表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/6

絶望と希望

黒田達と別れた夏輝とビトリーは目の前の道を進んでいく。



「こっちの道、歩きやすいね。クロたち大丈夫かな。」



どうやら夏輝たちはいい方の道に進んだようで、歩きやすい平坦な道が続いている。

しばらく歩いていると荒野から一転、また緑が多くなってきた。



「景色だいぶ変わってきたね。」


「…うん、そうだね。」


「あっ、案内板だ。…よかった、もうすぐ村に着くみたい。」


「ねぇ少し休憩しない?」


「疲れちゃった?でももうちょっとで着くし、クロたちも待ってるだろうからもう少し頑張ろう?」


「うん…。」


「村に着いたら少し休ませてもらおうね。」



平坦な道とはいえ、無理をさせてしまっていたか。

夏輝は少し反省しながらも、ビトリーの手を取り先ほどより少しゆっくりとしたスピードで歩き出した。



「…ねえ夏輝。あっちに誰かいるみたいだよ。」


「え?どこ?私には見えないけど…」


「あっち、ほら行ってみようよ。」


「…そうだね、何か情報もらえるかもしれないし。」



今度はビトリーが夏輝の手を引っ張り、奥の道へと進んでいく。

するとビトリーが言っていた通り、少し先にはビトリーと同じような服装をした男女がいた。



「もしかしてビトリーの知り合い?」



夏輝の声に反応するかのように話していた2人が夏輝たちの方を見た。



「あ!人間!ちょうどいいところに!」


「大ニュースよ!」



そう言いながら夏輝とビトリーが思わず後ずさるほどの勢いで走ってきた。



「だ、大ニュース?」


「そうそう、驚くわよ!」


「あ、ビトリーじゃないか。ビトリーも人間も大ニュース、聞いてくれよ。」


「何があったの?」



二人が大ニュースと騒いでいた内容を聞いて夏輝は自分の耳を疑った。



「…今なんて?」


「だから…」


「背の高い人間の男と赤い帽子をかぶった妖精が死んだんだよ!」


「荒野の道の途中で岩が転がってきてそれにって話よ。」



背の高い人間の男とは間違いなく黒田の事だろう。

そして赤い帽子をかぶった妖精は黒田と共に行動していたフェン。

夏輝は呼吸の仕方を忘れたように息ができなくなった。



「…何言ってるのよ。いくらビトリーの知り合いでもそんなウソ、許さないよ。」


「本当よ。」


「あんたの知り合いか?残念な話だ。」


「夏輝、きっとこの二人が言っている事は本当だよ。」


「ビトリーまで…!やめてよ。」


「だって、黒田達が進んでた道って、危ない方の道でしょ?何が起こってもおかしくなかったんじゃないかな。」


「でも!」



ビトリーは二人の言うことを信じてしまっている。

夏輝は信じたくなくて嘘だと言い続けた。



「この話はいろんなところでされているわよ?」


「誰もが本当の話だって言っているんだ。」


「それにそのあたりで赤い帽子と黒い靴が落ちていたって。」


「ほらこれよ。」



そう言って一人が見せてきたのはスマートフォンの画面だった。

SNSらしきアプリが開かれている。


『荒野で人間が死んだって本当?』


『岩に潰されたとかなんとか。』


『なにそれグロい。』


『靴と帽子が落ちていたって。』


『それ見たよ。』



黒田達の話で持ち切りのSNS。

二人のものだと思われる赤い帽子と靴が一足落ちている写真も投稿されていた。

こんなもの誰が撮影し、投稿したのか。そんなことを気にしている余裕など夏輝の中には存在していなかった。



「嘘、本当に…?」


「あなたもこれで信じた?」



夏輝はその場に崩れ落ちてしまった。

黒田達が死んだ。もう会えない。

夏輝の目には絶望の色が浮かんでいた。



「夏輝…」


「残念だよな。本当に。」


「頑張っていたのにね。」



二人が夏輝の頭上で話をしているが、今の夏輝の耳には届かない。



「あんたももう楽になっちゃえばいい。」



男がぼそりとつぶやいたその言葉に、夏輝は地面から男の方に視線を向けた。

男が夏輝に両手を伸ばしてきたが、夏輝は反応することが出来ず頭を掴まれてしまった。

ピリピリとした感覚が夏輝の頭を襲う。



「あなたたち、まさか…」


