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狩人の変わった生活  作者: 満たされたい心
第二章 修行の旅
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第96話 予期せぬ事。







 祭りの夜。


 ・・・・会場では盛大に盛り上がった。・・あらゆる屋台が並んでいた。


 一番多いのは焼き肉屋である。


 ・・・魔物の肉を串で焼いた物が多く、色々な種類がある。・・・他には飲み物屋があり、様々な酒を売っている。・・・見世物屋や遊び屋のような屋台はない。


 ・・食べることが幸せということか。


 ・・・さてそんな中、私たちも出店した。


 ・・屋台を出す場所は決められており、事前に兵士に言えば許可してもらえる。・・・今回は孤児院の子供達が出店すると言っただけで許可してもらえた。

 ・・・孤児院がヨルネ王女が運営しているのを知っているようだ。


 ・・・屋台の形は日本で祭りの時によく見かける形で、店名は書いていない。・・他も似たような感じである。

 ・・私から見れば少し寂しい店の感じだが、細かいことは気にしない。


 ・・・中の準備も整った。・・作って置いたおでん鍋に串に刺した牛肉。・・後は温めて匂いにつられたお客が来るのを待つだけである。

 ・・他では客寄せの宣伝をやっているが、こちらはやらない。


 ・・何故なら、あまり自信がないからだ。


 無闇に誇張するのはお客の信頼を失わせる。・・子供達が店の前で小型のおでん鍋で匂いを漂わせている。・・・売り上げの方は気になるが、これも商売である。


 ・・・しばらくすると、客がやって来た四人家族連れのようである。


 ・・私は。


「・・いっらっしゃい。・・こいつはおでんと言いまして、体を温めてくれる料理です。・・・一杯いかがですか?」


 家族は匂いを嗅いで、注文してくれた。


 ・・・味の感想は。


「・・・今まで食べたことない味だ。・・・ダイコンがこんなに旨いなんて知らなかった。」

「・・ほんと。・・これって芋よね?・・・硬くてダメだった物が、こんなに柔らかくて味が染みてる。」

「・・おいしい。からだがあたたまる。」

「・・母さん。この牛肉も欲しい。」


 好評であった。・・ついでに牛肉も売れた。


 ・・・子供達も良い笑顔である。・・・このままお客が少しだけ来てくれた方が私は思った。


 ・・何故なら、体の不調はまだ続いている。


 動くことは問題ないが、あまり激しい運動は無理である。・・繁盛すると言うことは忙しいと言うことである。

 ・・子供達には悪いが、のんびりと商売したい。


 ・・・だが、そんな思惑は潰えることになった。


 それからお客が次々と来た。・・お客に聞くと家族連れの方が噂していたようである。


 王国でもクラーケンの討伐が成功した噂が広まるのが妙に早かったような。


 ・・噂好きなのか?この世界は?


 ・・・食べ終わったお客達の顔は満足していた。・・・嫌な予感しかない。


 ・・・それは的中した。


 列ができてしまった。中には一度来た客までいた。・・・繁盛して子供達は喜びながら働いていた。・・私も同じように忙しく動き、体中が悲鳴を上げていた。


 ・・・ティナはそんな私を見て。


「・・・ここは私に任せて、食材の方をお願いします。」


 気を遣わせてくれた。


 ・・お言葉に甘えてお客から見えない位置まで向かった。・・無論、食材はない。・・全部、店に置いてある。

 ・・・しばらく休んでいると、何やら騒がしい声が響いた。


 覗いてみると、・・ヨルネ王女様が店にいた。


 ・・・これはまずいかもと思い、すぐに向かった。近くの子供に聞いてみると。・・・広場の方で挨拶をした後、とある店が味わったことのない料理を提供している噂を聞き、王女様自ら来たようだ。

 ・・味見と親しみの意味を込めて。


 そして、来た時、孤児院の子供達が働いているのを見て、驚き、ティナに詳しく聞いていた。


 ・・説明が終わったようだ。


 王女様は。


「・・ティナさん、そして、シンスケさん。・・・子供達の我が儘に付き合っていただきありがとうございます。・・・ここからは私の従者が引き継がせていただきます。・・お二人はこの祭りを楽しんでください。」


