第113話 終えし後。
これまでのあらすじを一通り説明し終え、私は茶を飲んだ。
オリビア王女は必死に持参してきた紙に内容を書いていた。グラドは目をつむり何やら祈っていた。・・・おそらく、ローデルの冥福だろう。サクラはオリビア王女を見て、お茶とお菓子を側に置いた。
・・・そんな中、王女は唐突に手を止めて。
「・・・そうだ。お二人にある話を持ってきたのです。・・・冒険者ランクについて。」
その言葉に私は。
「・・冒険者ランク?・・何か不都合でもあるのですか?」
疑問しか無かった。
これまでの行動で違反をした覚えがない。・・・いや、もしかしたら知らないうちに何かしたかも知れない。・・・そういう事を過去に何回かしている。
王女は。
「・・・いいえ。そうではありません。・・・知っての通り、AやBランク冒険者は基本的に称号を貰った国か出る事はできません。・・・出るときはCランクに下げるか辞めるしかありません。・・その理由も王国と帝国のAランク冒険者を見れば分かりますよね?」
呆れた顔で尋ねてきた。
・・・確かに、二つの国で出会ったAランク冒険者は一言で言えばクズな性格。
ローデルは横暴且つ自分勝手な性格、希少な光属性である事を利用して遊んでいた、兵士達からの評判も最悪である。その仲間達はローデルの人柄では無く、ギルドまたは国からの依頼で監視していた。・・だからこそ、グラドは城で勤務していても避けずむような事はされていない。
・・・帝国は、貴族にして英雄の息子というモルジは、権力や圧力を使ってギルドに脅しをかけ、仕事をさぼり、怠惰に過ごしていた。
・・・新人の頃は真面目だったようだが、Aランクになった途端豹変した。それに呆れた仲間達が去り、残った二人はお金目的で行動するほど人望が無かった。
・・・こいつらを見ると、国が出したくない理由としては充分である。
・・・恥以外無いからだ。・・・この制度は昔からあるようだからAランクは最高の称号と同時に最悪の人格を生み出しているのだろう。
そう思っていると王女は。
「・・・顔を見れば分かります。・・・バカな人達しか見ていないのだから。共和国にはAランクがいないのは国の一大事が起きていない事と与えれば迷惑な奴が生まれると知っているからです。」
そう言う王女に私は。
「・・・しかし、ここに居るティナもAランクだが、評判は良かった。・・・昔の高位冒険者にも似たような人は居なかったのでしょうか?」
この質問に王女は考えて。
「・・・居たかも知れませんが、そう言う人は自国は出る事はありません。・・・国の代表だから余計な揉め事や騒動に関わるのを恐れたかも知れません。・・・国のプレッシャーというのは思っている以上に強いのかも知れません。」
そんな事を言った。
私はティナを見ると、頷いていた。・・・ティナも騒動には巻き込まれたくないか。それでも私に付いてきてくれるのだ。感謝しかない。
私は一息ついて。
「・・・話は戻りますが。ランクの件とは?」
この話に王女は。
「・・・説明通りのことがあった為に規則ができました。・・・しかし、この度ヨルネ皇帝と話し合った結果。・・・シンスケ並びにティナ。あなた達に帝国と王国。二つの国でAランクを継続する権限を与えます。・・・つまり、称号を剥奪する事無く、国を出る事も戻ることもできます。」
ハッキリと宣言した。
・・・転移の魔方陣で王国の家に戻っているが、誰にも会わずに戻っている。帝国でAランクを与えられたからお忍び戻る以外無かった。
王女は。
「・・・よって、あなた達の密偵の役割も本日をもって終了とします。・・今までの報告ご苦労でした。」
そんな発言にティナは。
「・・オリビア王女?!・・・どうしてその事を?・・」
これには驚いた。
この事を知っているのはギルド長と領主しか知らないはず。
王女は。
「・・クラーケンとローデルの一件以来。父上はギルド長とローゼン領主に何かあれば報告するよう義務づけられています。・・・国を出た事も帝国での騒動も知っています。・・だからこそ使節団を派遣する時期か早かったのです。」
王女の言葉に納得した。
・・・遠く離れている王国が使節団を派遣し、それが共和国と教会とほぼ同時なのはそういうことだったのか。
私は考えて。
「・・しかし、その事をギルド長に報告するまでは未だ、報告書を送り続けなければならないのでしょう?・・・ここから王国までは最低でも一週間はかかるかと。」
この疑問に王女は。
「・・心配は無用。今夜送る報告書には私のサインを書きます。・・・この使節団の責任者は私であり、帝国との交渉は任されています。・・・冒険者の処遇についてなど、他に比べれば些事な事です。」
自陣満々で答えた。
・・・全体的に見ればその通りである。国の行く末を考えれば冒険者のことなど小さい事。
・・だが、私は。
「・・・しかし、こう言っては何ですが。ティナはともかく、私は模範的な冒険者ではありません。・・・どちらかというと自分勝手ですよ。」
自傷気味の私にティナは。
「・・・そんな悲観的に思わないでください。あなたのこれまでの行動を考えれば、評判は悪くないですよ。・・・私だって、模範的と呼ばれていますが。狙ったわけではありません。・・・普通にしていたらそうなっただけです。」
何やら繰り返される会話に王女は。
「・・とにかく。・・お二人の今までの活躍は素晴らしい事です。・・・ヨルネ皇帝も納得してくれたました。」
話を終わりにする感じであった。
