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狩人の変わった生活  作者: 満たされたい心
第二章 修行の旅
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第93話 王女のお礼。







 目を覚ました私にティナが。


「・・・シンスケ。・・よかった。・・本当に。」


 涙目のティナ。かなり心配させたようだ。


涙ぐんでいるティナは。


「・・それと、言いたいことがあります。・・」


 直後、怒り顔になっていた。


 そこから先は、忘れようとしても忘れられない説教が始まった。・・・罵言雑言ではなく、私のことや自分のこと、どれだけ心配したか、どれだけ苦しい思いをしたのか。

 気持ちをぶつけるかのように私に聞かせていた。


 私は黙って聞いていた。・・時折、相づちを打つように頷きながら。


 一通り説教が続く中、医務室に兵士が入ってきた。


「・・あ、あの。・・・お取り込み中に失礼します。・・・将軍より、目が覚めたら動けるか確認するようにと言われておりますので。・・・どうですか、お加減の方は?」


 兵士の質問に私は。


「・・まだ、動きそうにありません。・・・将軍には、体が不調だと伝えてください。」


 申し訳ない態度で言う私に兵士は。


「・・分かりました。・・・ではごゆっくりしていてください。」


 一礼して部屋から出た。


 二人だけになった後、私は。


「・・そういえば、ここはどこだ?・・かなり金が掛かっている部屋のようだが。」


 この質問にティナは。


「・・ここは、帝国の王城にある医務室です。・・あの後、意識不明のあなたを将軍がここまで運んでくださったのです。・・・将軍は感謝していました。・・一時は勲章を授けたいとまで。・・私が断っておきました。」


 この説明に私は。


「・・それは助かる。・・これ以上目立つのは避けたかった。・・ただでさえ、ミノタウロスを退けたってだけで目立っちまったし。」


 安堵の表情になった私にティナは。


「・・・そう思うなら勝手な行動は慎んでください。・・・いくら狩るべき魔物がいたからって、率先して戦えば、目立つのは当たり前です。・・・ここは、王国とは違って実力が全ての国。・・望もうと望まないと力を示せばそれ相応の報酬が約束されるのです。」


 王国の部分から小声で話してくれた。


 ・・国同士の関係を考えればあまり声に出す話ではないからだ。


 その気遣いに感謝ししつつ私は安静を続けた。







 王都、被害のあった地区。


 ゴルトール将軍は被害状況を聞いていた。


 ・・魔物の通った道は被害が激しく、全壊している建物が多い。・・負傷者の数は重傷者が多いが、死傷者数は少ない。

 ・・魔物はここを通るだけで人々に危害を加えるつもりはなかったようだ。


 ・・その行為はある意味助かった。


 建物はいくら壊れてもまた直せば良い。・・だが、人の命は蘇ることはない。・・・それこそ古の禁忌に手を染めなければ。

 ・・・将軍は気持ちを切り替えて作業をしていた。


 具体的には兵士達の報告を聞き、迅速かつ的確に人員を送り、物資を送る量と運搬の指示。・・家をなくし、住めない人々の仮設テントを張り、食料の配給等。・・・現場の指揮を執っていた。


 兵士達は将軍の適切な指示の元、早く、スムーズに作業を進めていた。


 ・・勿論、この指示に不満を抱く者など一人もいない。


 将軍は指示を出しながら。


「・・・しかし、よくこれだけの被害で済んだものだ。・・・あの魔物、人間に興味はないのか?」


 この疑問に近くに居た小官が。


「・・兵士達の話によれば。魔物は一直線に大壁に向かって行き、その間、民衆達が大慌てで避難していたのですが。・・・・見向きもせずに行進していったようです。」


 纏めた報告書を読み上げた。


 将軍は考えていた。・・・何故、一直線に大壁、ひいては国境線に向かった?・・何かしらあるのか?・・それともその先にある魔物の集団に目的が?・・・色々と推察はできるが、魔物が討伐された今、真意は迷宮入りである。


 ・・だが、将軍はあの魔物がグリネ皇帝が変貌した物だとヨルネ王女から聞いていた。


 ・・最初は信じられなかったが、複数の目撃もあり、何よりもグリネ皇帝が居なくなったのが事実である。

 ・・・もしかしたら、意識があったのか?


