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異世界の竜騎士……になるはずが  作者: 中之下
第五章 南海の風
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第146話 南へ

先週はリアルの都合で更新できずすみません。

一応、最低週一回の更新を目標にしているので、それができるようにがんばります。


あと、140話で、ちょっとつじつまが合わないところがあったので修正してます。

 翌日、レンたちは予定通り南に向かって出発した――のだが、その前にちょっとした騒動があった。


「ミミ! ガーガだ! 変なガーガがいるぞ!?」


 大声を上げたのはリリムで、その横ではミミも目を丸くしている。

 二人はガー太を見て驚いていた。

 今さら何を驚いてるんだろう? と思ったレンだったが、あることに気づいた。

 あれ? もしかして二人がちゃんとガー太を見たのはこれが初めて?

 振り返ってみる。

 最初に助けたときは、二人ともすぐに眠ってしまい、ガー太を見てはいない――かもしれない。その後はロゼに屋敷まで運ばれて、そこでも見ていない――かもしれない。

 ここまで来る道中は……

 二人ともロゼと一緒に馬車に乗り、できる限り外から見られないようにしていた。だから中の二人も、馬車で移動中はほとんど外を見ていない。

 何度か休憩をとって馬車の外に出たこともあるが、その時もガー太を紹介したわけではないので、いるのに気付かなかった可能性はある。

 どうやら二人とも、ちゃんとガー太を見るのはこれが初めてだったようだ。

 詳しい話は、後でロゼに聞いてもらったが、それによるとイールにとってもガーガーは特別な鳥らしい。

 ガーガーについて、彼らの神ともいえる氷竜ランドリスが、


「ガーガーに手出しをすることは禁じる」


 と命じたらしく、イールはずっとその命令に従い、一族の掟として、ガーガーに近寄ることも禁じているそうだ。

 わざわざ命令するのだから、何か理由があると思うのだが、イールは理由までは知らないようだ。竜が命じた、というだけで十分なのだろう。

 ちなみに彼らはガーガーではなくガーガと呼ぶらしいが、ちょっとなまっているのだろうか。

 そして氷竜ランドリスだけでなく、聖樹の民も同じようなことを言っていたらしい。


「我らは決してガーガーの行動を妨げません」


 とかなんとか。

 ガーガーは魔獣の気配に敏感で、人間もそれを理由にガーガーを大切にしているが、彼らのガーガーに対する思いは、それ以上のようだった。

 ガーガーを大切に扱うのはいいことだとレンも思う。だがそれで困ったことが一つ起きた。

 レンがガー太にまたがると、


「ガーガをいじめるな!」


 とリリムが怒り出したのだ。横ではミミが泣きそうな顔をしている。


「やっぱりお前は悪いやつだ!」


 と怒るリリムの誤解を解こうと、レンは弁解する。


「いじめてるわけじゃないよ。ガー太は僕が乗っても平気なんだよ」


「ウソつけ! ガーガはとても恐がりだから、近くに行くのもダメだって言ってたぞ」


「ガー太は他のガーガーとは違って、とっても勇気があるんだよ。だから人が近づいても平気だし。なあガー太?」


「ガー」


 まあな、といった感じでガー太が答えてくれたので、レンはガー太に二人の側に寄ってもらった。


「ほら、さわっても平気だよ?」


 近寄ったガー太に手を伸ばしたのは、リリムではなくミミの方だった。


「うわあ、スベスベでふわふわだ」


 最初は恐る恐るだったが、さわっても本当にガー太が平気な様子なので、ミミは両手でガー太の体をなで回し始めた。


「ミミ! ガーガにはさわっちゃダメだって――」


「リリムもさわってみたら? ふわふわだよ」


 おとなしそうに見えるミミだったが、大胆なところもあるようだ。

 さわりまくるミミを見て我慢できなくなったのか、リリムもガー太に手を伸ばす。


「おおっ! すごい、ふわふわだ!」


「ふわふわだね」


 さらに大胆になった二人は、抱きついて羽に顔をうずめたりする。


「ガー」


 いい加減にしろ、といった感じでガー太が鳴いたが、二人とも聞いてはいなかった。

 はしゃぐ二人が落ち着くまで、しばらく時間がかかったが、結局ガー太はおとなしくしていた。なんだかんだで子供には甘いのだ。

 ちなみに二人に続いてロゼも混ざろうとしたのだが、ガー太にジロリとにらまれ近寄れなかった。

 相変わらずダークエルフには冷たい。

 出発時にそんな騒ぎがあったが、出発してからは順調だった。

 リリムとミミは、たまの休憩を除いて馬車に乗りっぱなしだったが、文句を言ったりはしなかった。母親を助けるためだとわかっているのだろう。

 ロゼもそんな二人につきっきりで、後はリゲルやディアナも相手をしていた。

 レンたちは途中の街をほとんど素通りで、街道を南へと下った。一度だけ食料を買うために立ち寄ったが、その時も買い物だけして出発し、道中はずっと野宿だった。

 何回か魔獣にも襲われたが、全てカエデが倒してくれた。

 それより道中に問題になったのは熱さ対策だった。

 独特の排熱システムを持っているイールだったが、締め切った馬車の中だと熱がこもってしまう。そうやって温度が高くなってくると、二人の体調も悪くなるので、途中で換気をしたり、冷却用の水を汲んできたり――本当に機械を冷やしているような感じだな、とレンは思ったりした。

