クイーンサンドワーム
「行くぜ!」
俺は叫んで魔法を発動する。
ルディアの魔法で俺の声が地中に響き、それに驚いたサンドワームが次々と地面に飛び出してくる。
「駆け抜ける嵐の牙!」
大規模な風の渦を発生させ、真空の刃を広範囲に振り撒く。その刃が大量のワームを切り裂いていった。
「ルディア!」
「承知じゃ!燎原疾走る炎!」
ルディアの足元を起点に、炎が帯のように立ち上がり砂漠を焼いて行く。
瞬く間に、大量のサンドワームの死骸を作り出していった。
「……すごい」
「ほう、大したものだ」
ミリィとアルが感心して声を上げた。
まぁ、俺にかかればこんなもんよ。
「クイーンはまだ出てきておらんようじゃの」
ルディアが、サンドワームの死骸を確認しながら呟く。
「もっと深いところに生命を感じるな」
アルがまるで耳をそばだてているような仕草で、地面に視線を送っている。なるほど、もっと深い、ね。
「ルディア、炸裂系の魔法を地面に転移させられないか?」
「弾ける獄炎でも転移させてみようかの」
「……間違っても、俺たちの足元に転移させるなよ?」
俺の提案に答えたルディアだが、やることが極端なやつだ。その魔法は炸裂というよりは、大爆発する魔法でじゃねーか。
「承知じゃ、わしとて吹き飛びたくなぞないでの」
そう言って、ルディアは魔法を発動する。
若干の静寂の後、俺たちより200メートルほど先で、轟音とともに砂柱が吹き上がった。
「これでどうじゃ」
爆発に巻き込まれたサンドワームが、甲高い悲鳴をあげながら吹き飛んでいるのが見える。
そして、見渡す限りの地中からサンドワームが大量に飛び出してきた。
さらに、轟音が響く。
視界の先で、何匹かのサンドワームを弾き飛ばしながら、再度砂柱が立ち上がる。
ズドンとばかりに地面に落ちると、それは巨大なサンドワームだった。
体長100メートルはあるか、体の直径は小さな家ほどもある。
「……でけえ」
「クイーンのお出ましじゃの」
「……あんなの、どうしろって言うの?」
「大きい生命を感じていたのはあれだな」
四人が口々に呟く。それにしてもでかいな、どうしたものか。
「周りの雑魚を片付けるぞ! 駆け抜ける嵐の牙!」
風の刃がサンドワームを切り裂いていくが、クイーンには何の痛痒も与えた気がしねぇ。ぴんぴんしてやがるぜ。
ルディアの炎の魔法でも、やはりクイーンには通用してる様子がない。
「クイーンサンドワームは、装甲値が高いから並みの攻撃は通用しないよ!」
ミリィが、クイーンサンドワームのステータスを見ながら叫んだ。ほー、そんなこともできるんだ。
「装甲値かえ? じゃが所詮はただのステータスじゃ」
ルディアが自信ありげに告げる。まぁな、それならそれでステータスに頼らない戦闘したらいい。
「俺が魔法で風の渦を作るから、ルディアは炎を!」
「承知」
俺は魔法を発動し、風の渦を作り出す。竜巻とは逆に、周りのものを吸い込み一点に集中させるように、風を操る。
「弾ける獄炎!」
その渦の中にルディアが魔法を打ち込んだ。その瞬間に、クイーンサンドワームの体表に風を集中させる。
爆発を起こした巨大な火の玉が、漏斗を伝うように一点に集まりクイーンサンドワームに激突した。
爆発し、四散しようとする炎を風がその場に押し止める。逃げ場を失った炎は荒れ狂い、鉄をも融かす温度へと上昇する。
キィィィ! と巨大な悲鳴を上げて、クイーンサンドワームの巨体がのたうつ。明らかに、炎が集中した部分から大量に出血していた。
「よし、撃ち抜いたぞ」
「でも、あれだけだと致命傷じゃないよ!」
後は任せろ。俺は転移し、クイーンサンドワームの傷口近くに降り立つ。そのまま短剣を傷口に突き刺し、飛び退る。
「打ち破る電!」
雷の魔法を、短剣を通してクイーンサンドワームの体内に打ち込んだ。
「ルディア! 追撃を!」
「天裂く雷!」
ルディアがすぐさま、雷の魔法を打ち込んでくる。
クイーンサンドワームはそれでも動いていたが、俺とルディアの魔法をさらに受け、やがてその動きを止めた。




