第95話 屋台の味。
祭りに出す食べ物がない。
・・あまりのことに私は。
「・・・何故、祭りに出すのだ?・・・普通の販売ではダメなのか?」
この質問に子供は。
「・・ダメなの。・・祭りはヨルネお姉ちゃんが主催の祭り。・・私たちが出ないのは、失礼なの。」
何とも要領が掴めない理由である。
しかし、`お姉ちゃん`とは気になる単語である。・・当然、親族というわけでもない。
・・とすると、孤児院を運営しているのはヨルネ王女ということになる。
私は。
「・・・その事については、ヨルネ様はどうおっしゃられていたのだ?」
この質問に子供は。
「・・・お姉ちゃんには何も言ってない。・・言ったら`気にしないで`っていうから。・・・だから、その、お姉ちゃんには良くしてくれたから。・・・せめて少しでも役に立ちたいの。」
少し泣きそうな声であった。
・・お世話になっているから恩返しがしたい。ということか。
・・・私はティナに。
「・・・少しだけ、手伝ってみるか?」
この提案にティナは。
「・・そうですね。・・話を聞いた以上、このまま帰るのは後味が悪いですし。・・アイデアだけでも一緒に考えてもいいと思います。」
賛同してくれた。
それを聞いた子供達は笑顔で。
「「「!!ありがとう!!お兄ちゃん、キレイなお姉ちゃん!!」」」
一斉にお礼を言われた。・・少し照れたが、乗りかかった船だ。やれることをやろう。
まず孤児院に入らせてもらった。
・・一言で言えば質素である。
長机と椅子が並んでいるだけ、奥には礼拝堂みたいに女性の像が飾られている。・・・正直、王族が運営している割にキレイと言うわけではない。
・・最低限の生活必需品を揃えた印象である。
・・この辺りの運営資金にとやかく言うつもりはない。・・・食材を見せて貰った。
・・・ニンジン、キャベツ、タマネギ、ダイコン、ネギ。
・・・種類は少ないが量はある。
聞いてみたら、これらは自分たちで栽培しているらしい。こんな年齢で働くとは、地球の中世もこんな感じなのか。
・・等と感傷に浸っている場合ではない。
他にはないのか?と訪ねたら、裏にある小屋に家畜、牛と豚がいると。
・・見せて貰ったら、中々の良質な家畜。・・よく育てている。
・・その時、樽の中にいっぱいの芋があった。子供が。
「・・ああ、それは家畜用のエサです。・・・この辺りでは沢山、採れるのですが、堅くて、煮ても焼いても美味しくないんです。・・・本来ならば誰も見向きもしない薬草ですが、僕たちは家畜用にいつも採っているのです。他の薬草の売れない物は少ないので。」
答えてくれた。・・どこかで見たような形である。
私は`解析`は発動。
・・・里芋のようだ。確かに生で食べても不味いだけ。ちゃんとした方法でないと食えた物では無い。
・・人体に悪影響はない。・・・地球の芋と変わらない。
・・・待てよ、帝国には共和国と教会からの食材や調味料があるはず。
・・私は。
「・・・ちょっと買い物をしてくる。・・君たちはお姉ちゃんの言うことをよく聞いていてね。」
愛子言葉風に話した。
子供達は頷き、それを見ていたティナも頷いた。
私は急いで、店を回った。
しばらくして、私は必要な物を買い込んだ。
・・・干し昆布としょう油と塩である。みりんや砂糖が欲しいが無かった。
・・・私は子供達に。
「・・・ティナに手伝って貰いたいことがあるのだが、・・・この牛を解体してくれるか?」
この言葉にティナが答える前に子供が。
「・・それは僕たちがやります。・・いつもやっています。」
さすがに逞しい。
私は子供達に解体を任せ、下準備をおこなった。
・・・まず、適当な石を鉄に変えて、デカい鍋を作った。十人分は軽く食える大きさ。・・その中にティナに頼んで、たっぷりの水を入れて貰い、たき火で温めた。
その隣のたき火に小さい鍋を作り、水を入れ、ダイコンを輪切りにし、十字に切れ込みを入れ、煮込んだ。
じっくりと煮込んで、柔らかくなった所で鍋ごと移動させ、冷や水を入れて、置いておく。
・・次に小さい鍋を作り、水を入れ、里芋を角切りにカットした者をいれ、煮込む。・・柔らかくなったら鍋から取り出し、皿に載せる。
・・・その時、子供達が牛肉を持ってきてくれた。
・・・その中で使うのは牛すじ。
・・・これを見たティナは。
「・・・それを使うのですか?・・硬くて、食べられる物ではありませんよ?」
この疑問に私は。
「・・大丈夫だ。むしろ、これでないとダメなんだ。」
そう言って作業した。
・・・まず、牛すじを煮込んで、沸騰したら水に溜まったアクごと流す。・・牛すじは網ザルに移し、鍋をキレイにし、牛すじを入れ、ネギの青い部分を入れ、水をたっぷり入れた。
・・たき火で煮込み、沸騰したら火の勢いを弱め、一時間ぐらいじっくり煮込む。
それと同時に大きめの鍋が沸騰したので、干し昆布を入れ、ダシを取り、昆布を回収し。
しょう油を濃いめにいれ、塩を少々いれた。・・・味はかなり乏しい。
鰹節やみりんや砂糖を使わないダシはこんな物だ。
・・でも問題ない。この料理の本当の味を知る人間はこの世界にはいない。
・・・だし汁の中にダイコンと里芋、カットしたタマネギを入れ、じっくりと煮込んだ。・・・隣の鍋にある牛すじを確認。柔らかく匂いが消えていた。
・・それを大きめの鍋に入れ、さらにじっくりと煮込んだ。
・・・ティナは。
「・・・これは?」
この質問に私は。
「・・・これぞ、俺の故郷に伝わる料理。・・おでんだ。」
自信を持って宣言した。
・・中身は乏しいが、味は良いと思う。・・・早速、試食することにした。
・・・ダイコンは味が染み込んで良かった。
・・子供達の反応は。
「・・・今まで食べたことがない味だ。・・・おいしい。」
「・・この芋。・・すっごく柔らかい。・・・そんでおいしい。」
「・・・この肉も柔らかくておいしい。」
好評であった。ティナは。
「・・・味はいいですし、具材も柔らかい。・・・それに体が温まるようで、寒い地方にはうってつけです。」
こちらも良好であった。
・・・私に的には物足りないが、充分だろう。・・・そんなに客は集まらないだろうが、それなりに売れるだろうと思った。
私は。
「・・よし、それじゃぁ、これと同じ物をもう一度作ろう。・・・そして、残っている牛肉は鉄の串に刺して焼いて販売する。・・・頑張っていこう!!」
かけ声と共に子供達の声が上がった。
・・そこからは同じ作り方をし、客に盛る鉄製の皿を私が大量に作った。
・・・勿論、食べ終わったら回収し、キレイに洗って再利用である。