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ロイド再戦!

「えぇっ!ジャイアントアントを二日で駆除しちゃったんですか!?」


 受付嬢が俺たちが提出した、神殿からの駆除完了の確認書を見て驚いていた。


「外殻も回収して、中身を取ってある。鎧の材料に使えたよな」


 毒餌のお陰で、食欲旺盛なジャイアントアントの巣は一日で壊滅。後はのんびり死骸を回収して、使えそうなやつだけ外殻を剥ぎ取ってきた。

 剥ぎ取るのに一日かかったぜ。

 残ったのは毒が残ってるといけないから、全部燃やしておいた。


「凄い、傷がついてない外殻がこんなに!?」


「追加で買い取りしてくれるよな?」


「もちろん、買い取らせていただきます!」


 報酬と買い取りの費用を準備しながら、受付嬢が興味津々で聞いてくる。


「どうやってこんな短期間に駆除したんですか?」


「秘密じゃ、わざわざ飯のタネを明かす莫迦(ばか)もおるまいて」


 ルディアが機先を制して、質問を(さえぎ)った。まぁ、そうだな。楽に稼げる手段を明かすやつはよっぽどの馬鹿だ。

 大量発生して都市や国クラスの大事(おおごと)にでもならない限り、自慢気に吹聴(ふいちょう)して回ることでもない。


「チッ」


 受付嬢が、小さく舌打ちをする。この前から聞こえてんぞ、このアマ。


「おやおや、無職がアリごときの駆除か? 身の丈にあった仕事をしてるようだな」


 ロイド、またお前かよ。


「お前には討伐依頼なんかこなせやしないんだから、虫の駆除でもしていればいいさ」


 いちいち煽らないと会話もできんのか、コイツは。


「あれだけコテンパンに負けておいて、良くそんな口が叩けるな」


「どうせ卑怯なお前のことだ、何か魔法のアイテムでも使ったんだろう。無職でも、アイテムを使うくらいはできるからな」


「その理屈だと、お前は相手の持っているアイテムの正体の確認もなしに突っかかって、ボロ負けしたマヌケになるが」


 いいのか? と真面目な顔して聞いてやる。


「グッ!」


 言葉に詰まるロイド。俺のことを卑怯者扱いするなら、隠し持ってること自体卑怯だとか切り返せよ、そこで言葉に詰まったら本当にマヌケだろうが。


「も、もう一度勝負だ! この依頼、どちらのパーティーが早く達成するかで、だ!」


 バン、と一枚の紙を机に叩きつけるロイド。どうやら依頼書のようだが?


「え~っと、街道筋に出没する盗賊団の捕縛。生かして捕えた方が報酬がいいって」


 ミリィが紙の内容を読み上げる。


「盗賊団の頭領と手下で金額が違う。それぞれ生け捕りにした場合も高い。総獲得報酬の高い方が勝ちだ」


 ロイドが高らかに宣言する。微塵も自分の勝利を信じて疑わぬ顔つきだ。


「なあ、ロイド。お前心底アホだろ」


「何故だ! 馬鹿にするのも大概にしろよ!」


「仮に前の勝負、お前のいう通り俺が魔法のアイテムを使っていたとしたら、俺は自由に人の意識を奪えるアイテムを持ってることになるぞ」


「それがなんだ!」


 アホ確定だな。コイツこんなにアホだったか? 勇者になるとアホになる呪いでもかけられるのか?


「条件に生け捕りがあるなら、俺が断然有利だろ」


「あ」


「あ、じゃねーよ! 考えてなかったのかよやっぱり!」


 もう嫌だ、こんなポンコツ勇者相手にするの。ポンコツが許されるのは、かわいい女の子までだ。


「と、とにかく、勝負は明日から盗賊団の壊滅までだ! 敗けを認めて逃げてもいいぞ!」


「主殿、やるかえ?」


「私はお義兄ちゃんがやるならやるよ」


 面倒事は嫌なんだが、負けた何て言ったら何を言い出すか分からんからな。ほんと、馬鹿には付き合ってられんのだが。


「仕方ねぇ、やるか」


「よし! 今度こそ勇者の力を見せてやる!」


 そうして、俺たちはギルドを後にした。



 宿に帰ると、俺はすぐに準備をしだす。二人にも武装をするように伝えた。


「なんで、今から戦うつもりなの?」


 ミリィが聞いてくる。ルディアは黙々と準備をしている、あいつは分かってるな。


「ロイドが素直に、明日まで待ってるとは思えんからな。今日中に盗賊団を壊滅させちまえば、勝ちだからだよ。たぶん、今晩中に片付けるつもりだろう」


「さすがに、そこまで卑怯なことはしないんじゃないかな~」


 あ、ミリィが若干引いてる、普通はそう思うわな。


「まともに勝負するにしても、今日中に盗賊団の尻尾を掴んでおかないと、勝負にならん。情報集めて偵察はしないとな」


 俺たちは早速武装やら道具やらを準備して、まず、宿の食堂に向かった。

 この宿は、旅人や商人などが移動するときにも使う宿だ。つまり、食堂で噂話を集めれば、町の近隣の状況が分かる。

 噂話を集めるのはミリィが一番上手かった、さすがの聖女様だな。

 集まった話から推察するに、町外れの森を抜けた先。少し山になってて足場の悪いところで、よく襲われるらしい。


「近くに根城にしとる……この位置だとそうじゃな、洞窟かなにかがあるはずじゃ」


 ルディアが予想する。まあ、確かにそうだろう。


「山だと、上の方に見張りがいるな。見つからないように行くのは難しいぞ」


 俺も注意を促す。先に見つかって、隠れられたら意味がない。


「近くを通る荷馬車の人がいるって。乗せていってくれるそうだよ」


 ミリィ、またもお手柄だ。


「よし、それに乗せてもらおう。で、近くで下ろしてもらう」


「岩影にこっそりと、じゃな?」


「そうだ、で今晩様子を見る。ロイドたちが来なければ、明日一気に制圧する」


「簡単に制圧って、大丈夫? お義兄ちゃん?」


 ミリィが心配するのは分かる。相手が実際どれ程強いか分からないからな。


「わしの眠りの魔法を抵抗できるものは、そうはおらんじゃろ」


 ルディアが自信ありげに笑う。実際その通りなのだから、当てにしておこう。


「よし、行動開始だ」


 俺たちは、荷馬車に乗せてくれるという人のところに向かった。




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