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狩人の変わった生活  作者: 満たされたい心
第三章 狩人とは
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第117話 教会の異変。







 翌朝。


 身支度を整えて出発した。


 アルトリネの相談はかなりの国家絡み。・・・世間を騒がせる物であれば阻止したいという気持ち。・・友人として叶えてやりたい。


 ティナは。


「友人として叶えたいですか。・・当然ですが、無茶はしないでください。それで自己破産したら元も子もありません。・・最終的に守る者は自分。それだけは覚えてください。・・いえ、誓ってください。」


 真剣な顔で頼んできた。


 ・・それは仕方ない。友人の為とはいえ自分が犠牲なるのはダメだ。そんな事をするのは狂人か異常者だけだ。

 地球でもよくある話がある。・・・連帯保証人の事件。Aの人間が背負った借金をBの人間が負担するというBには何のメリットもない制度。それを利用してAが借金をしまくれば全てはBにやってくる。・・・ハッキリ言えば迷惑且つ許されないことだ。・・・その昔、連帯保証人になった人が強盗事件を起こした事例もある。


 ・・・この話から他人の願いを叶えるのはリスクが高い。・・・どんな事でもだ。


 正直、教会上層部は国の中枢。・・・高い地位の関係故に危険しか無い。・・・一介の狩人が首を突っ込むべきでは無い。

 しかし、あそこまで頼まれた以上、こちらに被害が及ばない程度は手伝う。


 それでいくしかない。・・・誰だって自分が可愛いのだ。そこを否定したら人間では無い。


 話はかなり逸れた気がするが、私は私にできる範囲で手伝うとアルトリネに話し、彼女も了承した。・・・王都の外を出てしばらくしてから鉄の荷車を作り、動かした。・・・道中、魔物に襲われる事はあったが全て返り討ち、素材となる物は剥ぎ取り、載せて移動していった。・・教会で売りさばく為に。




 ・・・それから三日後。


 昼頃、教会に到着。


 門番には素材を売りに来たと進言し、通して貰った。・・中途半端に剥ぎ取った素材を解体屋に運び、幾ばくかの金を貰った。・・・街の中を歩き、周囲の状況を見て回った。

 住民に特に変わった事無く、街並みも先の一件で破壊された部分が無くなり、元に戻っている。


 これで上層部が何かを企んでいたら碌な事には成らない。・・そう思っていると、何やら騒がしい場所があった。


 教会の本部。・・・その広場にあるボードに何かが張られている。


 ・・・内容は、`騎士団長アルトリネに謀反の疑いあり、現在、尋問中。`と書かれていた。


 これを見た住民達は。


「アルトリネ様が謀反など、そんなことが・・」

「あのお方は暴動事件を解決してくれた国の英雄だぞ。」

「あの人ほど国を思っている人はいないのに。」


 有り得ないという表情と言葉が行き渡っていた。


 ・・これは彼女がしくじったと考えるべきだ。・・・恐らく、少しでも情報を得ようと深入りしすぎて捕まったのだろう。

 私たちが来るまでに調査を進めると言っていたが進みすぎだ。


 ・・・その場から離れた後ティナは。


「・・どうしましょう?シンスケ?」


 焦っていた。


 私は冷静に。


「・・とにかく落ち着こう。・・まず、アルトリネが捕まっている場所を特定する必要がある。彼女の事だ。・・脱獄は考えていないだろう。・・ならば、俺が助けに行くしかあるまい。」


 この言葉にティナは。


「・・俺はって。一人で行くのですか?」


 驚いていた。


 私は。


「・・今回は危険度が高すぎる。・・万が一、俺がドジを踏んで捕まれば、助けてくれる人がいなくなる。ティナはその為の保険なのだ。」


 最もらしい事を言った。


 正直に言えばティナを危ない目に遭わせたくない。魔物を相手に派手に戦うのでは無く、見つかる事無く侵入する忍者の仕事。・・・私は忍者では無いが、それ以外に方法を思いつかない。


 ティナは。


「・・・納得する説明ですが。・・・私を危険にさらしたくない気持ちが全面に出ているのが分かります。」


 見抜かれた。


 しかし、私は。


「・・だが、万が一というものが・・」


 続けて言う私にティナは。


「・・そもそも、あなたが捕まった時点で警戒は厳重になるだけです。・・更に言えば仲間がいないか街を捜索が始まります。・・私が助けに行くというのは不可能です。」


 キッパリ言った。


 ・・確かにその通り。侵入者が分かった時点で救出は絶望的である。・・・とするとティナも連れて行くしかない。一人が見つかっても、もう一人が何とかする。


 ・・かなり分の悪い掛けだがこれしかない。


 私は。


「・・分かった。とすると問題は服装だな。鎧姿は潜入には不向きだ。・・かと言ってこの街に潜入用の服があるわけない。・・・地球になら何かあるかもしれない。」


 考えた。


 日本の店でその類いの服があるとすれば、あの辺りにしかない。


 私は。


「・・・とりあえず、どこか人のいない場所を探してそこに魔方陣を書こう。・・王国に戻って、地球に行き、準備を整えてから侵入しよう。」


 この提案にティナは頷いた。


 私たちは早速行動を開始した。







 アルトリネサイド。


 夕方。教会の尋問室。


 罪人を取り調べる為の部屋。・・・しかし、中は拷問道具が並んでいる。どちらかというと拷問部屋である。


 その一角、X磔台に縛られたアルトリネがいた。


 服装は鎧姿のまま、武器は取り上げられている。・・本来なら囚人用の服を着るものだが、彼女の待遇は疑いだけであり、尋問している立場である。・・・まだ犯罪者として烙印は押されていない。


