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狩人の変わった生活  作者: 満たされたい心
第三章 狩人とは
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幕間 三国の使節団。

 





 各国からの王族やトップがやって来た。


 使節団は貴族がやって来るものだと思っていたが何故なのか?


 時は大分前に遡る。




 レティル共和国。


 玉座の間ではルカール国王とルストルフォ王子がデオム帝国の使節団について話し合っていた。


 ・・王子からの報告。・・・新皇帝にグリネが即位したがその日のうちに行方が分からなくなり、死亡したのではという噂が流れていた。・・・無論、この事は一切口外されていない。


 共和国の王族が知っているのは独自の情報網を持っているからである。


 ・・国王は。


「・・・帝国は波乱の日々であろうな。・・・国境線の激戦。王都に現れた謎の魔物。・・これ程のことは我が人生でも早々起きることではない。」


 呟く国王に王子は。


「・・父上。おっしゃることはご尤もですが、現実的な話をしましょう。・・・新皇帝のグリネが死亡したのが事実ならヨルネ王女が新皇帝になるのは時間の問題。・・使節団を派遣し、交渉するに絶好の機会かと。」


 思案する王子。


 ・・確かに、帝国は混乱し、物資も少ないかも知れない。ここは食料や復興の物資を提供し、その代わりに帝国の道具を融通してもらう方針にする。

 そうなると交渉に適した貴族を選抜する必要がある。


 そう思っていると、扉が開き、騎士団長プラダマンテが現れた。


「・・失礼します。・・先ほど、王国から帝国に向かう使節団が到着しました。」


 報告してきた。


 王子はプラダマンテの様子に違和感を感じ。


「・・・かなりの大物でも来たのか?」


 この質問にプラダマンテは。


「・・・オリビア王女が代表として来られたようです。」


 伏して答えた。


 これには国王と王子は驚いた。・・王国も情報網を持っているから帝国のことは気付くだろうと思っていた。使節団の派遣も想定内。


 ・・・しかし、王族が来ることは想定外。


 使節団は国王が命じた貴族が行くのは常識。・・・どんな危険があるのか分からない以上、身近な者を送るのは躊躇うものである。


 その為、貴族の中でも武勇と交渉に優れている者が選ばれる。・・・それなのに王族が来るのは何を考えているのか分からない。


 国王は平静を取り戻し。


「・・・すぐに、使節団が泊っている宿泊施設に通達。くれぐれも粗相の無いように接待せよと。」


 相手が王族である以上、それ相応のおもてなしは必要である。


 命令を受けた団長は敬礼し、退出した。


 二人だけになった玉座で国王は。


「・・・まさか、王女自ら来るとは、貴族だと思っていたが。・・王国も大胆なことをしたものだ。」


 驚嘆な感想を述べた。


 ・・・仮に、王族が派遣したとしてもアルフォンス王子が来るならば納得する。かの王子は知恵と武勇に優れている。どんな危険でも対処できる。・・・・それなのにオリビア王女が来るのは予想外。


 王女は知恵は優れているのだが戦いは不得手である。・・使節団の代表としては心配の種である。


 そう思っていると王子は。


「・・・父上。王国の使節団に大物が来た以上。こちらもそれ相応の身分の者が行かなければ示しが付かないと思います。」


 意見を述べた。


 ・・・確かに、王族が使節団にいる以上。こちらも王族が行かなければどんな陰口を叩かれるか分ったものでは無い。・・とすると適任者は一人だけ。


 国王は一息入れて。


「・・・・頼めるか?」


 この質問に王子は。


「・・お任せください。・・・ご期待に添えるように努力します。」


 頭を下げて了承した。


 共和国の面子を守る為にはこちらも同じ土俵に立つしかない。・・国王は息子を信頼しており、心配はしていない。


 ・・何故なら、ルストルフォ王子は時々、城を出ては外遊している。本人は見聞を広める為と言っているが半分学び半分遊んでいる。・・・時には国から出て教会辺りまで行くこともある。

 ・・当然、魔物に襲われているが武勇に優れており、Bランク相当の実力を持っている。


 それが悩みの種であるが。その結果、この大役を任せても問題ないの。・・・皮肉なことである。


 

 ・・・王子がルカール国王の指令に内心喜んでいる。


 彼の心情としては、使節団には自分が行きたかったが父上は反対するだろうと考え、黙っていた。何故なら、いくら交流しているとはいえ、内政が不安定な帝国に行かせるのは危険と判断しているからだ。


 ヨルネ王女一派は何もしてこないだろうが、残存しているであろうグリネ王女一派がちょっかい出してくる可能性はある。・・万が一、帝国内で王族がケガすることになれば国際問題になる。

 

 ・・・その混乱中に内乱が起きても不思議ではない。


 無用な争いを起こしたくない。・・・穏便に済ませるのが一番。


 ・・そう思っていた時に、王国からはオリビア王女が使節団としてやって来た。・・これはチャンスである。・・・王国が王族を派遣した以上こちらも王族でなければ示しが付かない。


 ・・・父上は現役だが、そう簡単に国からは離れられない。

 

