第12話 ダークエルフ1
昨日の雨から一転、この日は朝からカラリと晴れたいい天気だった。
だがその室内は、外の天気とは裏腹に不穏な空気で満たされていた。
「どうして彼の遺体だけそのままなんですか?」
不満もあらわな口調でレンが訊ねる。
「どうしても何も……」
答える南の村の村長は呆れ顔だ。なぜこんな当たり前のことを言わなければならないのか、といった顔をしている。
「あれはダルエルフィではないですか」
ナバルたちが魔獣の群れに襲われ、レンとガーガーたちがその魔獣を倒してから一日がたっていた。
魔獣を倒した後、ミーナを連れて屋敷に帰ったレンは、避難してきていた南の村の住人たちに一連の経緯を伝えた。
村人たちの反応は半信半疑、というより完全に疑っていた。
臆病なガーガーが魔獣と戦って、しかも倒すなど、彼らの常識では考えられないことだったからだ。
だがレンはガー太に乗って屋敷まで戻ってきた。
「これはガーガー……なのですか?」
村長の問いかけが、全員の意見を代弁していただろう。
このガーガーとは思えないガーガーを見て、村人たちは非常に困惑していた。自分たちの常識に当てはまらない存在だったからだ。
ガー太のこともあり、何人かの村人がレンと一緒に、確認のため襲撃現場まで向かうことになった。
するとそこには――すでにガーガーたちはいなくなっていたが――確かに多数の魔獣が倒されていた。本当にガーガーが倒したかどうかはともかく、事実として魔獣の群れは倒されたということで、村人たちは総出で後始末にかかった。
殺された者たちの遺体を回収し、南の村まで運んで葬儀の準備を進めつつ、倒した魔獣の死体もひとまとめにしておく。魔獣の死体を集めるのはまとめて焼却するためだ。
かつて死んだ魔獣を率いたという超個体の伝説があり、魔獣の死体は燃やすのが常識だった。
回収作業によって、村まで逃げてきた一人とミーナ以外の全員の遺体が見つかったため、生存者は二人だけだったということも確定した。
一晩明け、今朝から犠牲者全員の葬儀を行うということで、レンも南の村までやって来たのだが、そこでもめ事が発生した。
レンの命を救ってくれた褐色の肌の若い男、彼が葬儀の対象に含まれていなかったのだ。
最初、レンは宗教や文化の違いによる配慮かと思った。あの若い男は村人ではなく、どこか別の集団に属する人間で、そことは葬儀のやり方違うから、合同での葬儀は行わない――そのような理由かと思ったのだ。
だが話を聞いてみると、なんと若い男の死体は、魔獣と一緒に放置されていて、そのまま魔獣と一緒に燃やすことになっているとこのことだった。
当然ながらレンは抗議した。いくら何でも魔獣と一緒の扱いはないだろうと。
そこで村長から返ってきた答えが、
「あれはダルエルフィではないですか」
の一言だった。彼にはそれだけで十分な理由らしく、他の村人たちも当然だという顔をしている。
もしレンが冷静だったなら、ここでいったん引き下がったはずだ。
なにしろ彼は村長が言うダルエルフィがなんなのかを知らなかった。しかも村長たちの態度を見るに、ダルエルフィは知っていて当然のものらしい。
だったらこれ以上余計なことは言わず、まずはダルエルフィのことを調べてから、改めて話をするべきだろう。それぐらいはレンにだってわかる。
しかしこの時のレンは感情的になっていた。さらに、
「ダルエルフィを一緒に弔うなんて冗談じゃない」
「あんな汚らわしい連中と」
「だいたい魔獣の群れだって、そのダルエルフィが呼んだんじゃないのか」
村人たちが口々に彼を罵るようなことを言ったため、それがレンを怒らせた。
つまりレンがキレた。
「適当なことを言って、彼を侮辱するのはやめて下さい」
「そう言われても……」
「彼は魔獣と勇敢に戦って死にました。少なくとも、仲間を助けようともせず、さっさと逃げ出した皆さんより立派だと思いますよ」
