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第2話 ソフィア

「では、私の任務は終わりましたのでこれで失礼します」


 ソフィアと名乗る少女は、そうとだけ言って、俺の元から去ろうとした。いや、ちょっと待ってくれよ! 俺をひとりにしないで!

 

「ちょっと、話を聞きたいんだけど…」 

 

 そうソフィアの背中に声をかけた。ソフィアは足を止めて、ゆっくりと振り返った。さっきは、服装のインパクトのおかげで、よく顔を見ていなかったが、今回はしっかりと見ることができた。普通にかわいい。髪は肩ぐらいまで伸ばしたいわゆるショートボブ。目は吸い込まれそうなぐらい綺麗だ。まぁ、大学を卒業してる大人の俺はこんな小娘に欲情したりしないがな。

 

「どうしましたか?」


 いかにも、義務的な口調でソフィアはそう言った。

 

「ここは、どこ?」

 

「は?」 

 

 一番の疑問を俺は口にした。それに答えたソフィアの目はいかにもバカを見る目で俺を蔑んでくる。

 

「アヴァロン島 西区の海岸ですけど」

 

 そうソフィアは答えた。ん? アヴァロン島? どこだそこは。なんか、伝説でそんなような島があったような…。そうだ、確かあれはアーサー王物語の舞台の島だ。なんで、俺がそんなところにいる? ていうか実在した島だったのか?

 

「用件は以上ですか? それでは私は行きますけど」


 そう言って、早速歩き始めた。だから、ちょっと待ってくれよ!

 

「あの…! 信じないかもしれないけど俺の話、聞いて欲しいんだ」

 

「はぁ…」

 

 嫌々ながらも、こっちに戻ってきてくれた。根はいい奴なのかもしれない。

 

 その後、俺は今自分が話せる全てのことをソフィアに話した。気づいたら、海辺で倒れていたこと、それ以前の記憶がないこと、ロボットに襲われて倒したこと。俺が話してる間彼女は口を挟むことなくちゃんと聞いてくれた。ほんといい奴。

 

「事情は、わかりました。ですが、私にはなにもしてあげることができません」

 

「そうか、そうだよな…」

 

 見ず知らずの人の話をちゃんと聞いて信じてくれただけでもすごいことなのだ。こっから先のことをソフィアに相談するってのもなんか違うよな。

 

「わかったよ。自分でちょっと調べてみるよ。じゃあな」

 

 ソフィアがさっき帰ろうとした道を俺が先に行き、堤防を降りていく。さて、これからどうしようか。この意味不明なアヴァロン島とかいう魔法の国のこと、それから、俺の記憶、謎のロボット。いやー考えないといけないことが山積みだぜー。

 

「待ってください」

  

 俺がこれからしないといけないことに不安を覚えていると俺を呼び止めることがした。そう、ソフィアだ。俺を堤防の上から見下ろしていた。

 

「討伐団として、路頭に迷っている人を野放しにすることはできません。狩猟豹(チーター)のこともありますから」

 

「でも、さっき何もできないって…」 


「私にはできません。でも、魔法学校校長のトミタ様なら何かわかるかもしれません。彼は、この島の統率もしています。あなたのこれからの処遇も彼に聞いてみるのがいいでしょう」

 

 はぁ…よくわからんがどうやらそのトミタとかいう奴が何か手がかりを知ってるかもしれないってことだな。自分で手ががりを探す手間が省けたぜ。

 

「それで、そのトミタって言う奴はどこにいるんだ?」

 

「私も、狩猟豹(チーター)のことで報告があるので一旦魔法学校に戻ります。なので、付いてきてくれれば案内しますよ」 


 まじか、なんとありがたいことだ。やっぱいい奴だなこいつ。

 

「ありがとう」 

 

 俺はソフィアの前に行って、思わず手を握っていた。ほんとうに、ありがとう。

 

「っっっ!? な、なんですか、いきなり…」


 彼女は驚いたように俺の手を振り払い後ずさった。気持ち顔が赤くなっているように見えるのは俺の気のせいだろうか。まあ、いいや。これで、何か手がかりが手に入るかもしれない。

 

「もう…早く行きますよ。付いてきてください!」

 

 そういって、彼女は先に行ってしまう。俺も置いていかれないように後についていく。

 

 その道中、俺はいろいろなことを彼女から聞いた。それでわかったことがある。

 

 ここは、島国であり、アヴァロン島という。この島では古代、人類が初めて存在した時から、魔法という不思議な力が使えたという。使える魔法は人それぞれで、攻撃魔法に長けているもの、回復魔法に長けているものなど様々だ。その中でも、攻撃魔法に長けている少年、少女たちは”魔法学校“という、学校に集められるという。さらに、その中でも特に優れた魔法を使うものを”狩猟猟(チーター)討伐団“の一員とする。

 

 おっと、狩猟猟(チーター)の説明がまだだったな。 狩猟豹(チーター)というのは、俺が海辺で戦った怪物だ。聞くと、十年前、突如としてこの島に海から出現し、以来、ときどき現れ、島にいる人を襲うようになったという。そのときから、魔法学校制度、狩猟豹(チーター)討伐団制度が体系化され、狩猟豹(チーター)と戦うようになったという。いまでも、研究は続けられているが狩猟豹(チーター)の正体は依然不明だという。

 

 ていうか、やっぱり俺は魔法の国に来てしまったということなのかね。ゲームの中なのではとも思ったがこうもリアルな設定を持ち込まれるともう疑いようがない。はて、これが噂に聞く異世界転移っていうやつなのか? ラノベで読んだことがあるぞ。 

 

 道中、一つ気づいたことがある。この手の異世界転移では、大抵が西洋風の街に転移していた気がするが、ここは違う。魔法という設定を除けば、普通に俺が知っている日本の街だ。まぁ、俺は東京の街しか知らないんだが。普通に、高層ビルが立ち並んでいる。だが、

 

「なんで、人がいないんだ?」

 

 ふと思ったことを質問してみる。

 

「さっき説明した狩猟豹(チーター)。あれが出現するのは夜なんですよ。だから、攻撃魔法が使えない街の人は皆、夜は家でじっとしてるんですよ」

  

「なるほどな。ていうか、さっきから疑問だったんだが、学校まで一瞬でいける魔法とかはないのか? 結構距離あるし」

 

「魔法はそんなに便利なものではありませんよ。使えて、一人につき一種類って感じです。私の魔法は攻撃魔法“桜花灼熱”なので」

 

「へー…」

 

 以外と、役に立たないんだな。映画のおかげで魔法はとても便利っていうイメージがあるけど実際はこんなものなのかな。

 

 そうこう話しているうちに魔法学校に到着した。見た目は、やっぱり普通の学校っぽい。


「さぁ、入りますよ」

 

 正門らしきものをくぐっていくソフィアの後から俺もついていった。

 


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