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盲目の勇者  作者: 岡エシ
第3章
41/66

39話 謳う

 静寂が世界を支配する。


「あぁ……ぁぁあ……」


 ひび割れる、崩れる、壊れていく。

 俺は……。


 ゴキバキッと不快な音ともに蝿が姿を変えていく。

 そこに現れたのはメアだった。

 いや、メア……じゃない、メアの姿をした何かがいた。


「ふぅ……まさか、寸でのところで邪魔されるとは思わなかった。 定着まで時間がかかる……勇者はお預けかな」


 メアの顔が見える、メアの声が聞こえる。

 それが不快で苦痛、醜悪で……許せない。

 抑えていた枷が外れる。


 一瞬で切迫し、ザンッとメアを袈裟斬りにする。


「……! 痛いな、随分と容赦が無いね。 この女は仲間だろう?」


 巨大な蒼い斬撃がメアに襲い掛かるが、手から放たれたヘドロに相殺される。


「ぐ……まだ不安定だ。 これ以上は武が悪いね、引かせてもらうよ。 バイバイ、ナツキ君」

「……!!」


 追撃を行おうとするも体が動かない。

 ランエルに治癒を受けたとはいえ、グリードから受けた致命傷、再戦による消耗が重なり神眼の暴走も限界を迎えた。

 去っていくメアの背中に手を伸ばしながら意識が暗転する。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 燃える、燃える、ゆらゆらと。

 焔の中で愛を謳う。


「あらぁ? 久しぶりだねぇ、お姉さん」

「ふふふ……ようやく見つけました。 あなたを殺して取り戻す」

「私を殺すぅ? お姉さんが? 無理よぉ、多少強くなったみたいだけど、その程度で届くと思ってるのぉ?」

「あなた如きに負けるほど弱くはないですよ」

「……! 言ってくれるわぁ、後悔させてあげる。 ーーー大罪槍(ベルフェゴール)」


 空間がひび割れ、禍々しい槍が姿を現す。


「後悔するのはあなたの方ですよ。 ーーー召喚(コール)・真紅竜(クリムゾンヘルカイト)」

 

 巨大な炎を纏う真紅の竜が姿を現す。

 エインが手を振り下ろすのを合図に、竜の口内に超高熱のエネルギーが凝縮され放たれる。

 キュァァァァアッ、劈く様な音ともにスロースの槍とぶつかる。


「……ぐぅ! こんなもので……! ーーー堕落(フォールン)」

「……! ステータスを下げる魔法ですか、小賢しいですね。 ーーー灼熱地獄(インフェルノ)」


 竜の吐息が地面を這い、赤熱化する。

 足元から紅蓮の炎に纏わり付かれて燃えていく。


「あぐぅ……ぁぁ……こんな、こんなぁ……いやぁ、まだ、まだよぉ……」

「これで終わりにしましょう。 ーーー火葬神殿(クリメイトテンプル)」


 炎の神殿に閉じ込められるスロース。

 無理矢理脱出しようと槍を使って穴を開けた瞬間。


ーーードゴォォォォオオッン!!


 空気が一気に流れ込み爆発した。

 煙が晴れるとスロースが着ていた服の一部と勇者の石だけが残っていた。


「ふふふ……あははははは! やりました、やりましたよ、ナツキさん! ついに、取り返しました! 待っててください、私の愛しい勇者様」


 燃える、燃える、ゆらゆらと。

 焔の中で愛を謳う。

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