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狩人の変わった生活  作者: 満たされたい心
第三章 狩人とは
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第111話 夜の会話。







 夜空の星々が浮かぶ帝国の外。


 シンスケとティナは野営していた。ギルドの依頼である調査は順調に進んだ。


 といっても変化は無く、魔物たちはいつもの縄張りで生息していた。`物質変換`で鉄の小屋を作り、そこで一晩明かすことにした。・・・食事は四足歩行の走る鬼豚、`ダッシュトン`を狩って丸焼きにして食べた。・・・腹が満たされ、後は寝るだけである。


 隣にいるティナは。


「・・・シンスケ。これから私たちはどうなるのでしょうね?」


 疑問を聞いてきた。


 私はそれには答えず考えた。・・・これまでの事を考えれば、三国から注目されるのは確実。目立たない行動ができないと思うしかない。


 私は。


「・・・とりあえずは大人しく狩りと依頼をした方がいいだろう。・・これ以上は目立ちたくないし、過度な期待を背負うのはゴメンだ。」


 簡単な方針を述べた。


 私は国の代表と呼べる冒険者になったが狙ったわけではない。むしろ、不本意である。・・Bランクならば受け取るが、Aランクは自由に動くのに支障がある。

 かと言って返上はできない。・・国に対する不敬罪に当たる。


 ここを去るには早すぎる、帝国には強くなる要素はある。


 例えば、国境線。・・・今は沈静化しているが、いつ戦いが起きてもおかしくない。あそこは格好の修行場と狩り場である。

 その為には悪い行動は避けたい。・・・するつもりもないがな。


 ・・・そう思っているとティナは。


「・・・分かりました。あなたがそういうのなら私は従います。・・・となると当面は素材を見つけるのはどうでしょう?・・・ここには魔物の素材は高い物があります。帝国の技術もこの土地あってのことですから。」


 意見を言ってくれた。


 ・・確かに、いくら技術力があろうとそれを生かせる素材が無ければ宝の持ち腐れである。鉱石は王国から輸入して貰っている。・・・ここでも鉱石は見つかるには見つかる。

 といっても鉄と銅、希にオリハルコンぐらいである。


 アダマンタイトはさすがに見つかっていないようである。・・・その他、食料以外では魔物の牙や爪、革は多く手に入れられる。狩人にとっては良い場所である。・・・王国も勿論良い。共和国は海辺で活動する事が多い場所故、微妙である。


 ・・私は。


「・・・そうだな。武器は伝説の鉱石を手に入れたから良しとして、防具の方はアダマンタイトを使っているが。もう少し手を加えたい。・・・後は、裏オークションに出品する物ぐらいだろうな。」


 思いつく行動を言った。


 ティナはその説明に。


「・・・裏オークションですか。・・・向こうの事情は存じていますが、言葉の響きはあまり好きではありません。」


 苦い顔で答えた。


 ・・・仕方ない。ティナのような正道を行く冒険者は裏道のオークションには抵抗を感じる。・・・だが、地球の表のオークションは色々と縛りがあり、何よりも異世界の事が露見する。

 ・・・説明は勿論、実際に行く高官連中の相手。・・面倒くさい事この上ない。


 裏オークションに参加している連中は多分、半分以上は理解しているかも知れない。・・しかし、それを言う事も独占する事もない。

 出品者の事柄には手を出さないのが暗黙のルール。


 ・・あの社長は破ったが、今も来ている事を踏まえるとギリギリ大丈夫だったのかも知れない。


 私は。


「・・・どの世界でも共通するのは一つ。・・人間がいると碌な事にならない。・・・俺はそう思ってる。」


 そう言いながらティナを抱きしめた。


 鎧越しからでも分かる。ティナの体温が少しずつ上がっている事に。


 ティナは。


「・・・ずるいです。・・・不意打ちですよ。こんなの・・・」


 少し赤面しながら私に抱きついた。


 ・・・その後は夜が明けるまで手を離す事は無かった。



 



 王城。貴賓室。


 高級品が並び、その中央には長ケ机とソファーが置かれていた。


 そこに座るのはヨルネ皇帝とオリビア王女である。・・二人はパーティーの後、女同士で話がしたいとヨルネ皇帝にお願いしてもらったのである。


 オリビアは紅茶を飲みながら。


「・・・さて、本日は貴重な時間をいただきありがとうございます。・・・私の個人的な事で。」


 お礼を言葉を言うオリビアにヨルネは。


「・・いえ。王国の第一王女から外交以外でお話があるとおっしゃられば、断る理由はありません。」


 社交辞令を言いながら紅茶を飲んだ。・・・外交以外の話。個人的な事。この二つでヨルネと話す事は限られている。オリビアは。


「・・・では、率直に申し上げます。・・・シンスケとティナの今後の処遇について。」


 笑顔で話し始めた。






 王城。要人専用の寝室。


 来客の中でも貴族や王族が寝泊まりする部屋。


 ・・・そこに教皇アレイスターは、ワインを片手に腹ただしい思いで夜空を見ていた。・・・王国と共和国に目に物を見せてやるつもりで来た使節団。

 ・・・貴族連中を見下せる絶好の機会だったのに、現れたのは王族。・・・それも若い世代。・・・かなり大胆な事をしてきたものである。


 教皇は。


「・・っくそ!!・・・こちらが有利に事が運べると踏んでの外交だというのに、思惑が外れすぎた!!」


 机を`バンっ`と叩く。


 音に反応して誰か来るはずだが、今は深夜、見回りの兵士以外はほとんど寝ている。


 教皇は気にする事無く。


「・・こうなったら、少しでも貪るように交渉するしか無いな。でなければ来た意味が無い。・・本当にムカつく。」


 怒りで体が震えていた。


 思い描いていた理想とは違う結果。


 それは生きている者にとっては回避不可能な現実である。しかし、教皇は良くも悪くも思い通りに事が運ぶ人生を歩んでいた。・・若い頃の苦労人生を綺麗さっぱり忘れるほどに。


 ・・・そんな人に見せられない光景を目にする者は誰も居ない。


 ・・・一匹の虫を除いて。






 王都の街、どこかの家の屋根の上。


 星々が照らす深夜。・・・ほとんどの住人が寝静まる場所に虫の顔をした異形の者がいた。


 `千毒ラテス`である。


 彼は、`竜王バムハル`からの依頼で、`痕跡が残っていないか確認を頼む`と依頼されている。・・・この件に`七天魔`が関係している事は誰も知らない。

 だが、念には念を入れて調査していた。・・・その過程で面白い発見をした。


 教会のアレイスター教皇がこんな野心家である事に。・・人間の社会的地位に興味が全く無いラテス。・・・当然、どんな人間なのか知るはずがない。


 ・・・ラテスは愉快な気分で。


「・・・くくくっ。・・あの王女以外にも面白い奴がいるとはな、今は全員、自重の身だが、年齢を考えれば少し急いだ方がいいかもしれんな。」


 そう言って黒い霧に包まれて消えた。








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