敵との遭遇、そして新しい出会い
エンジュの家を出発し、森の中を進む。
この辺りはまだコンピューターには制圧されていないようだ。
綺麗な植物があちらこちらに生えている。
「あいつらどこに行ったんだろう。」
「こっちの方に逃げていったのに、いないの。」
リライトが逃げて行った方向へ進んだのだが、奴の姿はどこにもなかった。
それでもしばらく森の中を進んでいくと、急に雷のような音が森に響いた。
「雷?雨でも降るのかな?」
「ゴロゴロ嫌いなの~。」
三人は空を見上げたが、木々の間から見える空は雲一つない晴天だった。
「なにかおかしいな。気を付けて進むぞ。」
「そうだね。」
あたりを警戒しながら歩いていると、どこからか焦げ臭い匂いが漂ってきた。
「何この匂い。何か燃やしているのかな?」
「おいあそこ。何か燃えてないか?」
「…大変!火事だ!」
「おい夏輝!」
夏輝は一目散に走っていってしまった。
黒田とフェンは急いで後を追う。
三人が目にしたのは少し開けた池のある所。木や地面の植物がメラメラと燃えている光景だった。
そしてその近くにいたのは逃げ惑う妖精たちとリライトに似た者がいた。
「あれってリライト?」
「いや、ちょっと違う。リライトじゃねえな。」
リライトはクロのフードを被っていたが、目の前にいる奴は黄色のフードを被っていた。
「とにかく行こう!」
「気をつけろよ夏輝!」
「クロもね!」
「妖精達の誘導は僕に任せるの!」
夏輝と黒田はバチバチと電気を帯びている敵に近づいた。
「ん?なんだ。お前たち…リライトが言っていた邪魔者か?ちょうどいい、ここで一緒に死んでもらおうか。」
そういうといきなり二人に向かって雷のような電撃を放ってきた。
二人は横にとび回避する。
「焦げてる…」
さっきまで二人がいた場所は真っ黒に焦げていた。
「冥土の土産に教えておいてやろう。俺の名前はボルト。電気を操ることができるのさ。」
ボルトと名乗る奴はにやりと笑うと手を前にかざし、また電撃を放ってきた。
「くそ、これじゃ埒が明かねえ。」
「どうにかしなきゃ。」
「僕も助太刀するの!」
妖精達の誘導を終えたであろうフェンが飛び出してきてボルトに体当たりをした。
一瞬よろけて隙が出来た瞬間を二人は見逃さず、ボルトに攻撃を仕掛けた。
黒田の蹴りがヒットし、ボルトは吹っ飛んだ。
体制を立て直す前にと夏輝が刀を振り下ろすが寸のところではじかれてしまった。
「面白い。まずはチビから片付けてやる。」
ボルトは二人からフェンに狙いを変えた。
ボルトの電撃がフェンに向かう。
「フェン!」
「うわわわ!」
間一髪のところで黒田がフェンの服を引っ張り、その場を離れたため電撃を避けることに成功した。
フェンにあたるはずだった電撃は木に当たった。
そして当たったところからあっという間に火が燃え広がり木を包み込んだ。
「倒れるの!」
メラメラと燃えながらゆっくりと倒れていく木。
夏輝ははっとした表情を浮かべると燃えている木に向かって走り出した。
「おい!夏輝!…くそっ!」
黒田が追いかけようとしたがボルトの攻撃により阻止されてしまう。
ドスンという大きな音と共に木が倒れた。
火のついた枝が折れ、あちこちに散らばる。
「夏輝―!」
「うわー危なかったー!」
倒れた木の近くに夏輝の姿はあった。間一髪のところで倒れてきた木を避けることが出来たようだ。
腕に何かを抱えている。
「この木と燃えてくれたら楽だったのに。まぁいい。」
ボルトは夏輝に向かって手を伸ばした。
夏輝は腕に抱えているものをぎゅっと守るように抱きしめるとボルトをまっすぐ見つめた。