その言葉に、今度は村人たちの顔色が変わった。
彼らもナバルたちを見捨てたくて見捨てたわけではない。それを嫌みったらしく言われたら怒るのも当然だ。犠牲者の中には南の村の住人、彼らの家族や隣人も含まれているのだから。
レンもそれはよくわかっていた。そもそもレンは言いたいことをはっきり言えないタイプの人間だ。きついことを言って揉めるのも嫌だから、普段は当たり障りのないことしか言わないようにしている。
そんな彼がここまで挑発的なことを言うのは珍しかったが、それは死んだ若い男に過剰ともいえる思い入れがあったからだ。
ガー太に助けてもらったときもそうだったが、レンは自分を助けてくれた相手には深く感謝する。それは人として当たり前のことだし、別に悪いことでもない。むしろ美徳といってもいいだろう。
だがそれも行き過ぎれば問題が出てくる。
実際、レンはその男のことを何も知らなかった。名前も知らないし、どこで何をしてきたのかも知らない。もしかしたら男は極悪人だった可能性もある。
だがレンは彼のことを強く擁護した。自分を助けてくれた、ただその一点だけで。さらに村人たちが男のことを悪く言うので、余計に反発したというもある。
売り言葉に買い言葉というわけだが、いずれにしろ感情論だ。そして多くの場合、感情論だけでは話はまとまらない。
「レン様。少し落ち着いて下さい」
レンと村人たちが険悪な雰囲気になったところへ、割り込むようにマーカスが声をかけた。
彼もレンに同行して村まで来ていたのだ。
「昨日の戦いの興奮がまだ残っているのですか?」
「いえ、そういうわけでは……」
マーカスに答えたレンは少し冷静になった。
事情も知らないまま、これ以上村人たちに何を言っても受け入れてもらえないだろう、と考えられるぐらいには。
そして冷静になれば自分が村人たちに暴言を吐いたこともわかったが、謝る気にはならなかった。意地になっていたのだ。
一方、村長をはじめ村人たちの方にも譲る気配はない。
実は村人たちの間には、今回の襲撃で魔獣を倒し、ミーナを助けたレンを見直そうとする動きがあったのだ。
魔獣の襲撃におびえるこの世界では、強さこそが正義という面がある。多少の暴君であっても、魔獣から守ってくれる強い領主こそがよい領主、というわけだ。
だがそれもレンの発言によってなくなってしまった。
ダルエルフィの男に肩入れするなど、やっぱりろくでもない奴だ、というわけだ。それほどダルエルフィに対する嫌悪感が強かったのだ。
結局、レンもそれ以上は何も言わず、葬儀はその男を除いたまま行われた。レンと村人たちの間の不穏な空気もそのままで。
葬儀は質素なものだった。
遺体は全て村の共同墓地に埋葬され、村人たちは胸の前で手を組み、目を閉じて静かに祈りを捧げた。
犠牲者の中には他の村の人間もいて、本当ならそれぞれの村へ遺体を送って葬儀を行うのがいいのだろうが、遺体の保存技術が未発達の状況では難しい。すぐに遺体が腐敗してしまうため、ここで一緒に埋葬するしかなかったのだ。
レンも見よう見まねで、同じように祈りを捧げる。
目を閉じると、昨日見たナバルのむごたらしい死体が思い浮かんできて、吐き気がこみ上げてきた。昨日は食事がのどを通らなかったし、今朝もスープを飲んだだけだ。
しばらく肉は食べられないなとレンは思った。幸か不幸か、肉は貴重品なので、食べるといっても干し肉ぐらいだが。
そして吐き気とともに、深い後悔もよみがえってくる。
もっと自分にやれることがあるはずだ。それを見つけてやっていこうとレンは改めて思った。
それまで受け身一辺倒で生きてきたレンだったが、ナバルの死が彼の心境に少しの変化を与えていた。
ナバルたちの遺体が埋葬されると、レンはさっさと屋敷へ戻った。やるべき事があったからだ。
