいてもおかしくない。

 ・・・少しでも危険を減らすには入念な準備と注意深さが必須。


 ・・社会人の教育で嫌というほど味わった。


 その時、ティナは。


「・・・そういえば、何か忘れているような気がするのですが?」


 この言葉に私は。


「・・?そうか?・・俺は思い当たらないが。」


 考えたが何も思い出せない。


 ティナも気にしなくなったのか`それもそうですね`と言い、共に帰宅した。




 ・・・牢屋にいる勘違い男を忘れて。・・・




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