グラドは。
「・・・これは大変名誉な事だぞ。・・・新皇帝が新たに改変した事と王国第一王女の推薦で成ったのだ。・・・破れば、どうなるかぐらい分かるだろう?」
真剣な顔つきである。
・・・勿論分かる。違反すれば、剥奪ではすまない。・・・王族に恥を掻かせた罪で即刻処刑もあり得る。・・・中世の時代は魔女や異国民だけで処刑される事はよくあった。
私は。
「・・・理解しています。・・・最もしようとする気にもなりません。」
感情のない返答をした。
会社を辞め、ストレスの溜まっていた最初の頃、この世界にやって来たときは魔物を狩っている。暴力は好きではないが、スッキリはした。
・・地球では狩った皮を裏オークションで販売している。・・・犯罪じみた響きだが、違法な物は私は売っていない。・・・たぶん。
・・・ティナは。
「・・承知しています。・・・恥を掻かせるのは大罪です。」
決意を込めた瞳である。
グラドは納得した顔で頷いた。
サクラは。
「・・王女様。そろそろ戻らねば。」
時間が迫っている風に言うサクラに王女は。
「・・そうですね。・・では私たちはこれで。・・城で具体的な交渉がおこなわれる予定です。」
席を立ち、玄関に向かって行った。
私たちも席を立ち、玄関口まで送った。
「・・・何もおもてなしもできずに申し訳ありません。」
この言葉に王女は。
「・・気にしないでください。急に来たのです。・・・むしろ、お話が聞けてよかったです。・・・いい詩ができそうです。」
最後は呟いて聞こえなかった。
・・・三人が家から出た後。
私は。
「・・・はぁ~~。なんか疲れた気分だ。・・・今日はもう休むか。・・・明日は裏オークションのはずだ。」
この言葉にティナは。
「・・賛成です。・・・夕食は適当に作っておきます。・・・それと、今日は覚えていて貰わないと。」
そう言って少し赤面した。
・・・あの事か。今日の夜はある意味気が抜けない。
だがそれはそれとして私は。
「・・・ティナ?気のせいだと思うが。・・・俺は王女様とは王国以外で見たような気がするんだが?」
この疑問にティナは。
「・・・気のせいですよ。・・・あなたの世界では確かデジャビュ現象でしょうか?それよりも夕食の準備をしないと。」
そう言って強引に話を終わらせた。
・・・そんな物かと考えながら座って待つ事にした。
拠点から出た王女一行。
オリビア王女は満面の笑顔である。二人の武勇伝。・・・面白い事この上ない。
サクラは。
「・・・帝国に来てもこれだけの騒動に巻き込まれるとは。・・何かしらの運か呪いでも持っているのでしょうか?」
そんな感想を述べた。
それについてはグラドも同じ思いである。・・・出会うきっかけはローデルのくだらない企みだが、その後は、教会の暴動。・・共和国での不死者事件。タイミングとしては良すぎる。・・・呪いと思われても仕方ない。
そんな中王女は。
「・・・まぁ良いのではないですか?・・・二人がいたから解決できた事件でもあります。・・・いなかったら未解決とまではいきませんが、犠牲者は増えていたかも知れません。」
ありえる事を言った。
二人はこれには納得していた。・・・二つの事件、あの二人がいなくとも解決はしている。その程度のものである。
・・・問題なのは解決までの時間が長いか短いか。その違いだけで犠牲者の数は違う。
少ないほうがいいに決まっている。・・・そんな会話をしている中、王女はある事を考えていた。
・・今まで起きた事件は確実に二人を狙っている。出なければ説明が付かないほどである。
何者かが仕掛けるとしたら極秘機密になっている`七天魔`しか思いつかない。
・・しかし、かの七匹の魔物が人間に興味を持つのか?・・・まず有り得ない。とすると興味を持つほどの何かが二人、特にシンスケにあるとしたら。
・・・例えば、伝説にある異界の英雄。
可能性としてはある。
彼が振る舞った料理。ホウトウという料理はサクラは故郷と同じ味だと言っていたが知らないと言っていた。なら、彼はどこでそれを知った?
・・答えは簡単。私の知らない国か世界で学んだ。
そう思えば納得する。・・・父上や兄上が彼の動向を気に掛ける理由としても頷ける。だが、王女はこれを詩にするか迷っていた。
いくら詩とはいえ真実を入れて書くのが常識。・・・異界の英雄はおとぎ話として認識されている。・・とすると、工夫が必要である。
真実を書きながら詩として成立する工夫が。
・・・王女は燃えるような思いで描いていた。
夜。
簡単な夕食を済ませ、談話した後。・・・部屋で待っていると緑の鎧を着たティナが入ってきた。
私は横になったティナの両手を上げ縄で拘束した。・・動けないようにベッドの柱に括り付けて。・・・両足は開けた状態で端に縛り付けた。
三角形の拘束。・・・私はティナの匂いを嗅いだ。
体中隅々まで鼻で嗅いだ。ティナは恥ずかしいのかくすぐったいのか体をよじらせていた。・・・拘束してあるので動けない。その仕草が私の性欲をかき立てた。
・・・嗅ぎ終えた後、ティナの無防備になった腹を撫でた。
鎧の隙間から見える黒いスーツで覆われたヘソ、触りたいと思うのは当然である。
撫で回しているとティナが。
「・・・ふふっ、くすぐったい。・・・止めて、って言っても、む、むり、ですね。・・・ふふ。」
笑うのを我慢していた。
その行為が私の行為を更に激化させた。・・・そこからは鎧を着たまま辱め受ける女騎士のようにたっぷりと楽しんだ。