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狩人の変わった生活  作者: 満たされたい心
第三章 狩人とは
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第106話 一件落着?







 闘技場から出て、控え室に向かった。


 廊下を歩いていると向かいから三人組がやって来た。


 ・・・両組が立ち止まった。モルジは怒りながら。


「・・貴様~~。自分が何をやったのか分かっているのか?!・・ああ!!」


 チンピラの威嚇をしてきた。


 私は冷静に。


「・・アホの勝負を受けて勝った。・・それだけだ。」


 無表情に答えた。


 その答えに震えたモルジは。


「・・貴様~~~~?・・私が誰の息子か知ってのことか~~~?」


 呆れた質問に私とティナは。


「知らん。」 

「知りません。」


 当たり前のことを答えた。


 モルジは冷静になったのか悪い笑みを浮かべながら。


「・・ならば聞け!!・・私は将軍ゴルトールの息子だ!!・・今では帝国を守った英雄だ!!恐れ入ったか?!」


 胸を張って宣言した。


 ・・・・あの将軍の息子か。真面目で誠実なイメージを持つ将軍に、こんなバカ息子がいるとは。・・まぁ、親が優秀でも、子供も同じとは限らない。


 モルジは更に胸を張って。


「・・どうだ~~?・・今なら泣いて謝り、美しい彼女を差し出せば、許してやってもいいかもな~~~?」


 満面の悪い笑顔になった。


 ・・馬鹿馬鹿しい、`いいかもな`ってことは許す気はないと同じでは無いか。


 ・・私が何か言おうとした時、モルジの後ろから。


「・・ほぅ?・・随分と偉くなったものだな。・・・誰の息子だと?」


 その言葉にモルジは`ドキッ`と驚き、恐る恐る後ろを向いた。


 そこには貴族服を着たゴルトール将軍がいた。


 ・・モルジは冷や汗を掻きながら。


「・・えっ?・・嫌だなぁ~~~父上?・・あなたの息子のことです。」


 媚びへつらう顔のモルジに将軍は。


「・・確かに、私には二人の子供がいる。・・長男は騎士団で立派に活躍している。・・次男は放置している。」


 何の感情のない顔で答えた。


 モルジは媚び顔を崩さずに。


「・・そ、そうですよ。あなたの次男が私ですよ。・・それよりもこいつら!!闘技場で私に大恥を掻かせたのです!!・・父上の偉功でAランクになったというのに全く恩を感じていない不届き者です!!すぐに捕まえて死刑にするべきです!!・・あ、でも美しい女性のほうは私が貰いますから。」


 最後の言葉は欲が出まくっていた。


 ・・将軍は私たちに近づいて。


「・・この度は次男の我が儘に付き合わせて申し訳ない。」


 頭を下げる将軍。


 私は少し腰を低くして。


「・いえいえ。・・・子供の責任は親が取るとはいえ、彼は立派な大人です。・・責任は全て、彼が背負うべきです。」

 

 将軍は悪くないと遠回しに発言し、ティナも同様に答えた。


 ・・この光景を見たモルジは。


「???父上?・・何故、このような平民に頭を下げるのです!?・・・父上は私のしてきたことに賛同してくれたではありませんか?!」


 訳の分からないことを言うモルジに将軍は。


「・・賛同?・・そう言えばお前のやってきたことに何も言ってないな。・・・何故、言わなかったと思う?」


 少し怒気を込めた発言にモルジは。


「・・えっ?・・それは。・・・私がやっていることに何時も何も言わないから。・・・賛同してくれているのでは?」


 少し戸惑うモルジに将軍は。


「・・そう。・・・お前が。・・・説教する価値のないバカ息子だからだ!!!」


 怒り咆哮を上げた。


 モルジは`ひっ`と小さい悲鳴を上げ、尻餅をついた。


 将軍は怒りが収まらず。


「・・勘違いするな!!・・いいか。今まで何も言わなかったのはお前のようなゴミに説教しても意味が無いからだ。・・そんな時間を使うくらいなら民の為に使うわ!!!」


 かなり悪い口調で罵った。


 今までの将軍からは思えない行動であった。・・・二人以外は黙って見守っていた。


 ・・将軍は少し落ちつくように深呼吸して。


「・・お前は本当に変わったよ。・・昔は冒険者になることを夢見て鍛錬し、スキルも習得した。・・・`地獄耳`は遠くの声も聞き漏らすことないスキル。・・・それを使って隠れている敵を見つけては仲間を守るように戦っていた。」

