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狩人の変わった生活  作者: 満たされたい心
第三章 狩人とは
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第116話 旧友と知り合い。

  





 あれから一週間。


 何も変わった事無く狩人の生活をしていた。


 少し気になる事があったので王国の方に転移で戻った。・・・王女様が宣言された事が実行されているか確認した所。


 降りてきたギルド長から`話がある`と言われ、部屋に向かった。


「・・オリビア王女様から話は聞いている。最も手紙でのやり取りだがな。・・・内容についても先のシンスケの報告書に書かれていた事が現実となった。・・国王様も賛成だと王子様からの通達が来た。・・これで二人に課せられた密偵の仕事は終りだ。・・・今までご苦労だった。・・それで、聞きたいのだが、今までの報告書に書かれていた数々の事件。・・どうして巻き込まれたのだ?」


 この質問に私は。


「・・どうしてって言われても。・・・その場にいたからとしか言い様がありません。」


 かなり難しい質問に答えが出ない。


 教会と共和国、着いてからしばらくして事件が起きた。・・・そうとしか説明できない。


 ギルド長は。


「・・・まぁ、そうだな。・・すまん。今のは忘れてくれ。」


 何か諦めたような顔であった。


 それからは他愛のない報告をし、ギルドを後にした。


 ・・その足でバードスとレオナのいる家に行った。・・レオナの経過を見る為に。


 

 到着したとき、出迎えてくれたのはレオナである。


「・・久しぶりですね。ティナ。シンスケ。・・さぁ、上がって。」


 お腹を大事そうにしていた。


 ・・お茶を出そうとしたレオナを私たちは止めた。長居する気はなく、様子見に来ただけでだから。・・あまり負担になるような事はさせたくない。


 ・・席に着くとティナは。


「・・すっかり母親ですね。・・丸くなりましたか?」

 

 この言葉にレオナは。


「・・それでは私がトガッていた言い草ではありませんか。・・私は最初からこんな性格です。・・寧ろ丸くなったのはバードスの方です。・・・仕事も簡単なものしかせず。早く帰っては私の世話をしたりと。・・・前の彼とは別人です。・・一部の冒険者の間では、私が調教したという噂があるくらいです。」


 ため息をついた。


 まぁそうだろうな。あの戦闘狂が家庭を持って劇的に変わったのだ。誰だってそう思う。


 ・・ティナは。


「・・まぁ良いんではありませんか?・・・夫婦仲は悪くないようで。」


 微笑んだ。レオナは。


「・・そちらこそ。随分とやっているようですね。・・・バードスがギルド長から聞いたのですが。帝国ではかなり激戦とか。」


 色々知っているようである。


 ・・その後、帝国での出来事を簡単に説明した。・・・話し終えた後、レオナが少し疲れた顔をしたので私たちはお邪魔した。これ以上は母体に悪い。


 ・・そして、『百合』の店が準備中と書かれていたので覗いてみた。


 そこにはルミリィとミルフィがイチャついていたキスしようとしたとき店の奥からマチルディが現れ口論していた。・・顔を出したら良い雰囲気が台無しである。


 ・・・私たちはそのまま帝国に戻った。






 深夜。


 夕食を終え、ティナが緑の鎧を着ていたのでやろうかと思ったとき、外から気配を感じた。・・`探知`を発動。青い点が一つ。

 敵ではないようだが、油断はできない。


 私とティナは剣を腰に付け、静かに待った。・・・すると、窓から誰かが侵入。フード付きの黒いマントを頭から被ったいかにも怪しい人物を。


 私たちが臨戦態勢を取ろうとしたとき。


「・・待ってください。・・私です。」


 フードを取ったのはアルトリネであった。


 私は。


「・・アルトリネ?・・どうしたのだ?こんな夜分遅くに?」


 質問した。


 ・・確か、使節団は大分前に帰ったはずだが。


 アルトリネは。


「・・実はお二人にお話があって参りました。・・ここでは何ですから。・・窓や玄関のない場所で。」


 何かに警戒しているようである。


 ・・私たちは奥にある倉庫に入った。素材や食料を保存している。窓の類いは一切無い。・・私たちは床に座った。


 ティナは。


「・・それで、話とは何ですか?ここまで秘密にしたい話とは。・・かなり危険な事ですか?」


 疑問を投げた。


 これについては私も同感だ。


 アルトリネは。


「・・実は、協会上層部で不穏な動きがあるのです。・・教皇か大司祭かは不明ですが。怪しい研究をしているらしいのです。」


 真剣な顔つきで話した。


 ・・これは思っていた以上の話。・・国家絡みである。


 私は。


「・・一つ良いか?・・何故俺たちのような狩人兼冒険者にこんな話をする?それこそあなたが信頼する者達に言うべきでは?」


 当然の質問をした。


 自分の国が危ないのに他国に頼むのはおかしい。


 アルトリネは。


「・・勿論、私たち騎士団で解決できるのならしたいのです。・・ですが、教皇が絡んでいると騎士団や私は何もできないのです。・・教会は教皇こそが絶対であり逆らう事は許されないのです。・・まぁかつての暴動を起こすような犯罪者は別ですが。・・基本的には教皇の意思を阻害してはいけないのです。」


