遺跡調査だ!
町に戻り、親のクイーンサンドワームを倒したと報告をすると、ギルド内がかなり騒がしくなった。
どうやら、大規模な討伐隊を準備していたところらしく、俺たちはそこで、根掘り葉掘り事情を聞かれることになった。
精霊の話はルディアが適当に、まぁ、一般的な常識に合うように説明という名の誤魔化しをしたので、詳しくは聞かれなかったが。
そもそも、職業とスキルしか知らない連中に、精霊のことを説明するのは大変だ。俺にしたときみたいに、じっくり時間をかけれればいいのだが。
ミリィみたいに目の前で精霊を見れば別だが、生憎とアルは精霊界に帰ったとこだしな。
結果、精霊のことは置いておいて、俺たちは倒したクイーンサンドワームの分の報酬を貰えることになった。
生き残りが居ないか捜索隊を出すそうだから、まだまだギルドは忙しそうだ。
「結構な額を貰えたな」
ギルドからの帰り、俺はずっしりと重みのある金貨袋を懐に抱えながら、二人に話しかけた。
「クイーンサンドワームって軍隊で退治する規模だからだよ。その分の報酬が三体分だよ」
ミリィが、ため息をつきながら説明してくれる。
「私たち、贅沢しなければ、年単位で遊んで暮らせるよ」
「とは言え、バリスタやら何やら買ったからな。手持ちがなくなってたところだから、ありがたいよ」
「しばらくは、好きに探索できるの」
ルディアも、珍しく少し浮かれている。飯の心配をしなくていいのは、確かに心強いからな。
「わしは、あの遺跡の封印を調べてみたいの」
「あぁ、あの精霊石が封印してあったらしいやつか?」
「そうじゃ」
「構わんと思うが」
どうだ? とミリィに聞く。
「私も別にいいよ」
ミリィも素直に頷いた。
「よし、じゃあ一旦宿屋に帰って準備をするか!」
俺の声に二人が答えるように、歓声をあげる。
俺たちは騒がしく、宿屋に向かった。
翌日、例の封印の場所に俺たちはやってきた。
「これを調べたところで、何か分かるかね?」
俺は半信半疑だが、ルディアは熱心に観察を続けている。
破片をいくつか拾い集め、もとあったように並べていた。
「なるほどの」
「なんか分かったのか?」
問いかける俺に、ルディアは微笑み返す。
「少なくとも、この魔方陣はわしらが使っている魔法と、同じ技術で作られておる」
ん? スキルとかじゃ無いってことか?
「じゃあ、魔女が世界に呪いをかける前ってことか?」
俺たちが使ってる魔法は、ルディアが前世で再発見したものだ。魔女が世界をこんなにする前には、盛んに使われていたそうなんだが。
「じゃが、アル殿の話じゃと、魔女が呪いをかけた後に力を奪われたらしいからの」
「それじゃあ、魔女がやったのか?」
「ん~、魔女なら呪いをかける前に、やってるんじゃないかな」
ふとミリィが呟く。なんだって?
「だって、呪いをかけるのに邪魔だから精霊の力を奪うのなら、かける前にやるはずだよね」
なるほどな、一理有る。
「じゃが、そうすると魔女以外に世界から、精霊の力を奪った輩がおることになるの」
「だよね」
なんか複雑な話になってきたな。世界を自分の思うとおりにしようとしたやつが、二人もいるとはね。
「そもそも、魔女は何で呪いなんかかけた。何がしたかったんだ?」
「それは分からんの」
少しづつ調べていくかないか、本人の残した記録でもあればいいんだが。
「どこかに日記でも残ってねーかな?」
「さすがにそれはないんじゃない」
ミリィが呆れたように口にする。
「まだ、世界のどこかにこんな遺跡があるかもしれん。一つづつ見ていくかの」
「また、大変な仕事だな」
ルディアの言葉に、俺は呆れながら答えた。
「じゃあ、大変な旅になりそうだね」
それを聞いたミリィが、ワクワクしながら言ってくるが。
「転移があるからな。遺跡の場所さえ調べられれば、一発だ」
俺の答えを聞いて、ミリィがしょげる。
「せっかくお義兄ちゃんと、旅ができると思ったのに」
まあ、ルディアもいるんだが、この際いいか。
「次の探索場所を探さんとな」
ルディアが呟く。ここで分かるものは、もう無いようだな。
「よし、じゃあ次の場所探しだ。もう一回、図書館でも入れて貰うか?」
「それがええかの」
「じゃあ、図書館へ行くぞ」
「ちょっと、お義兄ちゃん、図書館に行くなら、こんなホコリだらけの格好は駄目だって」
俺たちは、騒々しく町に戻った。