屋敷からシャベルとツルハシを持ち出し――こちらの世界での呼び名は違うが、形状はほとんど同じだ――ガー太に乗って屋敷を出た。
あの男の遺体を埋葬しようと思ったのだ。村人たちがやらないなら、自分一人でやるしかない。
南の村を迂回して昨日の襲撃現場まで行くと、道から少し離れたところに魔獣の死体が積み上げられていた。
まだ腐敗していないのか、それとも魔獣は元から臭いが弱いのか、おかしな臭いは漂っていなかった。
これら魔獣の死体を見た村人たちが、気味悪がっていたことをレンは思い出す。もちろん死体を見て気味が悪いと思うのは当然だが、彼らが怖がっていた理由はそれではない。魔獣の死体がきれいだったからだ。
魔獣の多くはガーガーたちが袋だたきにして蹴り殺したわけだが、普通、魔獣を打撃だけで殺すことはできない。超再生があるためで、必然的に魔獣の死体は超再生でも回復できないほどバラバラになっていたり、グチャグチャに潰れていたりする。
それなのに、ここにある死体は原形をとどめたままのきれいな死体が多かった。それに村人たちは得体の知れない不気味さを感じたのだ。
やっぱりガーガーの特殊能力なんだろうなとレンは思った。それが何なのかはわからないが、それぐらいしか考えられなかった。
そしてそんな魔獣たちの死体の横に、あの若い男の死体が無造作に置かれていた。その様子を見て、レンの中に再び怒りがわいてくる。
同じ人間なんだから、きちんと埋葬してあげるべきだろうとレンは思った。
このあたり、死者に鞭打つようなことを嫌う日本人としての性格もあっただろう。例え悪人だったとしても、死ねば葬式ぐらいあげてやるべきだろうと多くの日本人は考える。レンもそういう考えを持っていて、いくら何でも野ざらしのままはひどいと思った。
男の死体を担ぎ上げたレンは、そのままガー太に乗って歩き出した。道から少し離れたところに一本の木が立っていたので、そこの根本に埋めようと思ったのだ。
男の遺体を地面に横たわらせ、レンはそれを埋める穴を掘ることにする。
掘る道具はシャベルとツルハシがあったが、レンはまずツルハシを選んだ。
なんの番組かは忘れたが、テレビで穴を掘るときはまずツルハシで地面をほぐし、その後でシャベルで土を掘り出すといい、というのを見た記憶があったからだ。レンに穴掘りの経験はなかったが、とりあえずそのやり方でやってみようと思った。
ツルハシを振り上げ、地面に振り下ろすと、体の節々が痛んだ。
昨日ガー太に乗って暴れたせいだろう。今日も全身筋肉痛だった。寝込んだ前回ほどひどくはないが、やはりつらい。だが命の恩人の遺体を埋葬するのだ。筋肉痛ぐらいでやめるわけにはいかない。
穴を掘るのは結構な重労働だった。犯罪小説で読んだ知識だったが、死体を浅く埋めると野犬などに掘り返されてしまうらしいので、それなりに深い穴を掘ろうと思っていた。だがそう簡単に深い穴は掘れない。
日本で生きていた頃のレンの体なら、早々にへばって音をあげていただろう。作業を続けられたのは、今の頑強な体のおかげだ。
さらにガー太の手伝いもあった。
疲れたレンが木陰で休憩すると、その間はガー太が地面を掘ってくれたのだ。ガー太は二本の足で器用に土を掻き出していく。
「ありがとうガー太」
「ガー」
こうしてガー太の手伝いもあり、夕暮れ頃にはどうにか十分な大きさの穴を掘ることができた。
穴の底に遺体を置き、上から土をかけて埋葬する。
それが終わると、レンはできたばかりの墓に向かって静かに手を合わせた。
村での葬儀とは違い、日本風の拝み方だった。他には誰もいなかったし、この方が感謝の祈りが届くと思ったからだ。
ありがとうございました。
もう一度、男に向かって感謝の言葉を伝え、レンは屋敷へと戻った。
かなり疲れてへとへとだったので、すぐにでもベッドで横になりたかったが、その前にマーカスに聞いておきたいことがあった。
