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狩人の変わった生活  作者: 満たされたい心
第三章 狩人とは
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第110話 外交会談。






 三者の挨拶が終り、本格的な話し合いが始まる。


 口火を切ったのはオリビア。


「・・・この度、皇帝に即位されましておめでとうございます。・・・できましたらその場に立ち会ってみたいと思っておりました。」


 この言葉にヨルネは。


「・・・それは残念としか申し上げられません。何しろ、国の王が長期不在は面子に関わります。・・一刻も早く即位する状況でした。」


 申し訳なさそうに言う。


 心の中では反省はしていない。


 そこにルストルフォが。


「・・・こちらも即位された祝福の言葉を贈ります。・・・所で、妹君のお姿が無いようですが?」


 知っていることをあえて言うルストルフォ。


 生死については死亡が濃厚だが、あくまでも推測でしかない。・・・確証が無ければ今後の交渉がうまく運べる自信がない。


 ヨルネは。


「・・・我が妹は王都を襲った魔物の手により亡くなりました。・・・王都で起きた事件はご存じですよね?」


 少し暗い顔をして答える。


 ・・この雰囲気ならばこれ以上聞くことは無粋であるとアピールできる。


 ルストルフォは


「・・・ご冥福をお祈りします。・・・知らなかったとはいえ、失礼しました。」


 軽く頭を下げた。


 これでグリネが死んだという確証が得られた。・・ここからの交渉に支障は無い。


 オリビアは。


「・・・事件と言えば、国境線ではかなりの激戦があったとか。・・・共和国で宿を取った時、帝国から来た商人がそのような事を話されていましたが。」


 かなり攻めてきた。


 ・・・無論、商人ではなく。兄上と父上から聞いて知っている。


 ・・・ヨルネは。


「・・・はい、かなりの苦戦でしたが。兵士達の活躍で終結しております。・・今のところは魔物たちの動きはなく、静かなものです。」


 笑顔で答えた。


 ・・国境線の基地がかなりの疲弊をしているのを知れば、それを理由に物資の値段や欲しい物を、王国が要求しやすくなる。・・・・弱みは見せられない。


 オリビアは。


「・・・そうでしたか。・・・損害が激しいと思っておりましたが、無事で何よりです。・・・所で、戦場でかなり活躍した冒険者がいると聞きましたが。」


 王国にとっても知りたいことを聞いてきた。


 ・・・というよりもオリビア自身が知りたい事だが。


 ・・ヨルネは少し考えて。


「・・ええ、おりました。・・・かなりの腕の立つ冒険者の方で帝国を守る為に必死に戦ってくれました。・・その勇気と強さに敬意を表して、Aランクの称号を差し上げたのです。」


 自信満々に宣言した。


 ・・・ヨルネは二人が王国から来た事は知っている。・・オリビア王女も知っているはず、先ほどの質問は恐らく、二人の現在の動向を知るための口実だろうと感じたからだ。


 オリビアは。


「・・・まぁ、さすがですね。・・実を言いますと、商人からの情報で身体的特徴と着ていた鎧が私の知るお方にそっくりでしたので、もしかしてと思いましたが。・・ここでもAランクになられたのですね。」


 我が事のように喜んでいた。


 この態度にはヨルネも少し驚いた。・・・何故なら、帝国がAランクを与えた以上、国から出るのは難しくなったという意味である。・・にも関わらずにこの喜びよう。

 何を考えているのか見当が付かない。



 ・・オリビアは本当に喜んでいた。


 あの二人なら大事件に巻き込まれるか自ら突っ込むかのどちらかだろうと思っていたからだ。その予想はビンゴである。

 ・・・オリビアはこのパーティーが終わり、自由時間が取れるであろう明日には二人を探して詳しく聞こうと思った。

 

 ・・周囲の人々より本人に聞いた方が早いからだ。・・吟遊詩人として最高の詩を作りたいからだ。


 その思惑の中、ルストルフォは。


「・・・ほぅ。・・・実を言いますと、私の国でも似たような二人が滞在し、事件解決に尽力してくれた聞きましてね。・・いやはや、偶然とは恐ろしい。」


 あけすけに答えた。


 勿論、知ってての話である。この会話でヨルネは内心、少し焦った。


 あの二人が王国だけで無く、共和国にも貢献していたとは。・・・・となると、二人が帝国に拠点を構えるのは何か理由があるのか?

