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第3話 魔法学校校長

 これまた、魔法学校と呼ばれているが普通の学校にしか見えない。さすがに、夜なので生徒らしき人がいないのでなんとも言えないが教室のつくりなんかはまさしく日本のそれだ。

 

 ソフィアに靴を下駄箱に入れ、スリッパを履くように促され、それに従う。俺の中の魔法の国のイメージがどんどん崩れていく〜。

 

 そのまま、魔法のエレベーターなんてもんもあるわけがなく、普通に階段で2階へと登っていく。そして、あっさりと校長室に到着した。部屋の前にはご丁寧に“校長室”と書いてある看板が付いている。

 

「トミタ様は魔法学校創立当初から、今まで校長でおられます。彼の力あってこの島が救われたことも何度もあります。ですから、失礼がないようにお願いしますね」


 校長室の扉の前で、ソフィアがそういった。


「分かってるよ」 

 

 ソフィアがここまでいう”トミタ”とはどんな人物なんだろうか。聞くところによると相当やばい人らしいからなー。やばい、緊張してきた。

 

「ソフィアです。入ってもいいですか?」

 

 ソフィアが校長室のドアをノックしてそう言った。そして、間も開けることなく

 

「どうぞ」

 

 と、中から声がした。ソフィアが俺に小声で入りますよと言い、俺たちは中に入っていった。さて、どんなすごい人がいるのだろうか…

  

「よくきましたねソフィアさん、それと青年も」

 

 ん?第一印象は思っていたより若いということだ。てっきりご老人がそこにいると思っていたのに、正面の椅子に座っていたのは、スーツをしっかり着こなしたイケメンエリートみたいな奴だった。顔には柔和な笑顔を浮かべている。年齢は俺と10歳も離れていないだろう。いやー、緊張して損したぜ。

 

「立ち話もなんだから、二人ともそこの椅子に座りなさい」

 

 校長が座っている椅子の真ん前に二人掛けのソファーがある。促されるまま座る俺たち。

 

「さて、それでは話を聞こうか」

 

 そういって、先ほどの柔和な笑顔とは裏腹に、真剣な顔つきになった。

 

「はい、今日は、この男の処遇について尋ねに伺いました」


 ソフィアはそう話を切り出し、海辺で会ってからのことを事細かに校長に説明した。その間、俺は黙っておく。ここは、口出しすべきではないだろう。全ての話が終わり、校長が言った。

 

「この島の外から人が来るとは、はじめてのことですね」

 

「そうなんですか?」

 

 もう、口を出してもいいだろうと、疑問を口にする。

 

「はい、少なくとも、私がこの島に滞在中には前例がありませんね」

 

 そんなに珍しいことなのか。ていうか、この島の周りに他の国は、あるのだろうか。当然浮かぶはずの疑問を今まで欠いていたことに気づいた。

 

「おそらく、記憶喪失のあなたは、今、この島の周りの国について、疑問をお持ちになったのではないですか?」

 

 まじか!当てられてる!やっぱ、この歳で校長は伊達じゃないな。

 

「よくわかりましたね。で、実際のところどうなってるんですか?」

 

「はい。結論から言いますと、この島の周りにも国は存在します。ですが、他の国に行くことはできません」

 

「ん?どういうことですか、それは」

 

「少し長くなりますが、お話ししましょう」


 そう前置きし、校長は俺に語ってくれた。

 

「実は、アヴァロン島の人々も10年前まではこの島以外にも、国があるなんて想像をしたとことがありませんでした。この島だけが唯一、人が生きる場所である、と信じて疑わなかったのです。ですが、10年前ある事件をきっかけに全てが覆りました。そうです。狩猟豹(チーター)の出現です。海から出現したそれらから私たちはこの島以外にもどこか、人が住んでいる場所があるのではないか、そして、そこから狩猟豹(チーター)が送り出されているのではないか、と考え始めました。それから、私たちは研究を進め、実際に船を開発し、調査隊を派遣しました。ですが、帰ってきたものはいませんでした。ですから、むやみに調査隊を派遣するのをやめ、研究を続けていたのですが…いまだその国の正体は分かっていません」