「マーカスさん。ダルエルフィって何なんですか?」
レンが聞くと、マーカスはやっぱりか、という顔になった。
「それも覚えていないのですね?」
「はい」
記憶喪失という設定なので、知らないことは覚えていないことだ。
「ではまず、エルフィについて説明しましょう。エルフィというのは森の種族と呼ばれる人々で、我々人間と見た目はよく似ていますが、人間ではなく別の種族だと言われています。彼らは大陸南方にあるユグラドルの森で暮らし、普段は森の外との交流を絶っています」
「ちょっといいですか?」
ダルエルフィにエルフィ、そして森の種族。なんだか聞き覚えがあるような単語や設定だった。
「もしかして、そのエルフィって美形揃いですごい長寿だったりしませんか?」
「記憶が戻られたのですか!?」
「いえ、そういう訳じゃなくて、何となくそんな気がしたというか……」
「そうですか」
記憶が戻ったのかと驚いたマーカスだったが、すぐに安堵の表情になった。
「確かにエルフィは眉目秀麗にして不老不死の種族と呼ばれております」
森の種族で、美しくて不老不死とくれば、オタク趣味の人間なら誰でもエルフを連想するのではないだろうか。もちろんレンもそれを思い浮かべた。
となるとダルエルフィがなんなのかも想像がつく。ダルとはこの国の言葉で黒を意味するからだ。
「もしかして肌が黒いエルフィだからダルエルフィなのですか?」
「その通りです。ダルエルフィは魔獣の血肉を食べ強い力を手に入れたのですが、魔獣の血によって黒く汚れてしまい、ユグラドルの森を追われた邪悪なエルフだと言われています」
まさにファンタジー世界によく登場するエルフとダークエルフだと思った。
元の世界のアルファベットとこちらの世界の文字には偶然とは思えないような共通点があった。エルフとエルフィについてはどうだろうか? これも偶然なのだろうか?
レンはそうは思えなかった。やはり元の世界とこちらの世界には何らかのつながりがあり、そこで情報のやりとりがあったのではないだろうか。レンの前にこちらとあちらを行き来した者がいたのかもしれない。そうやってエルフィが向こうの世界へ伝わり、それがエルフの起源になったのではないだろうか。
レンはこれから彼らのことをエルフ、ダークエルフと頭の中で翻訳することにした。この世界におけるエルフとダークエルフというわけだ。彼にとってはその方が理解しやすかった。
「では僕の命を救ってくれたのも、そのダークエルフというわけですか?」
「その通りです。彼らは若く見た目が美しいのですぐにわかります。何より黒い肌の人間などいませんから」
話の腰を折りたくなかったので聞き流したが、黒い肌の人間はいないということには留意しておく。この世界に黒人がいるかどうかは不明だ。
「伝説によれば、ダークエルフは魔獣を飼い慣らして操ることができるとか、逆に魔獣の下僕として働いているという話もあります。もしそれが本当なら、今回の魔獣の襲撃そのものが、全てそのダークエルフの自作自演という可能性もあります」
そんなことはないだろうレンは思った。実際に彼は自分の命を捨ててまで僕を救ってくれたのだ。
レンはそう反論しようと思ったが、その前にマーカスが言葉を続ける。
「少なくとも村人たちはその話を信じているのでしょう」
その微妙な言い方にレンは引っかかった。
「マーカスさんは違うんですか?」
「私は兵士をしていたとき、ダークエルフの傭兵と一緒の部隊で戦ったことがあります。そのダークエルフは普通の人間とは比べものにならない、異常なまでの身体能力を持っていました。それが魔獣の力を得たため、と言われれば納得するような」
ですが、とマーカスは続ける。昔を懐かしむような顔で。
「その男には魔獣を操る力はなかったようです。それに彼は悪い男ではなかったと思います。ですから私はレン様の言葉を全て否定するつもりはありません」