 そう言って後ろに控えていた女従者二人が前に出てきた。


 ・・私は。


「・・いいえ、私とティナが依頼を受けたような物ですし、」


 しどろもどろに言う私に王女様は。


「・・・何をおっしゃいますか。・・・お二方は今回の討伐に協力してくれた冒険者達のメンバーです。・・そんな方々を働かせるのは失礼です。」


 きっぱりと宣言した。


 ・・周囲の人達は小声で。・


「・・え?国境線やあの巨大魔物討伐に協力した人達?」

「・・すっげぇ~~。マジかよ~~。」

「・・あんな美しい女性が。」


 噂が広まること間違い無しである。


 ・・・目立つのは嫌なんだが、私はティナと一緒に行こうとした時、王女様が。


「・・・あぁ、お二方。これからお城でパーティーがあるのですが、一緒に来ませんか?」

 

 このお誘いに私は。


「・・いや、さすがに一冒険者がお城のパーティには、・・なぁ、ティナ?」


 ティナも同様の顔をした。


 それを見た王女様はクスッと笑って。


「・・ふふっ、大丈夫ですよ。・・パーティーの参加者達は貴族は勿論、活躍した冒険者や兵士達も参加しています。・・お堅いものではありません。」


 安心するように説明してくれた。


 ・・・それならば服装や礼儀に神経を使うことはなく普通に飲み食いができる。


 ・・私とティナは了承し、王女と共に城に向かった。






 城の中。ホール。


 案内された場所はすごく広かった。


 ・・上に飾られた高級感溢れる巨大なシャンデリア。中央には何も置いていないが、両端には長いテーブルが置いてあり、その上には様々な料理が並べられていた。

 ・・・お酒も充実。・・更には飾られている調度品の数々。


 ・・まさに、最高級の空間である。


 ・・そんな空間にいるのは、鎧を着た兵士や騎士。同じく冒険者達。・・少し不釣り合いだが、今の私には最高の場である。・・・何しろ、目立つことはない。・・・堂々と思う存分食べられる。


 ・・・近くにいたウェイターがワイングラスを渡してきたので貰った。


 ・・・一口飲むと。・・・酸っぱい。・・高級な酒だろうが、私の口には合わなかった。


 ・・ティナは普通に飲んでいた。・・・その表情は豊かで満足しているようである。・・私は、皿を手に料理を楽しんだ。・・他の連中も皿に盛り付けて食べている。

 ・・・その辺りのマナーは知っているようだ。


 ・・知らなかったら今頃ここは、床に色々散らばっている。


 だが、優雅な雰囲気ではない。・・食器を手に食べながら話したり、隅っこの方で仲間同士で酒を飲んだり、兵士達と冒険者達が和気あいあいと大声で話したり。

 ・・・まるで宴会である。・・・私は気にすることなく、ティナと一緒に食事を楽しんだ。


 ・・・その間、男の騎士や冒険者が近づいてはティナに色目を持っていたが、軽く受け流され、断れていた。・・・私は分かりきった結果を見ながら食事をしていた。


 ・・・そして、奥の扉が開き、誰かが入ってきた。皆が注目すると、入ってきたのはゴルトール将軍である。


「・・・諸君。・・今宵は討伐達成の記念パーティーに出席いただきありがとう。・・・堅苦しいのは君たちも嫌いだろうから、短く終わらせよう。・・・今回の討伐で活躍した冒険者を紹介したい。」


 そう言ってホールの明かりが消えた。


 ・・・そして、私とティナに光が照らされた。


 将軍は。


「今回、国境線の戦いでミノタウロス並びにケンタウロスを討伐した冒険者、二名だ。」


 そう言うとどこからか拍手が響いた。


 他の人達も同じように拍手した。・・・あまりのことにどうしたらいいのか迷っていたら、将軍が手招きしてきた。


 ・・・仕方なく、向かうことにした。


 将軍のところに到着すると。


「・・・ここにいる彼は上位魔物ミノタウロスに勝利している。残念ながら逃げられたが、勝利の証であるミノタウロスの片腕を手に入れていた。」

「・・・そして、美しい彼女は、前皇帝であるディオン様を殺害したケンタウロスを討伐している。・・・死骸と持っていた武器も回収した。」

「・・・・・・我々は勿論、他の冒険者達でも手に余る上位魔物二体を倒している。・・・更にはあの巨大魔物を討伐する時も尽力してくれた。・・・私はこの二人に報酬としてAランクの称号と金貨百枚を贈呈する。」


 そう言って扉から騎士が入ってきて小型の宝箱を私に渡してきた。


 ・・中々に重い。・・受け取った瞬間、再び拍手が鳴り響いた。


 ・・・少し恥ずかしながら将軍から離れた。


 ・・そこから先は質問攻めだが、私ではなく、ティナの方に行った。・・・男にとって話しかけるとしたら女だからな。・・ティナは迷惑そうな顔をしながら受け答えしていた。


 ・・私は近くにいたウェイターに持って帰れる料理を選んでもらった。






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