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アマリ―シュアは旅の準備を少しずつであるが進めていくことにした。

ゼインには置手紙を置いて騎士大会の当日にはこの家を去るつもりだ。

優しく世話好きだった姉としてきれいなまま去りたかった。

そう、アマリ―シュアは気づいてしまったのだ。

ゼインに恋をしている自分に。


ゼインは聡い子で、仕事で無理していたり体調が悪くごまかしているアマリ―シュアを、

言葉は少ないが、「早く寝ろ。」「これは俺がする。」など言葉は少なくぶっきらぼうだが、

アマリ―シュアをいつも気遣ってくれるのだ。

そんな優しくて強くゼインが成長していき、そばでみていたアマリ―シュアが自然と心を寄せるのは自然だったのかもしれない。

アマリ―シュアが支えてあげるべきだった弟は、気が付けば保護者である姉を必要としていない。

悲しいが事実である。



ゼインは人の顔色や心情を測るのが上手い。おそらくそうせざるを得ない幼少期があったのであろう。

そのため、無口だが人には好かれる。言葉ではなく態度で人を助けてくれるのだ。だから、周りにいる人がゼインを離してくれないし

あれやこれやと世話を焼いてくれるのだ。

そういった友人がゼインには多いため、アマリ―シュアは自分が去った後のことを心配していない。


アマリ―シュアだって、何度だってめげずにこれたのはゼインがそっとそばにいてくれたからだと自信を持って言える。

それに、あの端正な顔立ちにキラキラとした銀髪に澄んだ青空のような碧眼が魅力を増している。

まあ、基本的に無表情無口だが。



騎士大会まではあとひと月。

それまでには、旅の準備や家を去る支度をしなければいけない。

幸いなことに、ゼインは大会に向けての訓練やらで先輩騎士や同僚たちに引っ張り出されていて忙しくしているし、

私の行動も気づかないだろうと、ほっとしていた。








アマリ―シュアは、定休日に旅の準備をするために街に出かけていた。

ちょうどゼインが出かけて行った後に、こっそりでてきたのだ。



「アマリ―シュアさん!」後ろから自分を呼ぶ声がしているので振り向くとリオンがこちらに向かってきていた。

リオンはゼインの友人の一人で優し気な好青年だ。栗色の髪と瞳がふんわりとした優しげな雰囲気をだしている。

確かゼインより一つ上の17歳だったはずだ。


「リオン君!久しぶりね。全然お店に来てくれないんだもの。」

「すみません、ゼインにあまり来ないように言われてて、、」

「え?そうなの?」

「いや、ほかの男たちにも言ってるかも・・」


ゼインは忙しいアマリ―シュアに気を利かせて、周りにそう言ってるのかもしれない。


「ゼインは優しいから姉を気遣ってくれたのかな・・・」


『いや、独占欲ですよ。あれは完全に・・・』内心リオンはそう思いながら、

「そうかもしれませんね~あはは・・」苦笑いした。『アマリ―シュアさんの鈍感さも重症だな、こりゃ。』


「今日はどうしたの?仕事は非番の日?」

「そうなんすよ。次のデート用に彼女にプレゼントを買いに来てました。」

「それは素敵ね。相変わらず、まめね~」

「そうでもないですよ。大切にしたいだけです。」


「これは彼女もリオンにベタ惚れね。」

「そうだといいんですが。」



なんて会話をしていると、ふいに「アマリ―シュアさんは何か用があるんですか?付き合いますよ。」

とリオンから有り難くないお誘いを頂いた。、

「ちょっと買い出しに来ただけなの、おほほ。全然お手伝い不要よ大丈夫じゃあ急ぐからね。おほほ」

アマリ―シュアが去ることは誰にもばれないようにしたいので、早口でそう言ってリオンから離れた。



リオン「分かりやすいくらい、何か隠しているなあれは。ゼインには言っているといいけど。」

あのアマリ―シュアしか見ていないゼインが、気づいてないことはないか。

とリオンは少し不安に思いながら、自分を納得させた。









早歩きでリオンから離れながらアマリ―シュアは、変に思われたかしら?大丈夫よね。

内心バクバクしながら早歩きで移動していた。


その時、前をよく見てなかったのが悪く、ドンっと人にぶつかってしまったようだ。

「す、すみません!」

アマリ―シュアはすぐ謝った。



「アマリ―シュアさん、またぼーっとしていたんですか?」


アマリ―シュアとぶつかった相手はリリアーナだった。

「リリアーナちゃん?」

リリアーナはゼインの周りをよく囲んでる女の子の一人で、金髪バイオレット色の猫のような吊り上がった瞳をした

ちょっぴりきつめの美人さんである。アマリ―シュアが薬草をおろしてもらう商人の一人娘でもある。


「ごめんね、前よく見てなかったみたいで。」

「いつもぼーっとしてるんですから、気を付けてくださいね。」

「うん、そうするね。」

ゼインと同じぐらいの年頃の女の子に注意され、アマリ―シュアは恥ずかしく思った。

「あ、そういえばゼインに騎士大会のこと聞きました?」

「あまり詳しく聞けてないのだけど、出場するらしいわね。」

「そうらしいんですが、、今回の大会で必ず叶えたいことがあるみたいで今必死で訓練しているらしいんですよ。

あのいつも飄々としているゼインが。アンリ―シュアさん何か知っていますか?」


「え?ゼインは自分のこと全然話してくれないから・・・」

アマリ―シュアの心臓がはねた。

もしかして、ゼインには告白したい相手がいるのかしら。

騎士大会では優勝した騎士が想いを寄せる相手に告白をすることが多い。

なぜなら、優勝した名誉ある騎士の告白を断るような女性はこの街には一人していないからだ。



「そうなんですか、私はてっきり・・・」

「あ、私急ぐからごめんね。」アマリ―シュアはそれ以上彼女の言葉が聞きたくなくて足早に離れた。


「え!アマリ―シュアさん!まだ話したいことがあったのに・・・」





アマリ―シュアは心臓が痛みを覚えるまで、歩き続けた。

気が付けば買い出しもせずに、街の端の方まで来てしまっていた。

そして近くのベンチに腰を下ろした。


やはり、ゼインには想いを寄せる相手がいるのだ。

アマリ―シュアは確信をもってそう思った。

「早く、出ていかなきゃ・・・・。」






とぼとぼと帰宅の途に就いていたアマリ―シュアは、前方から走ってくるゼインに気が付かなかった。


「アマリ―シュア、遅い!」

息を荒くさせ静かに起こるゼインを見てアマリ―シュアは、やってしまった。と冷や汗をかいた。

ゼインは怒らせると長い。そして心配性である。


「ご、ごめんね。散歩していたらこんなところまで来ちゃった。」

「遅い。いつもなら家にいるから心配した。」

「本当にごめんね。」

心配をかけてばかりの姉で申し訳なく思っていると


「何か用があったの?」ゼインが珍しくこちらに聞いてきた。

「え!全然何もないよ本当に散歩してただけだよ。」

アマリ―シュアは慌てながらそう答えた。


ゼインはじっとアマリ―シュアを見つめて「ならいい。」とあきれたような顔をしていった。


アマリ―シュアは、先を歩くゼインを見つめながらまた呆れられたかな。と悲しく思った。




























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