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狩人の変わった生活  作者: 満たされたい心
第二章 修行の旅
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第92話 人間の意地。








 少し遡り、前戦基地前。


 ゴルトールは数十名の兵士達と戦闘態勢を取っていた。


 目の前には幾つものテントが張られているが、中には誰もいない。

 ・・静まりかえる空気。・・だが、それも長くは続かなかった。


 ・・突然の地響き。・・影しか見えない距離からの振動。・・それが何を物語っているのかここにいる全員は承知していた。

 ・・・圧倒的な存在。・・敵うはずが無いと叫び続ける本能。・・しかし、離れるわけにはいかない。


 ・・ここから逃げれば魔物は他の所に行き、何もできない人々が犠牲になる。


 致命傷を与えて、進撃を止めるもしくは遅らせるしか無い。・・ここが死に場所だ。


 魔物の姿がハッキリと見える距離になっていった。・・報告通り、見たことが無い。


 ・・・巨大で、迫力で、威圧がある。・・こんな気持ちは初めてである。


 ・・他の兵士達は恐怖のあまり、動くこと無く震えていた。


 ゴルトールは汗を拭いながら。


「・・逃げたい奴は逃げろ。・・・咎めはしない。・・・私は残る。・・・ここで決めろ。」


 恐怖のあまりに今までの発言ができていなかった。


 ・・しかし、意図は伝わっている。


 兵士達の代表が。


「・・司令官。・・逃げたいです。・・ですが、逃げません。・・それ以上は言いません。」


 怯えと泣きそうな顔をしながら言った。


 ・・他の兵士達も同様の顔をしながらその場から動かずにいた。


 ゴルトールは何も言わずに大槌を構えた。・・・近づいてくる魔物に向かって。


「・・・放てーー!!!」


 ゴルトールの叫びで開戦した。


 ・・後ろから投石機が大岩を投げた。連続して投げられる大岩。・・魔物に命中。

 しかし、ダメージを負う所か速度が落ちることはない。


 ゴルトールは。


「・・・例の物を準備!!」


 その指示に兵士達は樽を複数用意した。


 そこから伸びる縄に一斉に火を付けた。・・・そして、投石機に装填。発射。

 ・・・樽は魔物に命中。・・すごい爆発音がした。


 樽の中身は火薬、エッジソン隊が到着した時、ドワーフの技術者が開発の副産物として基地に送った物。・・・・万が一、エッジソン隊が壊滅した時に使用する最後の切り札として。

 ゴルトールは黒い煙を見上げていた。


 ・・魔物はその場に留まっているからだ。・・倒せればいい。・・だが、その願いは叶わなかった。


 煙が晴れた場所には無傷の魔物がいた。・・絶望。・・その表現しか無い。


 ゴルトールは大槌を構え。


「・・・皆。命令だ。・・・ここから今すぐ逃げろ。・・そして、伝えるんだ。・・あの魔物の恐ろしさを、伝えるんだ。」


 それを最後にゴルトールは魔物に向かって走った。


 ・・もはや、倒すことは誰にもできない。・・だが、ここで私が逃げれば、私は無論、兵士達、家族にも迷惑が掛かる。

 ・・・先の城の一件で私の家族は軽蔑の視線を向けられていたことを。


 ヨルネ様の計らいで悪化することはなくなったが、これ以上の失態は例え、ヨルネ様のお力でも無理だろう。


 ・・・ならば、戦って死ぬのみ。


 それが今の私にできる唯一、家族を、部下を守る方法だ。


 ・・・魔物の側に到着し。改めてのその大きさを目にした。


 ・・・全身から汗が噴き出す。・・見上げるだけで死を感じる。


 ゴルトールは渾身の力を大槌に込めた。


「・・剛雷震激サンダーブレイク!!」


 ありったけの魔力と剛力をぶつけた。


 ・・弾ける雷、魔物の皮膚にぶつかる大槌。・・ゴルトールの全てをぶつけた。


 ・・・雷が消える。荒い呼吸をするゴルトール。


 攻撃を与えた場所には少しだけ焦げ跡が残っただけであった。・・最初から分かっていた。・・・何もできないことに。・・・ゴルトールは見上げた。


 魔物は虫を見るかのように見下していた。そして、右前足を上げていた。

 ・・避けられるが、その後はどうするのだ?


 ・・・何の策も無い。・・攻撃手段も無い。・・終りだ。何もかも。・・ゴルトールは静かに目を閉じた。

 ・・・その時である。・・突然の衝撃と魔物の悲鳴が上がった。


 あまりのことにゴルトールは目を開けた。すると、魔物が吹き飛ばされ、倒れていた。


 信じられない光景である。・・一体何が起こったのだ。


 ・・上空がやけに明るいので見上げたら、赤い光を放つ一人の男が静かに降りてきた。






 時は少し遡る。


 シンスケは白黒の世界にいた。


 そこで、`覚醒`というスキルを獲得した。


 私は。


(・・`覚醒`とは何だ?)


