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狩人の変わった生活  作者: 満たされたい心
第二章 修行の旅
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第97話 つかの間の休息。







 パーティーが程なく終わった。


 私は食事を充分に楽しんだが、ティナは色々な人達に質問攻めにされ、ろくに食べていない。・・中には、求婚を申し込もうとした輩までいた。

 ・・・しかし、それらを全てティナは断った。


 ・・・私は割って入ろうとしたが、ティナは無言の眼差しで静止した。


 ・・・余計な揉め事は起こさない、ということか。・・・先ほど、ウェイターに持ち帰り用の料理を頼んどいて正解だったようだ。

 ・・・終わった後、朝に散策した時、取っていた宿屋に向かおうとした時、兵士が。


「・・シンスケ様、ティナ様。・・・将軍から今夜は城にお泊まりになっていただいております。・・ご案内します。」


 この言葉に私はティナと顔を合わせ、頷いた。


 ・・・ここで断れば将軍の顔に泥を塗ると同じ、良好な関係でいたい。・・・案内された客室は豪華であった。・・・壁に飾られた絵や調度品は見るからに高級品。・・ベッドも机も椅子も、全てこだわりを持って作られた代物。

 ・・・外から来た人が満足できるそんな部屋であるが、私風に言わせて貰えば、落ち着かない。


 ・・・高級すぎて、使っていいのか迷ってしまう。


 王国の城に泊った時もそうだが、慣れない。・・だが、ティナは普通に使っていた。・・さすがに慣れている。

 王国でも城に呼ばれたことは結構あったと、昔に言っていた。


 ・・私も観念してソファーに寛ぐことにした。


 その時、ノック音がし、合図をだすと。


「・・・失礼します。先ほど申しておりました料理をお持ちしました。」


 そう言ってカートに乗っている三品の料理を持ってきてくれた。


 それを見たティナに私は。


「・・パーティーでは質問攻めで食べていないだろう。・・頼んでいたんだ。・・余計だったか?」


 この質問にティナは。


「・・・いいえ、ありがとう。・・私も空腹で困っていたの。」


 笑顔でお礼を言った。


 私は。


「・・気にするな。俺の代わりに相手してくれたお礼だ。」


 少し素っ気ない返事をした。ティナは食事をしようとした時。


「・・そう言えば、あのパーティーで妙な事を言っていました。・・・騎士の方ですが、`あなたのような美しい方と一緒にこの国を支えたいのです。`と。・・・何か変に思ったのですが、気のせいでしょうか?」


 この言葉に私は少し考えた。


 ・・・口説き文句としては不思議ではないが、スケールが大きすぎる。・・まるで、今、国を支えている人が減ったから、その席に座る為に功績を上げたティナを利用しようとしている。


 そんな風に思える。


 ・・あまり、国の重要なことには関わりたくない。


 ・・私は狩人としての仕事だけをしたい。・・ティナに`気にするな`と言いつつ、体を休めることにした。








 将軍の執務室。


 ゴルトール将軍は書類整理をしていた。


 内容の大半は町の復興についての案である。・・種類は様々だが、税金を多く徴収する物が多い。・・復興には金がいる。それは分かる。

 だが、無闇矢鱈に徴収すれば民の生活が苦しくなるだけである。


 ・・貴族の連中は自分と金のことしか考えていない。・・・それも仕方ない、グリネ様が皇帝になった際、取り巻きの貴族は金のことしか頭にない連中ばかり、・・グリネ様がいなくなり、皇帝代理であるヨルネ様に対して不遜な態度が目につく。


 ・・・曰く、`私はグリネ様に従うだけだ、代理には従わない`・・・`グリネ様は少し席を離れているだけだ`・・と言っている。


 グリネ様が魔物になり死んだと言っても、誰も信じない。


 ・・人が魔物になる、有り得ないことだから。


 ・・・しかし、この国の法に、誰かが行方不明になり、七日間、生存が確認されない場合。死亡と判断。・・という項目がある。・・例外はない。


 ・・皇帝の不在が長期に渡り続けば混乱が起きる。それだけは避けたい。


 ・・無論、ヨルネ様も知っている。・・私が王女様に即位を促したのも、その為である。


 ・・・或いは、王女様自身、まだお認めにならないのかもしれない。


 ・・・妹君の死を。


 ・・・いくら対立していたとはいえ、血の繋がった家族。・・生きていると考えたいのだろう。


 ・・そんな中、ノック音がし、部屋に入ってきたのは騎士である。


「・・夜分遅くに失礼します。・・国境基地の報告書が届きました。」


 そう言って数枚の紙を提出してきた。


 将軍は。


「・・ご苦労、何か変わったことは?」


 この質問に騎士は。


「・・はっ、魔物たちに動きはありません。・・国境線に配置した数体のエッジソンを警戒しているのか、遠巻きに見ているのを数名の兵士が目撃しております。・・また、王都に送りました食料や物資が無くなりそうです。・・・周辺の魔物を狩って確保していますが、物資だけは近隣の村から分けてもらう許可を求めております。・・如何いたしましょう?」