 ・・・かと言って訪ねるのは触れてはいけない気がする。


 帝国が安定しない以上余計なトラブルは避けたい。・・・追い出す理由もない。


 そう思っていると。


「・・・ほっほっ。若い者同士は話が弾んで良い物ですな。」


 横から誰かが来た。


 三人が振り向くと、豪華な法衣と白銀の錫杖を持った教皇が現れた。・・・その斜め後ろ横にはアルトリネが付き従っていた。


 ヨルネは。


「・・これは、教皇自らお越しいただきありがとうございます。・・本来であれば、真っ先に挨拶すべきでしょうが。・・何分、こちらもありまして。」


 当たり障りにない挨拶をした。


 ・・・勿論、ウソである。本当に挨拶したいのなら部下に探させれば良い。それをしなかったのは極力関わりたくないからだ。

 教皇の強欲はよく知っている。・・・金を得る為なら強引な要求はする。


 ・・・父上の時も食料の輸入時、教会は共和国以上にぼったくろうとしていた。・・・教会は果物や調味料ぐらいなので重要では無かった。半分ぐらいで手を打っていた。


 ・・共和国は比較的優しい所はあったので重宝していた。


 教皇は。


「・・・いえいえ。こちらもパーティーを堪能していましてな。挨拶が遅れてしまいました。・・・しかし、王国も共和国も王族の後継者を送られるとは驚きました。・・余程、信頼しているのでしょうな。」


 そう言って王女と王子を見る。


 王女は。


「・・・私は父上からは大いに信頼を受け、この場におります。・・・後継者かは未だ分かりかねますが。」


 続いて王子は。


「・・・後継者はいい響きですが、それが理由ではありません。・・・大事な席であるならそれ相応に相応しい人物が行くべきだと判断したのです。」


 作り笑顔で答えた。


 ・・・真実は王国は無理矢理、共和国は便乗であるが。・・この選択は正しかった。・・まさか、教皇が来るとは。

 もし、貴族が行っていたらどんなイヤミを言うか想像しやすい。


 教皇は。


「・・・さすがですね。・・・しかし、王自ら来ないとは、言葉悪く言えば臆したのでしょうか?」


 嫌な笑顔で言う。

 

 ・・・これには二人は怒らない。下手に怒れば、`器が小さい`と非難されるからだ。・・国の代表として来ている以上、感情のままに言葉を言うのは御法度である。


 この言葉にオリビアは。


「・・・おほほっ。我が父上はおっしゃられておりました。`未来の話をせよ`と。・・・新しき皇帝が若い世代であるならば、行くべき者は同じ世代とお考えなのです。・・・失礼ですが、教会は後継者はおられないのですか?・・・確か、襲名制だと聞いております。」


 屈託のない笑顔で聞いてきた。


 これには教皇は口を紡ぐんだ。・・・王国、共和国、帝国は代々一族が王として君臨するいわば世襲制。・・・だが、教会は成り立ちから一族はおらず、大司祭、枢機卿、教皇は襲名制で君臨してきた。


 ・・・当然、教皇の後継者などいない。


 昨今、金を多く手に入れることに躍起になっていて全く考えていない。・・考えるとすれば自分が床に伏せている時に、大司祭か枢機卿にしようと思っている程度。


 ・・だが、側近に若い者はいない。


 ・・教皇は。


「・・・いやはやお恥ずかしい。私の後を継ぐべき若い者が中々出てこないので、私自ら足を運んでいる状況です。・・・では、後は未来ある者同士でご歓談を。・・・老人は去る事にします。・・・ちっ。」


 最後に小さい舌打ちをしてその場を離れた。


 残ったのはオリビアとアルフォンスとヨルネ。そしてアルトリネ。


 ・・・少しの沈黙の後、アルトリネが。


「・・・教皇の非礼。・・代わってお詫び申し上げます。」


 そう言って頭を下げる。


 これに対してヨルネは。


「・・・いいのです。・・・教皇が来る事は何か強引な要求でもと思っていましたから。・・・私は気にしていません。」


 温かい笑顔で答える。アルトリネは少しホッとした。


 ・・・アルフォンスは。


「・・・しかし、オリビア王女。今のはスッキリしました。・・・エリュンポス四世様も素晴らしい事をおっしゃられる。」


 感激の言葉にオリビアは。


「・・ああ、あれですか。・・・ウソです。父上はそんな事一言も言っていません。私がその場で考えたデマです。」


 とんでもない事を言った。


 これには三人は呆然とした。・・王として素晴らしい発言がウソだったとは。


 これに対してオリビアは。


「・・・だって、ムカついたから。・・・あんな老人に他国の事情に口を挟まないでほしいわ。」


 少しムッとした顔で答える。


 三人はこの言葉に少し笑みを浮かべた。


 アルトリネは。


「・・・そう言えば、二人の冒険者が活躍されたと聞きましたが。」


 この言葉にヨルネは。


「・・恐らく、あなたが思っている二人だと思います。・・・一人はオワリの里の甲冑を着ていました。」


 アルトリネは`やっぱり`と言った顔をした。






 一方、シンスケは夜の岩山で野宿していた。


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