 とすると、共和国の王族は一人だけ。・・・父上は案の定、私を指名した。・・・喜びの顔を出さずに仕事をこなす人間として演じなければ。


 ・・・玉座の間を退出した後、王子は。


「・・・君、プラダマンテ団長が戻り次第。会議室に来るように伝えろ。・・無論、他の騎士達にも招集命令を。」


 近くに居た兵士に命令した。


 兵士は敬礼し、その場から走り去った。・・さて、話すことは護衛内容と旅での注意点を話し合うことになる。






 聖人教会。総本山。・・・最上階。


 白を強調したデザインにシャンデリアが飾られ、その真下には大理石で作られた丸い円のテーブルが置かれていた。・・・その大きさは人が三十人は楽に座れる広さである。


 そこには五人の人間が座っていた。


 その内三人は高級のシルクで作られた法衣を着ており、いずれも五十代後半の老人が座っていた。・・・その者達は大司祭、教会でも指折りの高位の者達。


 その一人、白髪の老人が。


「・・・以上が帝国の全容でございます。」


 書物を手に報告していた。


 しばらくの沈黙の後、金髪の老人が。


「・・・此度の帝国は波乱の流れですな。皇帝が二人も短期間に死んでしまうとは。」


 少しバカにした風に呟いた。


 不謹慎極まりない言葉に茶髪の老婆が。


「・・口を慎みなさい。我らは神ヘルメスに仕える信徒。死者を愚弄することは許されません。」


 かなり高圧的に指摘した。


 金髪の老人は少し頭を下げて沈黙した。


 ・・・その時、


「・・・諸君。無駄口はそこまでだ。・・・そろそろ本題に入らせていただく。」


 強引に話を進めたのは大司祭よりも高級感ある法衣に聖典を肌身離さず持っている銀髪の老人。


 聖人教会の№二、ロメル枢機卿。


 ・・・その言葉に三人は口を閉ざした。


 枢機卿は。


「・・・帝国への対応は今まで通りの貿易に少し上乗せをしたいと教皇様からの提案がある。・・意義のある者はおるか?」


 辺りを見渡す枢機卿。


 三人は何も言わずに座り続けた。・・・これは予想していたことだ。


 教会内において教皇のお言葉は絶対不変。意見や反対を唱えるなど重罪に値する。


 ・・・見回した後、枢機卿は。


「・・・反対なし。・・・決定とさせていただく。・・・何かお言葉はありますか?教皇様。」


 枢機卿は隣を見た。


 ・・・最高級の法衣に金銀のネックレスをかけ、両手の指にはルビーやサファイアやエメラルド等、色とりどりの指輪。・・・頭の上には十字架の絵が描かれた高さ0.八メートルの帽子を被った七十代後半のスキンヘッドの老人。


 ・・・聖人教会のトップ。教皇アレイスターである。


 教皇は。


「・・・帝国に要望を聞き入れる為の使節団について。・・・私が直々に向うことにする。」


 この言葉を聞いた四人は驚愕の顔をした。


 ・・・教皇自らお出になる、帝国にとっては名誉あることだが、大司祭達には危険なことである。・・・道中に襲われる可能性がある旅だからだ。


 枢機卿は。


「・・お言葉ですが教皇様。・・・帝国への旅は危険です。護衛を付けても安全は保証できかねます。」


 焦る枢機卿に教皇は。


「・・・何、護衛にはアルトリネ隊長を付ける。かの聖騎士なら立派な役目を果たせる。・・それに帝国は内政に不安はあるだろうが、私に何かすれば。・・・分からない国ではあるまい。」


 乾いた笑みを浮かべる。


 ・・・教皇は、常に金と自身の安全しか考えない強欲の塊。・・・危険なことは例え一%でも絶対にしない小心者。・・・先の報告で帝国が不安定だと知ったとき何を考えたのかは定かでは無いが、恐らく、組織が一丸となって仕掛けてくることはないだろうと思ったのだろう。・・・烏合の衆が集まった戦力など恐るるに足らず。・・アルトリネだけでも充分だと判断したんだろうと枢機卿は考えた。


 ・・・教皇は続けて。


「・・それに、他の国も使節団を派遣するだろうが。・・・貴族が行くことは当然。・・・だが、教会はこの私が出向いたのだ。我々がどれだけ帝国を信頼しているかの証明になる。・・・後は、二国の連中を見下すことにもなるだろう。・・ふっふっふっ。」


 悪い笑顔で笑った。


 ・・・少々強引な気もする。・・しかし、王国と共和国が貴族なのに対して、教会は教皇自ら出向いた。・・・地位を考えればこちらが上である。


 見下す理由としては充分である。


 四人は何か言いたそうであるが、教皇の決定は絶対。


 ・・・枢機卿は。


「・・・かしこまりました。・・護衛団にアルトリネ隊長を筆頭に選抜した騎士達を同伴させます。」


 頭を少し下げて同意した。


 教皇が満足そうに頷きながら妄想した。


 ・・帝国に着いた時、貴族どもを見下し、あざ笑っている自分の光景を。・・・待ち遠しいことこの上ない。


 ・・・しかし、その目論見は到着した直後、潰えるのであった。


 






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