幕間 ある男。
こうして帝国で起きた事件は一時の幕を引いた。
しかし、まだ誰も知らないことが起きていた。
帝国領の森。
王都から少し南に下った所にある森。
・・寒い地方であるが故に緑溢れている森では無く、枯れ葉が多く目立つ寂しい森である。・・その中に一人の男が歩いていた。
年齢は六十代後半。・・金髪だが少し白が混じっている。・・少し老けているがまだ現役の戦士だと言い張れるほどの体格と顔をしていた。
・・・彼の名はヴィル。・・かつて帝国で宰相を務めていた男。
・・前皇帝ディオンとは長い付き合いで、若い頃は共に戦場を駆け巡り、共に武勇を刻んでいた。
・・・戦場を退き、城に腰を落ち着けることにしたディオンの宰相として政務に勤しんでいた。
・・彼は死に場所を求めていた。・・・何故なら、生きる気力が無いからである。
・・・あの時、前皇帝が亡くなった日。彼も共に戦う決意をしていたが、ディオンの命で。
`万が一、私に何かあった時。・・・国は混乱する。その収拾をしてくれ。・・・無論、国が落ち着いたと感じたら、ヴィルの判断で辞めてもいい。`
・・そう言い残した。
・・・ディオンは分かっていた。・・ヴィルはディオンにのみ忠誠を誓っていること、娘二人には何も感じていないことを。
・・・その為の最後の命令である。
・・・そして、彼は彷徨っていた。
・・・相応しい死に場所を求めて。
・・その時である。突如、黒い霧が辺り一面に広がったのは。
・・・そして、彼の目の前に異様な存在感を与える神殿が突然現れた事を。
ここから先。・・何が起きるのか?
・・・七天魔は本当に動かないのか?
・・・その答えは後ほど。