「・・・だが、Aランクになってからは最悪の変化だ。・・・仕事も理由を付けてはサボり。・・職員が注意を言えば貴族の位を使って脅し。・・挙げ句には女遊びまで。・・・そんなお前の行動に仲間達は呆れて、次々と去って行ったでは無いか。」


 哀れみの言葉にモルジは。


「・・だ、だって。Aランクになったっていうのに全然偉くないし。・・難しい仕事ばかり押しつけるし。・・・それに仲間だってまだ二人残ってくれてるじゃないか?!」


 そう言って後ろの二人、ルーズとドルドを指さした。


 それを見た将軍は。


「・・・その二人がお前の為に残っているのならな。」


 何かを察したように呟いた。


 その言葉を聞いたモルジは。


「・・えっ?・・二人とも私の為に残ってくれてるんじゃ?」


 不安の声に二人は顔を見合わせ。


「・・・別に。・・・私はあんたが金を出してくれるから残ってるだけ。」


 しらけ顔のルーズ。・・ドルドも。


「・・私もあなたのコネを使って魔導書を手に入れたかったから。」


 そう言って袋の中の本を大事そうに抱える。


 二人の言葉にモルジは絶望の顔をした。・・・次々と去って行く仲間達で残ってくれた二人は自分に好意を抱いていると思っていった。


 ・・・しかし、違った。・・己の欲の為に残っていたのだ。


 そんな二人にモルジは。


「・・ウソだよな?・・ウソだと言ってくれ?!」


 現実が受け入れられないモルジに二人は。


「「・・・・・さようなら」」


 そう言って二人は去って行った。


 その後ろ姿を呆然と見るモルジ。


 将軍は無表情に。


「・・・哀れすぎて言葉もない。・・・だが、今までのお前の行動を見過ごす気もない。・・モルジ。・・今日よりお前を別邸に送る。・・・そして、二度と出ることも許さん。」


 モルジにとって残酷な決定である。


 モルジが何か言う前に兵士が三人現れ、連れて行った。・・残ったのは私とティナと将軍だけである。


 ・・・将軍は。


「・・・本当にすまなかった。・・・君たちには不愉快な思いを・・・」


 その続きを言う前に私は。


「・・いいえ。・・誰だってこんなこと予測はできません。・・お気になさらず。」


 誤魔化すような言葉で終わらせた。


 ・・お詫びに何か貰うのはこりごりである。


 察してくれた将軍は。


「・・・まぁ、君たちがいいのならこれ以上は何も言わない。・・・ではこれにて。」


 そう言って入り口の方に歩いて行った。


 `やっと終わった。`と一安心した時、将軍が振り返り。


「・・ああ。そうだ、言い忘れていたが。・・・ヨルネ王女様が明日、正式に皇帝に即位されるそうだ。・・その護衛に君たちも参加するようにギルドには伝えているから。・・・詳細はギルドで。」


 とんでもないことを言った。


 私が何か言う前に将軍は去って行った。


 ・・取り残される二人。


 ・・呆然とする私にティナは。


「・・・仕方ありません。・・王族からの依頼なのですから。」


 そう言って私の右肩に手を置いた。


 ・・逃げられないと言うことか。







 王女サイド。・・執務室。


 ヨルネは部屋で書類の整理を終え、明日に向けての予行練習をしていた。


 ・・・大事な日故、失敗は許されない。


 満足いく結果を出し、少し休憩を取った。・・・窓から見る夜空を見上げながら思った。


 皇帝の即位。・・まだ早いのではないかと。


 ・・しかし、そうも言っていられない状況になった。


 各国から来る使節団が到着するのは早くて明後日。・・その前に即位しなければならない。皇帝不在での重鎮の接待は国の威信に関わる。

 明日中に終わらせる。それしかない。


 ・・それともう一つ、あの二人を護衛としてギルドに依頼した事。


 ・・二人は国を救ってくれた英雄。即位式には絶対に参加してほしい。・・しかし、Aランクとはいえ平民。簡単には入れない。・・招待しても何かしらの理由を付けて欠席すること間違いなし。


 ・・ならば、断れない状況を作る。これしかない。


 ・・・少々強引な気もするが、・・・まぁいいか。子供達の件もある。護衛とは名ばかりに楽しんでいただければいい。・・そう自分に言い聞かせるヨルネであった。


 ・・・二人が滅茶苦茶迷惑だと分かっていながら。


 こうして帝国での慌ただしくもどうでもいい事が終わった。・・・しかし、王女はまだ知らない。・・・皇帝になって一年後に。


 ・・あんな事件が起きるとは、夢にも思わない。





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