 この質問に。


【・・`覚醒`とは、魔力が底をつきた時に発動するスキル。・・発動すれば、魔力は全回復し、あらゆる傷は完治、魔術は使いたい放題、ステータスも大幅にアップします。・・但し、発動中は解除は不可能、魔力も漏れた状態になります。・・魔力がつきればスキルは解除され、その後には激痛が全身を襲い、最低三日は動けなくなります。】


 そう答えた。


 つまり、`激動`の強化バージョンみたいなものか。・・つくづく私が獲得するスキルは`看破`以外は体への負担が大きすぎる。

 ・・だが、今となってはありがたいスキルである。


 私は了承した。・・白黒の世界は消え、元に戻った。


 私はティナに。


「・・ありがとう。・・お前だけ、先に行ってくれ。」


 この言葉にティナは。


「・・な、何を言うのです?!・・そんなケガでは何もできません!・・今は逃げるのが先決です!」


 最もな意見である。


 しかし、私は。


「・・・心配するな。・・・新しいスキルを獲得した。・・かなり危険だがな。」


 そう言って私は手を離した。そして。


「・・・スキル`覚醒`。」


 唱えた時、私の体から赤い光が放った。


 ・・・そこから生じる衝撃に近くにいたティナは少し後ずさりになった。


 ・・私の体からは、全身の痛みが無くなり、魔力が溢れ、力が今まで以上に漲っているを感じた。

 ・・・私は飛んだ。・・空を飛んでいるのかと間違うほどに駆けていった。


 ・・そして、目の前に巨大な魔物。


 あれかと思い、蹴りを入れこんだ。







 現在。


 私は吹き飛ばされた魔物を見た。


 ・・四本足で、三本角、恐竜・・トリケラトプスか?・・すごい魔物と出会った。


 絶対に出会えない生物No.1の恐竜がいるのだから、ちょっとテンションが上がる。


 ・・そう思っていると後ろから。


「・・・き、君は一体?」


 その言葉に振り向いた私は。


「・・司令官ですね?・・ここは下がってください。・・正直、誰かを気にしながら戦うことはできません。」


 私は頭を下げながら端的に述べた。


 ・・ゴルトールは理解した。自分がいては彼の足を引っ張るだけだと、・・・ゴルトールは。


「・・・分かった。だが、遠くには行かない。・・私は司令官であり、戦士として戦場に立った。・・後方に行くわけにはいかない。・・だから、邪魔にならない距離で見守らせて貰う。」


 そう言って後ろに下がり、手頃の良い場所に身を隠した。


 私はこれで思う存分に戦えると感謝した。・・さてと、あの魔物、トリケラトプスか?・・が起き上がった。

 ・・私は刀を勢いよく抜刀。


 激しい火花を操作し、炎の刀にした。・・青い炎は無理か、よほど強い摩擦か熱量を加えなければ発動しないか。・・だが、悪くない。・・リスク付きの力は何だかやる気が出る。

 ・・高難易度に挑むプレイヤーの感覚である。


 トリケラトプスは私を敵と見たのか、左前足を何度か掻いていた。


 ・・牛が突進する時の動作。・・・私は刀を構えた。・・トリケラトプスは猛突進してきた、その速度はイノシシ並の速さ。

 あの巨体でこれとはすごすぎる。・・だが、私はそれをジャンプして避けた。


 私は、魔物を見下ろせるほどの高さに驚いたが、すぐに切り替えて、刀を上段構えで急降下した。・・・魔物と接触する瞬間に振り下ろした。皮膚が硬い。だが、問題はない。


 炎の刀は皮膚を切り裂き、肉を焼いた。・・魔物は悲鳴を上げた。・・激しく動く体。・・かなり揺れる、私は振り落とされないように刀を突き刺した。

 ・・悲鳴が更に上がった。


 私はそのまま、炎を体内に巡らせるように放った。その暑さに耐えられないのか、かなりの悲鳴を上げた。・・・魔物はいきなり走り出した。目の前には壁。・・そのまま激突。


 その振動はものすごく、震度六はあるといった感じである。


 ・・私は必死に刀を離さないようにしたが、このままでは倒すのに時間が掛かる。・・刀を抜いた。私は転げるように魔物の背中を移動した。

 落ちないようにすぐに立ち直った。


 ・・・少しだけ振動が収まったので、そのまま走った。・・目指すは顔。・・どんな魔物も顔、特に目玉への攻撃が有効である。


 ・・魔物は壁から離れ、何か落ち着いたように静止していた。・・チャンスである。・・・顔の部分に到達した瞬間。・・・刀を右目に突き刺した。


 ・・かなりの激痛だろう。・・激しく顔を揺らし、壁に激突した。


 私は寸前で刀を抜き、脱出。地面に落下した。


 ・・・私は魔物の右目に向かって。


「雷光激砲!!」


 雷を濃縮した砲撃を放った。


 ・・それは荷電粒子砲の如く。・・一直線に、光の速度で、命中した。


 ・・普段の私であれば、発動するに時間が掛かり、スキが多すぎる技。・・今まで使わなかったが、`覚醒`状態であれば、魔術は使いたい放題。

 つまり、発動時間も短縮できるということだ。


 ・・・魔物はかなりの悲鳴を上げた。・・ただでさえ痛いのに更に攻撃が加えられたのだ。・・耐えられる存在はいない。

 砲撃が止むと、魔物はその場から動かなくなった。


 ・・私は、炎の刀に更なる火を加え、雷の電熱で補いつつ、凝縮し、集中した。


 ・・そして、赤から青になった。


 ・・・時間はかなり掛かったが作ることができた。


 私は刀を構えて。


「・・真獄、迦具土。」


 切り札を発動した。








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