右手に大鎚を、左手には
珈琲飲料飲むと食道の終わりあたりがキリキリするなぁと検索したら慢性胃炎と出ました。
珈琲牛乳は平気なんですけどね。
「ッッシャッオラァアッッ!!!」
大槌を振り回して、目の前から迫り来る魔物に叩き込む。
簡単に吹き飛ぶラビット種、それに巻き込まれて吹き飛んでいくマウス種。
面白いぐらいに連鎖を繰返し、その威力はやがてボア種をも飛ばした。
ここまでくると面白い!と思う。
「ちょっっ!!お前は本当に治癒師なのか疑わしいぞ!!!」
隣で大剣でもって魔物と戦っているラグリが声をあげる。
しょうがないだろう、体を動かすのが好きなんだから。
生まれ持ったジョブは確かに治癒師だが、生まれ持った記憶のなかでは闘士なんだから。
使い慣れた大槌を振り回すのがとても楽しいんだから。
「アハハハッ!!アタシしゃ魔力操るのが苦手でね!物理で殴るのが1番楽なんだよ!」
手を止めずに、振る・殴る・蹴る・飛ばすを繰り返す。
アタシはこれまでに体外魔力を感じたことが一切無い。
あった気もするが、それは最早過ぎ去りまくった過去だ。
「おい!こっちに飛ばすんじゃねぇよ!!」
「アンタが当たりに来てんだろうが!」
お互い、ふざけて笑いながら魔物を葬っていく。
魔物が弾け、残す魔石が宙を舞う様は中々に綺麗で心が高ぶる。
そろそろスタンビートも終わりだろう。
今年も乗りきったな。
そう、気を抜いた時だった。
「アルベット!!」
ラグリの切羽詰まった声と、横からの衝撃。
庇われたと理解した瞬間にはウルフ種の土手っ腹を殴り付けていた。
気配には気を配っていたはずなのにな。
「ぐっ……大丈夫、か?」
「バカ!!なんで庇った!」
ウルフ種が思いっきり噛みついた肩口は一瞬といえども、薄皮1枚で繋がっている状態。
血がどんどんと流れ出して、辺りを染めていく。
あぁ、バカなのはアタシの方だ。
治癒師なのに魔力操作が下手くそだなんて笑えない!!
どうにかしなきゃ、どうにかしなきゃ、
「落ち着け、アホ」
ポンッと噛みつかれていない方の手を頭に乗っけられる。
力強くなくて、悔しくて
……直接的に体内の魔力を流し込むことが出来たなら…………と考えて思い至る。
あったわな、方法。恥ずかしすぎるんだがな、おう。
「……恥じてる場合じゃない」
重いが上体を起こして──こう、あれだ、これは人命救助でアタシの能力が壊滅的だからしょうがないんだ。本当にどうしようもないしラグリも本当にスマン、成功したら思う存分怒られるからさぁ!許せ!!の勢いで──キスをした。
いやーーー!!!!ファーストキスだわな!!もうどうにでもなれ!!とりあえず治れ!!治るんだよ!!!
願った甲斐あって無事に回復。
体力も回復したらしく思いっきり抱き締められて窒息しかけた。
酒場でラグリがアタシを横抱きにして「責任をとって嫁にします」発言かました。
いや、なんの責任?どっちかって言うとアタシが取る方じゃない?と聞いたら真顔で「お前を泣かしたのと、馬鹿にした責任だ」とか言われたんだけど大袈裟すぎない?
後日聞いた話、必死と羞恥心で目を閉じていたからわからなかったが、目撃者(聖職者)曰く“妖精が祝福していた”とか言われた。ふざけんな。見せ物じゃねぇんだよ。
アルベット・ハンサード
短髪三白眼。
左頬に裂傷、右頬に火傷の痕がある明るい性格の人。
腕がちょっとだけ筋肉質なのは大槌のせい。
出てるとこは出て引っ込んでるところは引っ込んでる艶張りのある体してるけどほんのりちょっぴりモテない。
前世でも彼氏が居たことがなくてあわあわ。
ラグリ・オフェスカー
大剣使いの人。アルベットは戦友つってるけどなにかと目でおいがち。よく治癒師のくせにとか突っかかってる。
そんくらいしか決まってない。