39話 謳う
静寂が世界を支配する。
「あぁ……ぁぁあ……」
ひび割れる、崩れる、壊れていく。
俺は……。
ゴキバキッと不快な音ともに蝿が姿を変えていく。
そこに現れたのはメアだった。
いや、メア……じゃない、メアの姿をした何かがいた。
「ふぅ……まさか、寸でのところで邪魔されるとは思わなかった。 定着まで時間がかかる……勇者はお預けかな」
メアの顔が見える、メアの声が聞こえる。
それが不快で苦痛、醜悪で……許せない。
抑えていた枷が外れる。
一瞬で切迫し、ザンッとメアを袈裟斬りにする。
「……! 痛いな、随分と容赦が無いね。 この女は仲間だろう?」
巨大な蒼い斬撃がメアに襲い掛かるが、手から放たれたヘドロに相殺される。
「ぐ……まだ不安定だ。 これ以上は武が悪いね、引かせてもらうよ。 バイバイ、ナツキ君」
「……!!」
追撃を行おうとするも体が動かない。
ランエルに治癒を受けたとはいえ、グリードから受けた致命傷、再戦による消耗が重なり神眼の暴走も限界を迎えた。
去っていくメアの背中に手を伸ばしながら意識が暗転する。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
燃える、燃える、ゆらゆらと。
焔の中で愛を謳う。
「あらぁ? 久しぶりだねぇ、お姉さん」
「ふふふ……ようやく見つけました。 あなたを殺して取り戻す」
「私を殺すぅ? お姉さんが? 無理よぉ、多少強くなったみたいだけど、その程度で届くと思ってるのぉ?」
「あなた如きに負けるほど弱くはないですよ」
「……! 言ってくれるわぁ、後悔させてあげる。 ーーー大罪槍」
空間がひび割れ、禍々しい槍が姿を現す。
「後悔するのはあなたの方ですよ。 ーーー召喚・真紅竜」
巨大な炎を纏う真紅の竜が姿を現す。
エインが手を振り下ろすのを合図に、竜の口内に超高熱のエネルギーが凝縮され放たれる。
キュァァァァアッ、劈く様な音ともにスロースの槍とぶつかる。
「……ぐぅ! こんなもので……! ーーー堕落」
「……! ステータスを下げる魔法ですか、小賢しいですね。 ーーー灼熱地獄」
竜の吐息が地面を這い、赤熱化する。
足元から紅蓮の炎に纏わり付かれて燃えていく。
「あぐぅ……ぁぁ……こんな、こんなぁ……いやぁ、まだ、まだよぉ……」
「これで終わりにしましょう。 ーーー火葬神殿」
炎の神殿に閉じ込められるスロース。
無理矢理脱出しようと槍を使って穴を開けた瞬間。
ーーードゴォォォォオオッン!!
空気が一気に流れ込み爆発した。
煙が晴れるとスロースが着ていた服の一部と勇者の石だけが残っていた。
「ふふふ……あははははは! やりました、やりましたよ、ナツキさん! ついに、取り返しました! 待っててください、私の愛しい勇者様」
燃える、燃える、ゆらゆらと。
焔の中で愛を謳う。