「大丈夫、すぐ終わるわよ。」



そう言う女の顔は恐ろしいほどに笑顔だった。

この二人は妖精ではない。そのことに気付いた時にはもう遅かった。



「離して…」


「暴れないでね、あと半分だから。」



夏輝は手から逃れようと男の手を掴んだが、上手く力が入らず抜け出すことが出来ない。

黒田たちがいない今、頼れるのはビトリーだけ。

しかしビトリーは夏輝から少し離れた場所で罪悪感でいっぱいの顔で夏輝の方を見ていた。




―もうだめだ。クロ…



夏輝は男から手を離し、目を閉じた。

夏輝の目から一滴の涙が重力に従って下へと落ちていく。

涙が夏輝の太ももに落ちたその時だった。




―バンッ




どこからか一発の銃声が響いた。



「なんだ?!」


「きゃあ!」


「なんだ、誰だ?!」



夏輝が驚いて目を開けると、そこには肩を押さえている女の姿があった。

銃弾が女の肩をかすめたようだ。



「そいつから離れろ!」


「…クロ?」



死んだはずの黒田とフェンが夏輝の後ろの茂みから飛び出してきた。

女に当たった銃弾は黒田が持っていた銃から撃たれたものだったらしい。

黒田は夏輝の頭を未だに掴んでいる男に飛び蹴りを食らわせる。



「ぐはっ!」



男はとっさに夏輝の頭から手を離しその場から離れようとしたが、時すでに遅かった。

黒田の蹴りが左肩に命中し、地面に転がった。

だがすぐに起き上がると黒田を睨みつけるとゆっくりと口を開く。



「…あともう少しでその子を取り込むことが出来たのに。」


「うるせえよ。変なデマ流しやがって。お前らだろ?俺らが死んだって言いふらしたのは。」


「そうだよ。絶望したあの子の顔は最高だった。」


「もう、彼女のこと取り込みたかったのに。」



黒田はちらりと夏輝の方に視線をうつした。

そこにはまだ状況把握が出来ていない様子の夏輝がこちらをじっと見ていた。

夏輝から敵に視線を戻す。



「何なんだ?お前たちは。」


「俺はファルセダ。」


「私はファルシュ。」


「俺たちは嘘情報フェイクニュースを流し人々を混乱と絶望に追い詰めるのが仕事なのさ。」


「絶望した奴らは私たちの中に取り込みやすいのよ。」


「それで夏輝を取り込もうとしたのか。何のために?」


「取り込んだ者が持つ情報が得られるからだ。」


「私たちはそうやってどんどん強くなっていくのよ。」


「取り込んだ奴らはどうなる。」


「文字通り、俺たちの中にいる。」


「おしゃべりはここまでよ。おとなしく私たちに取り込まれなさい!」



そういうとファルシュはどこからか剣を取り出し、黒田に突っ込んできたが黒田はとっさに身を翻し避けた。

ファルセダは死神が持っていそうな大きな鎌を肩に担いでいる。



「危ねえな。どこから出してきたんだそんなでかいの。」



ファルセダがニヤリと口角をあげると、鎌を振り上げ黒田に走ってくる。



「うおっ。」


「でかいのにちょろちょろと動きやがって。」


「うるせえ。でかいとか言うな。」



ファルセダがでかいと言うのも無理はない。

黒田の身長は185cm以上ある。だがそんなことはものともせず、素早く軽やかに攻撃を避けている。



「これならどうだ!」


「何っ?!」


ファルセダが鎌の持ち手を黒田に向けた。

すると鎌の持ち手の下からジャラジャラと鎖が飛び出してきて黒田の右腕を拘束した。



「くそっ!」



反動で銃を地面に落としてしまった。

ファルセダが鎖を引っ張り、黒田もまた引きずられまいと足を踏ん張る。

まるで運動会の綱引きのようだ。



「いただきよ!」



ファルシュが身動きが取れない黒田に向かって剣を振り上げる。


―切られる…!



黒田がそう思った時だった。






―ガキンッ





「きゃっ!」



ファルシュの剣が飛んできた何かによって弾かれる。

そこにいた全員が何かが飛んできた方に目をやった。



「…夏輝。」



黒田がぽつりとその名前を呼ぶ。

驚いて目が点になっているフェンとビトリーの横に、肩で息をしている夏輝がいた。


背中の刀が一つない。

ファルシュの剣をはじいたのは夏輝が投げた刀だったのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