〜昼と出口〜
俺は空腹と香ばしい良い匂いを感じ、目を開ける。
眼前には前と違う部屋が写し出されていた。
俺は木製の頑丈そうな椅子に座っていた。
自分の前に木製のテーブルがある。辺りを見ると対面するように椅子がもう1つあり、その他には食器棚や、調理器具等が置かれた段々になってる棚のような物があった。おそらくここはリビングなのだろう。
それに先程から美味しそうな香ばしい匂いがする。
匂いの元が気になり後ろを見ると左右にドアが2つあった。この香ばしい匂いがただよって来たのは右のドアからであった。
(((なんの匂いだろう?)))
俺は席を立ち、匂いがするドアの前まで歩み寄る。
少し中を覗こうとドアノブを捻る。
すると力を込めて無いのに急にドアが開かれ、バランスを崩し前のめりに倒れてしまった。
すると柔らかい何かが俺を優しくキャッチした。
「おっと、やっと起きたか。もう昼だぞ」
倒れた俺を受け止めたのは、先程の大きな人狼であった。
右手に木の食器に盛られた美味しそうな、肉やスープ、パンなどが乗ったお盆を手に持ち、もう一方の左手で俺を受け止めたらしい。
やばい、終わった。
そう察した俺は、離れようと踵を返し人狼に背を向け、全力で走ろうとする、が、加速する前に人狼の腕に捕まれ、まるで土嚢を運ぶように抱えらええた。
人狼は俺をさっきまで座っていた、椅子に下ろすと、右手に持っていた料理の乗ったお盆を目の前の机に置いてきた。
甘い香ばしい匂いが鼻を擽る。匂いの元はこの料理だろう。
お盆を下ろすと対面するように机の向かい側に人狼も座った。
怖気付き震える俺を見かねてか、人狼はため息をつきながら
「大丈夫だって、お前の事食ったりしねーよ…
それよりホラ、冷める前に食え!」
そう言うと人狼はお盆をずいっと前にだし、食べろとばかりにジェスチャーしてきた。
(((あれ?とって食おうとしないのか?)))
俺は、疑問に思いつつも、極限の空腹に耐えかねスープを手に取り、少し飲んでみた。
優しい柔らかい野菜の味がする、塩見の効いた暖かいスープであった。
1口で辞めようと思ってたのに、あまりの美味しさと、栄養不足の為か、体が勝手に動いていた。
パンも若干硬いが香ばしく、チーズらしき物が塗られとても味わい深い、肉も油が乗って柔らかかった。
5分ほど夢中で食事をして、気がつけば目の前に置かれていた皿には、残りカス1つたりとも残ってなかった。
その様子を見ていた人狼は、嬉しかったのか口角を上げ笑うようにこちらを見ていた。
「どうだ嬢ちゃん?美味かったか?」
「はい…ご馳走様でした。」
俺は少しビビりながらも、頭を下げる。
満足げな表情を浮かべる人狼に朝ほどの恐怖を抱かなくなっていた。
食器をお盆の上に戻し、もう一度お礼を言う。すると人狼は
「気に入ってくれたようでよかったぜ。」
ガッハッハッと言う効果音が似合うほど、大口を開けて笑う、やはり多少怖い。
「あー、いろいろ聞きたい事はあるが、まずは体でも洗ってこい。まぁ風呂は無いがな。前の湖でいいだろ!」
そう言うと人狼はお盆をもって立ち上がり、出てきた右側のドアに戻る、そして、タオルの様な布と、着替えだろうか?おそらく人狼上着である大きな長袖の服を、俺に投げてきた。
「出口、あそこな」
人狼は俺の後ろにあった左側のドアを指さすと、右側のドアの中に再度戻っていった。
俺は椅子から腰を上げ、貰った服とタオルを抱えて出口へ向かった。