 沈痛な顔で答えた。


 ・・いわゆる独裁者という事か。それならばやりづらい部分がある。


 例え、国が決めた法律で不正や違法なことをしても、トップの一声で全てがもみ消される。・・・権力者のやることは世界が違っても同じである。


 私は。


「・・それならば尚更だ。・・他国にこの事を話して良いわけはない。下手をすればあなたの立場が悪くなるだけです。・・裏切り者として。」


 かなりきつい言葉を言った。


 アルトリネのように生真面目な騎士は`裏切り者`と呼ばれるのはかなりのショックである。


 アルトリネは。


「・・承知の上で話しています。しかし、教会の未来が暗く閉ざされる可能性がある以上。見過ごす事はできません。・・あなた達に話したのは私が会ってきた人たちの中で強く、信頼できると確信しているからです。」


 一区切りした後アルトリネは立ち上がり。


「・・お願いします。どうか私に協力してください。」


 頭を下げられた。


 ・・正直に言えば関わり合いにはなりたくない。狩人として仕事をしながら強くなるのが目的だ。・・厄介な魔物がいるのならまだしも人間同士の揉め事は専門外である。

 冒険者としての指名依頼ならば断るのは難しいが、そうではない。


 これは個人の依頼だ。しかも断る事ができる話である。


 ・・私はティナに顔を向けた。・・真剣な眼差しの中に不安の色がある。・・ティナの性格上、見過ごせないが国の暗部に触れる危険な行動。・・バレれば即刻の逮捕。


 王国と帝国からAランクの称号を継続できる立場上、やるべき事ではない。


 ・・しかし、知り合いが国の不祥事を話し、頭を下げてまで協力を申し込んできた。ここで断れば人として何か大事な物を失う感覚が走った。


 私は。


「・・・その話が本当ならできる限りの協力はする。」


 了承した。


 ティナは少し安堵の顔をしたがすぐに真剣な顔つきで。


「・・・本当に良いのですか?・・これは正規の依頼ではありません。ある意味犯罪に手を貸そうとしているのですよ?」


 心配そうに話した。


 その通りだ。・・・相手が教会のトップならそいつの一言で悪者は決まる。


 私は。


「・・本当ならな。・・・聞く限りでは怪しい研究内容が判明していない。もし、それが民達の為の研究なら手を引くだけだ。・・実行するのは判明した後でも遅くは無い。・・それで間違いは無いですね?」


 確認を取った。


 アルトリネは。


「・・勿論です。まず、私が内部で調査をします。その後に黒であればお二人に改めて協力していただきたい。・・協力内容は共に戦う事になりますが。状況によっては証拠集めに変わるかも知れません。」


 この内容に私は。


「・・それで構いません。・・・ティナも良いか?」


 ティナは頷いた。


 アルトリネは気持ちが落ち着いたのか。


「・・では、私はすぐに教会に戻ります。・・お二人は明日の朝にでも出立をお願いします。・・教会には三日で着くと思います。・・私は早馬ですので一~二日で戻っています。・・それでは。」


 そう言って早々に退出しようとしたときアルトリネが振り返り。


「・・・そういえば、ティナさん。その鎧はどうしたのですか?」


 かなり言いづらい事を聞いてきた。


 ティナは少し焦ったが。


「・・こ、これは。・・試作品です。何時も同じ鎧だと壊れたときに困りますから。・・予備としてシンスケと相談しながら作っていたのです。」


 言い訳としては上々であった。


 アルトリネは納得したのか`そうですか。`と呟いて家から出た。






 教会。街の中。


 金髪の大司祭が疲れた顔で歩いていた。・・教皇が帰ってきた日。


 かなりのイラつきで。


「・・例の新薬はまだなのか?!」


 怒鳴り散らしていた。


 ・・開発経過はようやく半分はいった所。そこから先は材料と資料不足の為に進んでいない。


 教皇は机を指で叩きながら。


「・・そんな言い訳など聞きたくない!!さっさと完成させよ!!!」


 怒り満載であった。


 帝国で何があったかは護衛から聞いて機嫌が悪い理由は分かったが、だからといって八つ当たりはご免である。・・・かと言ってそんな事を言えばどんな叱責がくるかは容易に想像できる。


 そう思って歩いていると。


「・・・もし、そこのお方。」


 フードを被った露店販売の老人が話しかけてきた。


 ・・売っている物は薬の類いのようだ。・・しかし、大司祭は無視しようとしていた。こんな露店の薬など信用の価値はない。


 ・・そう思い歩こうとしたとき老人が。


「・・・教皇の薬でお悩みではありませんか?」


 その言葉に振り返った。


 大司祭が驚いた顔をしていると老人は。


「・・私は人には言えない薬を扱っております。・・・ご相談に乗りますよ。」


 この言葉に大司祭は何故か、耳を傾けたい気持ちになった。


 老人は赤い瞳を輝かせながら話し合った。








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