幕間 命取り
「一の太刀・静山」
「速いだけじゃ、僕には通用しないよ」
居合いで抜刀した剣腹に添わせ、剣を滑らせるように夏樹の首元に迫る。
「ッッ! 七の太刀・輪尾」
強引に身を捻り回避したと同時に大きく薙ぎ払うように剣を払う。フェイは間合いを見極め、バックステップで避ける。
「ふぅ……この辺で休憩しようか」
「はぁ……スペック上がったはずなんだけどなぁ」
「ふふふ……落ち込むことはないさ。 確かに純粋な技量勝負じゃ、負けるつもりはないけど、大質量の技を繰り出し続けられたら僕は対処出来ないよ」
体調回復後、勇者スペックに体を慣らす目的でフェイと訓練をしていた。
「流石だな、イグさん。 よし、次は俺と勝負しようぜ」
カリオが槍を構え、魔力を風に変え威圧する。
「……休憩の後な」
「お疲れ様です。 食事の準備は出来てますから戻って来てくださいね」
「ありがとう、エイン。 すぐ戻る。 ってことだから、食べた後な、カリオ」
カシーレ公国を離れて、サジビア帝国に身を潜めている。
帝国は皇帝を失い、不安定なため、身を隠すには最適だった。現在は半壊したスラム街の宿跡で、魔王に関する情報収集しながら生活している。
〜〜〜〜〜
魔国。それは魔族、魔物の住う国。
魔王ルドリエは1人、思考の渦に微睡んでいた。
「ふふふ……素晴らしい。 実に素晴らしいよ、ナツキ君ッ! 概ねシナリオ通りに進んでいるが、君の力は想定以上だった。 まさか自力で憤怒を打ち破るとは思っていなかった。 本来なら、憤怒に呑まれた彼が、仲間だったはずの者達を手にかけていく様を見れるはずだったのだが。 そう……想定外なんだよ、君は一般人……のはずだった。 いや、実際に一般人なのだろう、でも、君には不自然な点が多過ぎる。 本気ではなかったとはいえ、召喚直後の騎士団長との模擬戦で対等に戦ってみせた。 それだけじゃない、あの眼も……君はこの世界に来る前から、超常の存在に魅入られた異端者だった。 そして、それを召喚してしまったわけだが、一体、どんな確率だ? まるで、召喚されることすら、想定済みであったかのように、特殊な唯一の存在が選ばれた。 ナツキ君……君は一体、何者なんだい?」
シナリオ通りに進まない、それすら楽しんでいるかのように、獰猛な笑みを浮かべ、これからの展開に想いを馳せる。