 ・・・だとしたら王都に被害を出さず、国境線に向かった。・・・それならば納得できる。


 魔物殲滅がグリネ皇帝の目的だから。・・しかし、いくら意識があろうと魔物になり、襲ってくるのなら討伐は必定。・・・この事は誰にも言わず、墓場まで持って行くと決意した。


 ・・考えが纏まった後、兵士が近づいてきた。


「ゴルトール将軍。・・例の冒険者が目覚めました。」


 この報告に将軍は。


「・・そうか。・・あのケガだからな、今は安静のはずだ。・・・ゆっくり休んでいるか?」


 この質問に兵士は。


「・・はっ。・・本人は体は不調だと言っていました。・・・現在、パートナーの美しい女性と一緒です。」


 報告してきた。


 将軍は`ご苦労`と労いを言い、兵士に次の行動を指示した。


 一礼した後、兵士は現場に向かった。


 将軍は、あの二人とゆっくりと話す機会があるか考えていた。


 ・・最初は勿論、褒美についてだ。


 ・・ミノタウロスの撃退、未知の魔物の討伐。・・・これだけの偉業をしたのだ。それ相応の褒美を与えるのは常識。

 ・・しかし、本人は目立つのを嫌っているらしい。


 ・・ならば、穏便にかつ納得する褒美を一緒に考えるか。・・そう結論し、作業を進めた。


 少しでも早く終わらせる為に。






 医務室。


 私は自分の体を改めて確認した。


 ・・全身の骨折の痛みはない。・・ハイポーションで全治したと言っていたが、本当のようである。・・だが、疲労が激しすぎる。まともに動くことができない。

 ・・無理してでも動こうと思えば動けるが、隣の人が許可してくれない。


 ・・それに、動く理由も今はない。


 ・・・のんびりと回復するのを待つことにした。・・すると、部屋に入ってくる人がいた。


 私とティナが振り向くと、そこには漆黒のドレスを着たキレイな女性がいた。


 その人は。


「・・・お目覚めになったようで安心しました。・・・私の名はヨルネ。・・帝国の第一王女にして、皇帝代理をしている者です。」


 スカートの端を持ち、優雅に一礼した。


 ティナはすぐに立ち上がり、一礼をした。


 私もそうしたかったが、体がうまく動かせない。


 私は。


「・・これは、王女様。・・・私はシンスケと申します。・・このようなお姿で申し訳ありません。」


 謝罪の言葉に王女は。


「・・お気になさらず。・・あなたはこの国を救ってくれたお方。・・多少のことには目をつむります。」


 笑顔で答えてくれた。優しそうな方で良かった。


 二人はそう思った。


 王女は。


「・・では、改めまして。・・未知の巨大魔物からこの国を救っていただき、民達の代表として感謝します。」


 そう言って頭を少し垂れた。


 ・・その姿には少し驚いた。・・感謝を述べながら頭を下げるのは社会人である一市民ならば常識であるが。

 ・・上の者、特に王族となれば簡単に下げて良いはずがない。


 ・・それでも行動したと言うことは、国がどれだけ危険だったのか物語っている。


 ・・ティナは。


「・・王女様。頭をお上げください。・・・王女様がどれ程、感謝しているのか。・・先ほどのお言葉で充分理解しております。」


 私の代わりに静止の言葉を述べてくれた。


 ・・王女は頭を下げながら。


「・・ティナ嬢。あなたの言うとおり。・・王族たる者、簡単に頭を下げてはいけません。・・しかし、私は王族以前にこの国に生きる人として、お礼を申し上げたいのです。・・・・ありがとうございます。」


 上げながら笑顔で言ってくれた。


 ・・さすがにここまでされてあーだこーだ言うのは、相手に対して失礼である。


 ・・・二人は沈黙して受け入れた。


 王女は。


「・・さて、一個人としてのお礼は終わりました。・・ここからは王族としてのお礼をしたいのですが。・・・ティナ嬢の話によると目立つことはお嫌いだとお聞きしておりますが?」


 この質問に私は。


「・・はい。・・私が魔物を討伐したのは狩人だからです。・・・自分の生活のためと害をもたらす魔物を狩っただけに過ぎません。・・・お気になさらないでください。」


 この答えに王女は。


「・・ですが、今回の件はあまりにも大きすぎることです。・・何も無しでは我が国の威信に関わります。・・・是非、お礼を受け取っていただきたいのですが。」


 少し困った顔をする王女。


 ・・・私は少し考えて。


「・・でしたら、こういうのはいかがでしょう。」


 私はある提案を述べた。







 翌日。王城のテラス。



 王都からある報せが響いた。


 `王城広場にて重大な発表がある。`


 ・・・その報せを受け、民衆達が殺到した。


 ・・王族からの勅命、余程のことがない限り参加するのは常識である。・・広場が人々で埋め尽くされた後、テラスから二人の有名人が現れた。


 一人はグリネ王女。もう一人はゴルトール将軍。


 ・・民衆達が沈黙し見届けていた。


 ・・王女は。


「・・・本日集まっていただいたのは他でもない。・・二日前、この国を襲った巨大魔物を討伐し、この国を救ってくれた英雄。・・・ゴルトール将軍のお披露目を行います。」


 この宣言と共に民衆達は活気で満ちあふれていた。



 

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