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拾いました。

何か落ちている。

森の中を歩いていた相良夏輝は足を止め、目を凝らした。

赤と青のなにか。

夏輝はゴミか何かだと思ったので気にせず再び足を動かした。

なにかの横を通り過ぎようとした時、何気なく‘なにか’に視線をむけた。



「これってノーム人形?なんでこんなところに。」



よく庭に置いてあるノーム人形がうつ伏せで倒れていた。

誰かが捨てたのだろう。

まったく、森に捨てるなんて常識のない。


うつ伏せのままでは可哀想なので起こしてあげようと夏輝はノーム人形に手を伸ばした。



「あれ?」



あと少しで人形に触れる距離まで手を伸ばした時、夏輝は違和感に気づいた。



「う、動いてる?」



かすかに背中が上下に動いている。まるで息をしているかのように。

人形ではないのか、だとしたらこれはなんなんだ。

夏輝は正体を確かめるため、恐る恐る手を伸ばしノームに触れた。


柔らかい。

まるで人のようだ。

とにかく生きているのなら放っては置けない。それがたとえ人間でなくても。

夏輝は恐怖心をぐっと押さえ込みノームに触れた。



「大丈夫?生きてる?」



あまり刺激をしないように優しく背中を叩き声をかける。

するとノームは顔をこちらに向けた。そして閉じられていた目がゆっくりと開いた。



「誰?僕のこと見えるの?」



見えてはいけないものだったのだろうか。

だが見た感じ幽霊の類ではなさそうだ。



「見えてるよ。ねぇ怪我してるの?」


「珍しい。いたたた…」


「大丈夫?手当てしてあげるからうちにおいで。」



得体の知れないものでも、困っていたら助ける。

それが夏輝のモットーである。

ノームがこくんと頷くのを見た夏輝はノームをそっと抱きかかえ、負担をかけないように来た道を引き返した。


夏輝は家へと急ぎながらこなぜこんな状況になったのかを思い出していた。



さかのぼること数日前。

夏輝は高校時代の友達である岡崎桜子おかざきさくらこ小竹大地こたけだいちと久しぶりに会っていた。



「にしても、町中クリスマス!って感じだよね。」


「つい最近までハロウィンだなんだ言っていたのにな。」


「クリスマス前になるとお正月グッズも隣に並んでるよね。」


「あっという間に年末になるんだろうな。」



三人はとあるレストランで食事をしていた。

今は11月。この時期になるとあらゆるところがクリスマス仕様になる。



「クリスマス、独り身には辛い季節だね?夏輝ちゃん?」


「まだ彼氏いねえのかよ。」


「余計なお世話だよ!いいの!」



桜子と大地には相手がいるのだが、夏輝には中々彼氏ができないのだ。

いつもこの二人には茶化されてしまう。



「クリスマス一緒に過ごしてあげたいところだけど、私には愛しのサンタさんがいるから、ごめんね!」


「愛しのサンタさんって…別にいいですよー。」


「俺も。悪いな夏輝。」


「だからいいってば、二人のいじわる。」



夏輝はやけになったように自分のグラスの中に残っていたカクテルを飲み干した。



「サンタさんか、懐かしいな。俺昔親に『いい子にしてなきゃサンタさん来ないからね』って言われてめちゃくちゃいい子にしてたわ。」


「なにいきなり。でもそれ私もある。」


「みんなプレゼント欲しいもんね。」


「でもこの間園児たちにそれ言ったら、サンタさんなんていないんだよって真顔で返されたの。」


「そういえば桜子、保育士さんだったね。」


「全員そんな感じなのか?」


「ううん、もちろんサンタさんを信じてる子もいるけど。信じてない子が増えてきてるかな。」


「なんか、それって寂しいよな。」


「世界中の子ども全員をサンタさんが見れるわけないってさ。」


「確か、お手伝いする妖精がいるんじゃなかった?」


「え?まじか!それ言えばよかったー。」



桜子は顔を両手で覆い後ろにのけぞった。

その様子を見て夏輝と大地は顔を見合わせクスリと笑った。



「妖精といえば、昔探しに行ったよな。」


「懐かしい!結局きのことどんぐりしか見つからなかったんだっけ。」


「あと紫の花もあったよね。」


「そんなのあった?」


「夏輝だけ見つけたんだっけ?俺は見てない気がする。」



そしてそこから三人は閉店時間ぎりぎりまで、小さい頃に妖精探しの旅に出た時の話で盛り上がっていた。



その帰り道。二人と別れた夏輝は先ほどの会話を思い出していた。


―咲いてるかな、この季節でも。また、会えるかな。


思い立ったらすぐ行動するのが相良夏輝。

夏輝は次の休みに散歩がてら行ってみようと心に決め、家に帰った。





そして今に戻る。

まさか数日前に話題になった妖精に会うなんて。

夏輝は、これは夢なのではないかと思った。

だが手から伝わるぬくもりや、走っている時特有の喉の痛みがこれは現実であると訴えている。


家に向かっている時、近所のおばさんや八百屋のおじさんが声をかけてきた。



「夏輝ちゃん、急いでどこ行くの?」


「なっちゃん、変わったポーズしながら走ってるね。何してるんだい?」


―このノーム、みんなには見えていないんだ。



薄々気づいてはいたが会う人みんな、ノームの事に触れてこない。

この子は自分にしか見えていないのだと確信した。



夏輝はなんとか会う人に返事を返しながらも家まで帰りついた。

鞄から鍵を取り出そうとしたのだがノームを抱えているため上手く取り出せない。

もたもたしていると



「あれ、夏輝?」


「あ、クロ…」



視線を鞄から声のした方へ向けると、隣人である黒田竜二くろだりゅうじがコンビニの袋を手にぶら下げて立っていた。



「何してんの、っていうかその腕に抱えてるの何?」


「え、見えるの?」


「見えるって、え。何それ見えちゃいけないものだったりする?」


「…手伝って!この子抱えて、鍵出すから。」


「抱えてって、ちょっとおい!」



夏輝は黒田にノームを預け、鍵を開けると中に入るように言い自分も中に入った。

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