30話 本戦開始
「メア、このブロック……」
「分かってる、なんかヤバいのがいるんでしょ?」
「あぁ……無茶すんなよ」
Gブロックが開始されると同時にメアは圧倒的なスピードとパワーで周囲の参加者を薙ぎ払っていく。
その中に1人、避けるだけで攻撃をしない人間がいた。
参加者の数が4分の1ほどまで減少した頃、突如動き出した。開始してから鞘に収まり続けた双剣を抜いた直後、姿が消えた。
「はぁ……はぁ……なっ!!」
次々と血飛沫を上げ倒れていく参加者、それを確認した瞬間、微かに感じた殺気に、考えるよりも先に反射的に体を動かす。
メアは脇腹を浅く斬られたが致命傷にはならかった。周囲を見渡せば、双剣を持った男とメアしか残っていなかった。
「くくく……いいねぇ。 本戦で当たるのが楽しみだ」
司会の本選出場宣言を聞きながら、双剣を納め舞台から降りていった。
「大丈夫か、メア」
「大丈夫よ、傷も浅いし。 にしても、何なのあいつ。 気味悪いんだけど」
「分からない、けど、次に当たる時は気をつけた方がいい。 さっきの攻撃も僅かに殺気が混じってた。 大会のルールで殺しは禁止されているけど、事故に見せかけて……可能性は捨てきれない」
「そうね、でも、それはナツキ君の可能性もあるんだからね? 気を付けなよ」
「お? 心配してくれんのか?」
「……今すぐ、大槌の錆にしてあげようか?」
「いや、遠慮しとくわ……」
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4日後、本選が開始される。
「お待たせ致しました! 本日より武闘会本戦を開催致します! 予選のバトルロイヤルを勝ち抜いた強者達の勇姿を皆様の目に焼き付けてください」
抽選の結果、夏樹は本戦1試合目となった。相手は同じBランク冒険者らしい。選手控室で夏樹が装備の手入れをしていると、話しかけられた。
「ねぇ、あなた、もしかして眼が見えないの?」
「えぇ、見えませんよ? あなたは……」
「同じCブロックのケルシーよ。 魔法の尽くを最小限の動きで避けられたのはショックだったわ」
「まぁ、視覚はダメですが、それ以外を鍛えてますから」
そんな他愛もない会話をしていると、1試合目の選手に声がかかる。舞台上に上がると、歓声が上がる。
「さぁ、北側から現れたのは今大会初出場のダークホース。 ナツキ選手! 彼はなんと眼が見えません……が、予選では素晴らしい体術で捌き続けました。 南側から現れたのはキース選手、鉱山のアースドラゴン討伐にも参加した若き有力冒険者です。 それでは、準備はよろしいですか? 武闘会本戦第1試合……開始!」
キースが剣を抜き、油断なく構えるのに対して夏樹は構えるどころか抜刀さえせず、歩きながら近づく。
「……! 舐めるな!」
キースが踏み込んだ直後、夏樹を見失う。
トンッと頸に手刀が当てられ、崩れ落ちた。
「あ……しょ、勝者、ナツキ選手!! な…何ということでしょう。 一瞬、一撃、あまりの早技に全く目がついていきませんでした」
静まり返っていた会場が騒めきだし、徐々に大きな歓声へと変わっていった。
その後のメアも相手を一撃で倒して2回戦へと駒を進めた。
2回戦目の夏樹の相手はゲイザ。予選でメアに傷をつけた双剣使いだ。彼は世界各国で殺人などの罪を重ねて冒険者証を剥奪された元Aランク冒険者、強さは折り紙付きだ。
「くくく……予選のあの女も面白そうだが、お前も良さそうだな」
「さぁ、次の試合はダークホースの夏樹選手対元Aランク冒険者ゲイザ選手の組み合わせ! 準備はよろしいですか? 試合開始!!」
ゲイザの気配が薄れていく。夏樹は驚く様子なく振り向き様に剣を抜き放つ。
「ぐあっ……なぜだ、見えていないんだろう? 気配の薄れた俺になぜ気付ける!?」
ゲイザの暗殺術はガハルドと同じもの。ガハルドより練度は高いが……。
「フェイさんには遠く及ばない」
夏樹の気配が消えていく。気配が薄れる程度ではお粗末だ。
刹那、ゲイザは目の前に微かな気配を感じ、剣を払うが……背後から剣で貫かれ、膝から崩れ落ちる。
「強い、強い、強すぎる。 勝者、ナツキ選手! 彼の快進撃は一体、どこまで続くのか!? 大波乱の予感がします!」
舞台上から降りて控え室に向かう途中、メアとすれ違いざまにハイタッチをする。言葉はいらない、全力で戦うだけ。
次のメアの相手はケルシーだ。彼女はゲイザとは違う、正真正銘、現役のAランク冒険者だ。
「さぁ、盛り上がって参りました! Aランク冒険者のケルシー選手とナツキ選手同様、ダークホースのメア選手の対決。 ケルシー選手がAランクとしての意地を見せるのか!? はたまた、メア選手が意地を砕くのか!? 注目の本選2回戦第2試合……開始!!」