その言葉に喜んだレンだったが、彼の話はまだ終わっていなかった。
「しかしレン様の言葉をそのまま信じることもできないのです。村人たちがダークエルフを邪悪だと決めつけているように、レン様もまた、そのダークエルフのことを無条件に信用しすぎているのではありませんか?」
「それは……」
違うと言いかけたレンだが、それを口にすることはできなかった。
村人たちが罵倒していたように、感情的な言葉をぶつけられれば、レンの方も感情的になって言い返すことができる。
だがマーカスが言ったように冷静に指摘されると、レンも自分の思いを冷静に考えさせられてしまう。そして冷静に考えれば、彼の言うことにも一理あると認めざるを得ない。
レンは自分を助けてくれた男のことを、いい人だと信じている。それを思い込みというなら、そうかもしれないと思った。
「彼は僕を助けてくれました。それだけは事実です」
レンは自分に言い聞かせるように言った。
「そういえばマーカスさん。彼がダークエルフだとして、一体どこから来たんでしょうか?」
やや強引だがレンは話題を変えた。ただ彼がどこから来たのか、ずっと疑問に思っていたのは本当だ。
「黒の大森林の中にダークエルフの集落があるのです」
「魔獣がいる森の中にですか?」
「どれぐらいの人数がいるのかは不明ですが、森に住んでいるのは間違いありません。ナバルは彼らと取引もしていました。食料などを売っていたようです。その料金として魔獣に関する情報などももらっていたようですが」
「あの森ってダークエルフが住めるような環境なんですか?」
「わかりません。しかしダークエルフの身体能力は、人間のそれを超えていますから、彼らなら可能なのかもしれません。村人たちはそれこそがダークエルフが魔獣の仲間である証拠だと思っているようですが」
元々魔獣を食べて汚れたという伝説があって、それを補強するように魔獣の森に暮らしている。村人たちがダークエルフを嫌うのにも理由があったというわけだ。
レンは彼についてもっと知りたいと思った。本当に黒の大森林で魔獣と共生しているのか、それとも魔獣を寄せ付けない何らかの手段を持っているのか。どちらにしろ、それを知ることは魔獣に対抗するためには有益だ。それ以前に、本物のダークエルフに対する興味もあった。
「彼らと連絡は取れないんですか?」
「ダークエルフとですか? ナバルなら知っていたかもしれませんが……」
取引を行っていたというナバルなら知っていた可能性は高い。あの日、あの場所に彼がいたのも、取引を行うためだったとすればつじつまが合う。
そうだ。あの革袋に入ったお金だ。
レンは男から託された革袋をちゃんと保管している。中身の確認だけはしたが、やはり入っていたのはお金だった。グラウデン王国の銀貨と銅貨が入っていた。
あのお金でナバルと取引するためにやって来て、そこで戦いに巻き込まれてしまったのではないだろうか。だがナバルも男も死んでしまった今、それを確認する方法がない。
しかし彼は最後に言っていたではないか。仲間に金を渡してくれ、と。
レンは近いうちに一度黒の大森林まで行き、ダークエルフたちを探してみようと決めた。そして彼の仲間を見つけ出し、話を聞いてみるのだ。
「ところでマーカスさん。ちょっと聞きたいんですが」
「なんでしょう?」
「エルフとは別にドワーフという種族はいませんか?」
「ドワーフ……? 聞いたことがありませんが」
「ええと、背が低くてガッシリしてて、地面に穴を掘って住んでたりして、鍛冶が得意だったりする種族なんですけど」
「いえ、やはり知りません」
「そうですか」
どうやらドワーフはこの世界にいないか、いてもこの近くには住んでいないらしい。
レンはがっかりした。
ドワーフといえば発明や生産で主人公を助けてくれる定番だが、どうやら彼らの手を借りるのは無理そうだった。