どう切り抜けるか、夏輝が必死に頭を回転させていたその時。
黒田が走り出した。
「俺のこと忘れてもらっちゃ困るぜ。おらっ!」
黒田は近くに落ちていた火のついた大き目の枝を拾い、ボルトに向かって投げた。
ボルトは黒田の声に反応し振り返ったが、目の前に枝が迫っていた。
腕でガードするも、ボルトが着ていたフードに火が移ってしまった。
「くそっ。熱い!」
ボルトは火を消そうと体をばたつかせた。
「夏輝大丈夫か?!」
「ありがとう、なんとか大丈夫。」
黒田は夏輝のもとに駆け寄り、無事を確認するとほっと溜息をついた。
「…お前ら。」
低くドスのきいた声が耳に届く。
ボルトを見ると羽織っていたフードは燃えてなくなってしまっている。
「まだやるか?」
黒田が夏輝の前に立ちボルトに声をかける。
「クソガキが。この借りは必ず返す。」
そう言うとボルトは夏輝たちの方へ電撃を放った。
電撃は夏輝たちの少し手前の地面に当たり砂煙があたりを包む。
「何も見えないのー!」
少しして砂煙が風に流され、あたりがはっきりと見えるようになった。
「あれ、いなくなってる…。」
「逃げられたか。」
さっきまでボルトがいた場所にはもう何もなかった。
「怖かった~。」
「大丈夫か?…ところでさっきからずっとお前が抱えてるものはなんだ?」
夏輝の腕には先ほどから大きめのぬいぐるみのようなモノが抱かれていた。
「…あっ!」
「あっ!って、お前…」
夏輝は急いで腕に抱いているモノへと目を向けた。
黒田も同じようにのぞき込む。
「おい、こいつ…」
そこにいたのは黒地に緑の模様が入った服を着た妖精らしき者だった。
目は閉じられているが胸は上下に規則正しく動いている。
「さっき燃えた木の近くにいたの。」
「それであの時走っていったのか。」
「うん。助けなきゃって思って。」
「こんな子、初めてみたの。新入りさんかな?」
三人がそんな話をしていると、閉じられていた目がゆっくりと開かれた。
「ううん…」
「あ!気がついた?大丈夫?」
「わっ!」
妖精のような者は驚いて夏輝の腕から逃れようと暴れだした。
「あ、危ないよ!」
「おい、大丈夫だ。俺たちはお前に何もしねえよ。」
そう言うと妖精のような者は暴れるのをやめた。
「君は何の種族?僕はノームなの!」
「え?えっと…僕も同じようなものだよ。」
「仲間がいたの!僕はフェン。君は?」
「僕?えっと、ビトリー。」
「ビトリー?初めて聞く名前なの。よろしくなの!」
フェンは仲間がいてとても嬉しそうだった。
ビトリーと名乗る妖精はそわそわしていて落ち着かない様子だ。
「フェン、よかったね。」
「うん!」
「ビトリーだったな。怪我はないか?」
「えっ、うん大丈夫…」
「ならよかった。あぁ、俺は黒田竜二だ。」
「私は相良夏輝だよ。」
「助けてくれてありがとう。」
「どういたしまして。でも、どうしよう。一度エンジュのところに戻る?」
「それが一番いいかもな。放ってはおけないが連れていくのも危険だ。」
夏輝たちの進む道は危険が伴う。ビトリーを連れてはいけない。
「あの、僕も一緒に連れて行ってほしいんだ。」
「え?でもこの先危険なことがたくさんあるんだよ。」
「お願い、連れて行って!」
「…どうする夏輝。」
「うーん。ここまで言われちゃ断れないよね…。よし、一緒に行こうか!」
「いいの?」
「うん。でも危ないと思ったらすぐに逃げるんだよ。」
「ありがとう夏輝!」
「やれやれ…」
こうして新たな仲間、ビトリーが仲間に加わり、四人でその先へ進むのだった。