 この質問に将軍は。


「・・・やむを得んな。・・・取りすぎないのように注意を施しておけ。」


 許可を与えた。騎士は敬礼をした。


 書類に目を通す将軍はある項目を見て。


「・・・ん?・・ケンタウロスの死骸と剣が無くなっている?・・・どういうことだ?」


 この報告に騎士は。


「・・はっ、詳しくは不明ですが。・・遺体置き場に放置していたケンタウロスの死骸が突然消えたと、また、武器庫に保管しておりました剣も同様に消えたと。・・・ただ、身につけていた鎧は置いてあったそうです。・・・兵士達の事情を聞いた所、誰も目撃していないそうです。・・あれだけの大きさです。見ていないというのは不自然です。・・ただ、ミノタウロスの片腕はあったそうです。」


 報告を聞いた。


 ・・確かに、将軍も死骸を見たが、大人よりもデカいサイズ。あれを運ぶとしたら荷車が無ければ絶対に無理である。

 ・・勿論、そんな物を基地内で使えば誰もが覚えている。


 ・・食料や物資を運んだとはいえ、基地の外にある王都側に位置する倉庫から持っていた。・・遺体置き場があるのは戦場の近くである。

 ・・反対方向の位置で、絶対に目につく。


 ・・・嫌な予感がするが、死骸を持っていた所で使う道は素材を剥ぎ取るくらいであるが。


 ケンタウロスは素材となるべき部位がない。


 ・・ミノタウロスの片腕の方がまだ使い道がある。


 ・・・しばし、考えたが。答えが出ない。


 将軍は。


「・・・基地に連絡を、警戒を厳とせよ。と。」


 この指示に騎士は了解の敬礼をし、退出した。


 一人になった将軍は夜空を見ながら考えた。・・今まで起きてきた事件。


 ・・前皇帝の殺害。・・前線基地の上位魔物の出現。・・グリネ様の事件。


 ・・・この短期間にここまで目まぐるしいくらいな日々である。・・これらが偶然と片付けるにはあまりにも不自然。

 ・・・そう言えば、城の中にいたグリネ様専属のメイドが行方不明という話を聞いた。


 ・・・グリネ様が消えた後、姿を見ていないと。


 ・・・だが、おかしいのはそのメイドが誰だったのか誰も覚えていない。・・身体的特徴を思い出せず、其れ処か本当にいたのかさえ自信を持てない者達までいた。


 ・・・将軍は数回しか会っていないので確証は持てない。


 ・・会ってはいるが思い出せない。・・この場合は相手をジロジロ見てはいけない傷とかがあったらあまり見ないように努める。しかし、あのメイドは違う。・・ような気がする。


 ・・・分からない感覚が支配する、何かされたのか?


 ・・・将軍は深く考えたが、やめた。・・これ以上考えても埒があかない。・・それに、下手に手を出せば誰かに消される可能性がある。


 ・・・簡単に殺される気はないが、混乱している状況で自分が退場するのは避けたい。


 ・・・将軍は、仕事に戻った。








 ヨルネ王女の部屋。



 王女は一人、夜空を見上げていた。


 ・・・妹の死。・・父上の死に続き、家族を失った。


 ・・皆の前では気丈に振る舞っているが、心の中では限界である。・・上に立つ宿命を受けた王族とはいえ、所詮は人間。

 ・・身内の死に耐えるにはまだ未熟である。


 こんな時に宰相が居れば心強いのだが、あの方はグリネが新皇帝に即位した時に城を出ている。


 ・・・`私が仕えるべきはディオン様のみ、新たな皇帝が決まった今、私は不要です。`


 ・・・そう言い残し、去って行った。


 正直、かなりの痛手である。・・・あの人ほど帝国を支えてくれる人は将軍以外はいない。・・しかし、悲観に暮れている場合ではない。


 王女様の情報網によると、近々、各国から使節団が来ることになっている。


 ・・同時に来るのか、別々に来るのかは分からないが歓迎の準備を用意しなければならない。


 ・・・場合によっては、この会合で援助を貰えるかも知れない。


 ・・そんな淡い期待をし、ヨルネ王女は寝床に向かった。







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