 そしてジャガルの街を出発してから五日後。

 レンたちはダーンクラック山脈のふもとにあるロッタムの街に到着した。ジャガルから普通に行けば七日から十日ほどとされているので、なかなかのハイペースである。

 ロッタムは中々大きな街だった。聞けばダーンクラック山脈を越える宿場町として栄えているらしい。そして街の背後には、巨大なダーンクラック山脈がそびえ立っている。

 レンの屋敷から見る山脈もそうだったが、ここから見ても、とんでもなく高くて険しい山々が連なっている。あれを徒歩で越えるのは無理じゃないかと思えてくるほどだ。

 ここから南に進めば、唯一の通過ポイントともいえる竜の爪跡があるそうだが、見た限りでは、山が低くなっているような場所は見えなかった。

 ここまでは街を素通りしてきたレンたちだったが、ロッタムの街には何日か滞在する予定だった。

 ここから先は山越えとなるので、そのための情報収集や準備が必要だった。

 頼りにするのは現地のダークエルフたちだ。

 ロッタムには、山越えの人足として働くダークエルフたちがいる。彼らに接触し、その力を借りるつもりだった。


「じゃあ頼みます」


 現地のダークエルフとの接触は、同行していたダークエルフたちに頼む。

 今回はシャドウズの隊員が三人、護衛として同行していた。

 いつもならリーダーのゼルドが同行するのだが、今の彼には別の仕事があった。

 シャドウズの拡大である。

 王都での活躍で、シャドウズの有効性は証明できた。というわけで、シャドウズの隊員を増やすことにしたのだ。当面の目標は、二部隊にすることだ。それなら一部隊がどこかへ出ても、もう一部隊が残って、不測の事態に備えることができる。

 ゼルドや他のメンバーたちは、新しいメンバーを選抜するために、あちこちを回っている。そしてレンの側には三人だけが残った。


「わかりました。では我々はロッタムに入ります」


 答えてくれたのは、その三人のリーダーを努めるジョルスだった。

 彼はどちらかといえば寡黙な男で、聞かれたことにはちゃんと答えるが、自分からレンに話しかけることはほとんどない。

 レンの方も積極的に話しかける方ではないので、ここまで二人の間には、ほとんど会話がなかった。

 まあ、それはそれでいいか、とレンは割り切って考えるようにしていた。

 彼ら三人には、山登りの情報集めの他に、もう一つ情報集めがあった。

 逃げた馬車の情報だ。

 ロッタムは国境沿いの街であり、ダーンクラック山脈を南に越えた先は隣国バドス王国だ。そういう街には密輸や抜け荷を扱う犯罪ギルドが存在するものだが、やはりロッタムにもそういう犯罪ギルドが存在している。

 イールをさらって逃げた連中は、そういう犯罪ギルドの力を借りて山越えしたと思われるので、こちらも彼らに接触し、情報を得るつもりだった。

 そのための武器になるのが、マルコが用意してくれた紹介状だった。

 マルコはこの街の犯罪ギルドとも取引を始める予定で、カイルを通じて何度かやり取りしていた。そのツテを使って、彼らに接触するつもりだった。

 レンたちは街には入らず、近くの森で野営して、三人の帰りを待つことにした。

 翌日、三人は別のダークエルフを一人連れて帰ってきた。


「どうやら、よくないことが起こっているようです。それで詳しい事情を知る彼を連れてきました」


「ドルテオといいます」


 ジョルスに紹介されたドルテオが、レンに向かって一礼する。


「レンです。どうも初めまして」


 レンも軽く頭を下げて挨拶すると、ドルテオは驚いていた。レンにとっては、もう慣れた反応だ。


「それでドルテオさん、よくないことというのは?」


「現在、山脈を越える道がふさがっているのです」


「崖崩れとかですか?」


「わかりません。正しくは音信不通というか……」


 ドルテオの説明によると、ここ一週間ほど、ダーンクラック山脈を南から越えてくる旅人がいないらしい。


「険しい山道ですが、ここしか通り抜けられるところがないので、往来する人は多いのです。それなのに一週間も誰も来ないというのは、明らかにおかしいです。冬ならそういうこともあるのですが」


 それだけではない。

 この先で山を登っていけば、途中に小さな砦があるそうなのだが、そことの連絡も途絶えているそうだ。こちらから街を出て山に向かった者も多いが、彼らも誰一人帰ってこない、とのことだった。

 おかげで山越えをしようとする者もいなくなった。今のロッタムの街は、足止めを食らった商人などが多く滞在しているそうだ。

 こちらから行った者も帰ってこないとなると、単なる自然現象とは考えにくい。

 一番ありそうなのは……


「魔獣ですか?」


「その可能性はあります」


 ダーンクラック山脈は魔獣が少ないことで知られているが、例外的に竜の爪跡周辺では、ちょくちょく魔獣が出没するらしい。


「領主様もそれを疑い、ちょうど今日、調査の軍隊を率いて山へ登るそうです」


 軍隊が山へ入るというなら、彼らに任せるのも一つの手だと思う。

 だがそれで問題が解決すればいいが、解決しなかったら?

 レンたちもゆっくりしているわけにはいかないのだ。


「もう一つの方、僕らが追ってる馬車については、何か情報がありましたか?」


「はい」


 ジョルスは犯罪ギルドとも接触し、そちらの情報も得ていた。

 一ヶ月ほど前、中が見えないように細工された馬車が、山を越えていったとのことだ。

 やはり進む道は間違っていない。

 だったら可能な限り力を尽くすべきだろう。

 あまり気は進まないが、その領主に話を持ちかけてみようと思った。

 調査への同行と助力を申し出るつもりだった。

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