 

 なるほど…そんな背景があったとはな。魔法も意外と便利じゃないとソフィアも言っていたが、魔法の国も大変なんだな。映画なんかはどれだけ美化されていたものだったのかがよく分かったぜ。分かりたくなかったが。

 

「ですから、別の場所から来たというあなたは、真相の解明を目指す私たちにとって、希望なんですよ」

 

 はぁ、そうなるのか… ということは、あれか?人体を解剖されたり、脳を取り出されたり、研究の材料にされるのか?!俺!?

 

「では、この男をいかがなされますか?」

 

 今まで口を挟まずに校長の話を聞いていたソフィアが冷静に尋ねた。頼むから、解剖は無しの方向で…

 

「とりあえず、彼は保護・観察という形にしましょう。観察役には、そうですね、ソフィアさんお願いします」

 

「「えぇぇぇ!」」

 

 俺とソフィアが身を乗り出して声をあげた。ソフィアが俺の観察役?てか、観察ってなにを観察するんだ?まぁ、とりあえず解剖じゃなくてよかった…

 

「なぜ私なんですか!?もっと適役がいるでしょ!?別の人にしてください!お願いします…!」

 

 先ほどまでの冷静さはどこにいったのか、取り乱し始めるソフィア。いつもは冷静な態度をとっているが、こういう態度を見ると、ソフィアもまだ子供なんだなぁと思う。


「ところで、青年。名前はどうしましょうか」

 

 まだ喚いているソフィアをよそに校長が俺に尋ねてくる。名前?そうだ、俺名前なんて言うんだろう。いままでそんなこと思いもしなかったぜ。

 

「よろしければ、私が命名しましょうか」

 

 まぁ、どうせ思い出せないんだから任せておくか。

 

「じゃあ、よろしくお願いします」

 

「はい、では”セイビア“はどうですか?」


 セイビア?どう言う意味だろう。英語の授業でやった気がするなーうーん。まあ、ここに英語があるかどうか知らんが。

 

「どう言う意味ですか?」 

 

「特にありませんよ。かっこいいからですよ」

 

 意味ないんかーい。まぁ、かっこいいからいいや。セイビア。うん、かっこいい。

 

「保護・観察って、具体的に俺はなにをされるんですか?」

 

先ほど疑問に思ったことを訪ねておく。


「その説明がまだでしたね。まぁ、名前道理ですよ。この国に貴重な存在であるあなたを傷つけないようにソフィアさんが全力であなたを保護します。また、まだ素性がよくわからないあなたを、100%信用できるは訳では、ないので、ソフィアさんがあなたの行動を逐一監視します」

 

 なるほど…そういう意味での保護・観察か… まあ、妥当な判断かといえばまあ、妥当だろう。それにしても、監視か。俺の行動を全て監視されるというのもあまりいい気分ではないが、何しろ俺はここじゃない場所から来たんだ。どうせ、この国の買っても分かりはしないし、魔法も使えはしない。そう考えると悪い提案ではないな。

 

「えぇぇぇ!なんで私がそんなことをしないといけないの…」

 

「よろしくお願いしますね。ソフィアさん」

 

「は、はいぃぃ…」

 

 校長の柔らかな笑顔に負け、ソフィアが承諾した。ていうか、なんでそんなに嫌なの!?俺のことそんなに嫌い!?

 

 とまぁ、そんなこんなでなぜか魔法の国に来てしまった俺。セイビアという新しい名前も与えられ、ここでの生活が始まる。俺の記憶を取り戻すことや、元の世界に変える方法を探したり、やることは山積みだ。だが、なんとか頑張って生きていこうと思う。魔法が使えない俺でも、きっとなにができることがあるはずだ。


「不本意ですが、今日からあなたの保護・観察役になりましたソフィアです。セイビアさん、どうぞよろしくお願いします」


「あぁ、よろしくな」

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