 ・・そんな彼女の前には馬用のムチを持った全身ボンテージ姿の女性審問官がいた。


 審問官は。


「・・ふふっ。貴女を尋問する時がきたなんて。この仕事を続けて良かったわ。・・・最近は男ばかりで飽き飽きしていたの。」


 そう言ってアルトリネの顔を猫撫でする。


 この台詞からかなりのサディスティックである。


 アルトリネは。


「・・一つ良いでしょうか?・・何故、鎧を剥がさないのですか?・・・貴女のような拷問好きなら私を全裸にすることなど容易いでしょう?」


 無表情に訪ねた。


 ・・その通りである。いくら磔にされたとはいえ鎧を着たまま等、どんな拷問をしても効果が薄いのでは無いのか。


 この質問に審問官は。


「・・あら?そんなことを言うなんて貴女もご趣味がおありで?・・・という冗談は置いといて。率直申し上げれば上の方から指示で、なるべく傷つけないようにというお達しなの。・・貴女の立場はあくまでも疑いの容疑。しかも尋問していることになっているの。」

「・・・傷を付けてしまったら貴女を崇拝している人達が決起を起こしてもおかしくはないわ。・・現に街では貴女が捕まったことで何か悪いことをしたなんて誰も信じていませんもの。・・人気者はすごいですね。」


 忍び笑いをした。


 上層部がどんな事を言おうとアルトリネの信頼が地に落ちることはない。


 アルトリネは。


「・・ならば、そのムチは何です?何の為に持っているので?」


 当然の疑問を聞かれた審問官は。


「 ああこれ。持っていた方が雰囲気出ると思っただけで、使う気はありません。・・貴女に使うのは。・・これ♡」


 そう言ってムチを机に置き、変わりに持ったのはピンク色の液体。


 ・・・それを見たアルトリネは無表情だが内心恐怖した。・・・色からして危険な薬である事は間違いない。

 審問官は液体をアルトリネに無理矢理飲ませた。身動きが取れない彼女は口を開けない抵抗をしたが虚しく飲まされた。


 全部飲まされた後、アルトリネの体に異変が起きた。・・・熱く火照り、呼吸が荒く、体中が疼く感じを。


審問官は。


「・・これはね。発情を促進させる薬なの。夜の営みでお互いが素直になれるように開発したらしいの。本来は少量で充分なの、そ・れ・は・ね♡。・・瓶まるごと飲むと欲情が収まらず誰でも体を許しちゃう淫乱になり、最悪精神が崩壊するの。今のところは体が熱いだけ。・・・でも、翌朝になれば浸透しきって自分の意思では制御できなくなるの。・・・治す方法はこの薬を飲めば収まるわ。」


 そう言って緑の液体を見せつける。


 アルトリネは。


「・・そ、それを、の、飲ませて・・・」


 弱々しい声で要求した。


 審問官はニヤついて。


「・・ふふっ。ダ・メ♡。・・・それと浸透しきったら解毒剤を飲んでも治らないわよ。・・その場合はこの精神を制御する術式が組まれた首輪を一生付けるしかない。」


 言いながら金の首輪を見せる。


 審問官は。


「・・勿論、これにも細工がしてあるの。遠距離から首輪の効果を解除できるようになっているわ。・・つ・ま・り♡。・・・貴女が今後逆らうようなマネをすれば民衆の前でみっともない淫乱女になってしまうの。」


 笑い声を上げた。


 アルトリネは恐怖で頭が一杯である。・・・飲まされた薬が浸透しきったら上層部には逆らえない体になってしまう事に。


 ・・審問官は解毒剤をアルトリネの目の前にある机に置いた。


「・・早くその拘束を解いて、解毒剤を飲まないと大変よ~~。・・明日が楽しみね。大司祭様から今後は貴女の調教係を任せて貰ってるの♡。・・・私の遊びに付き合って貰うわ♡。狂わしくも楽しいね♡・・・それじゃ明日またね♡。」


 笑い声を上げながら部屋を出た。


 ・・アルトリネは火照る体に力を入れて枷をはずそうとした。しかし、頑丈な作りの上、発情中の体は通常よりも力が落ちている。


 ・・自力での脱出は不可能。


 助けを呼ぼうにもここは騎士達がおいそれとは入れない牢獄エリア。・・・加えて彼女には謀反の疑いが掛けられている。

 騎士達は心配するだろうがそれだけだ。誰もここには来ない。


 ・・絶望的状況。


 アルトリネは己の不安な未来を受け入れるしか無かった。




 夜。


 民衆のほとんどが寝静まった頃。


 街の中でも少し外れたとある空き家を入手し、私達は装備を整え、潜入を開始しようとしていた。




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