第11話 雨中の惨劇(下)
魔獣と戦っていた人物は剣を振るい、一人で複数の魔獣と戦っていた。
相手の魔獣はレンが先日戦ったハウンドだ。やはりあのハウンドは単体ではなく、群れに属する一体だったのだ。
雨の中、剣士の白刃とハウンドの吠え声が交錯する。その剣士は前後左右から襲い来るハウンド相手に善戦していたが、やはり多勢に無勢、かなりの苦戦でもあった。
そこへレンを乗せたガー太が突っ込んできた。
「クエーッ!」
鋭い鳴き声とともに地面を蹴ったガー太は、一体のハウンドめがけて跳び蹴りを放った。
目の前の獲物に夢中になっていたのだろう。レンたちの接近に気付いてなかったハウンドは、ガー太の鳴き声に反応して振り向いたところにもろに跳び蹴りを食らった。
ハウンドの顔面にガー太の右足がめり込み、悲鳴を上げる間もなく吹き飛ばされる。
突然の乱入に、戦っていた人物やハウンドたちの動きが一瞬止まった。
「助けに来ました!」
見たところその人物はまだ若い男だった。彼はレンの言葉に軽く頷いて応える。
ハウンドたちは、そのまま剣士を襲おうとするもの、新たに現れたレンたちを狙おうとするもの、どちら優先すべきか迷うものなど様々だ。
その中の一体が、うなり声を上げてレンへと飛びかかった。
ガー太は左足を軸に体を回転させ、見事な右の上段回し蹴りで襲ってきたハウンドを蹴り飛ばす。そしてそのまま右足を後ろへと突き出し、背後から噛みつこうとしていたハウンドも蹴り飛ばした。
この間、上に乗るレンは何もしていない。槍は持っていたものの、下手に動くとガー太の邪魔をしそうで何もできなかったのだ。
そしてここへ後続のガーガー集団も突っ込んできた。
ガーガーは臆病な鳥である。だが臆病なことと弱いことは必ずしも同じではない。
成体のガーガーの体重は、大きいもので二百キロを越える。それが車並みの速度で突っ込んでくるのだ。例えるなら、相撲取りが短距離ランナーの速度でぶちかましをするようなものだ。これが弱いはずがない。
突っ込んできたガーガーの群れに、数体のハウンドが牙をむいて襲いかかったが、いずれもガーガーにぶつかってはね飛ばされた。
一体だけガーガーに噛みつくことに成功したハウンドがいたが、噛まれたガーガーにはひるんだ様子もない。
ガーガーの白い羽根はなめらかで柔らかいが、実はかなり強靱で、それがハウンドの牙を滑らせて威力を軽減させた。さらに厚い皮下脂肪が牙を受け止め、ほとんどダメージを受けなかったのだ。
先日、ガー太はハウンドに噛まれて大けがを負ったが、あれはガー太が子供だったせいだ。大人のガーガーにはハウンドでも簡単に傷を負わせられない。
そして噛まれたガーガーが反撃に移る。
その場でぴょんと跳ぶと、ハウンドを下にして地面に激突、体重でハウンドを押し潰した。
たまらず悲鳴のような鳴き声を上げ、ハウンドは噛んでいた口を離した。そこへ他のガーガーがやってきて、押さえつけられた状態のハウンドを蹴りまくる。
ハウンドの数が十数体に対して、ガーガーは三十羽以上。
はね飛ばしたりしてハウンドを倒すと、そこに数羽のガーガーが群がり、
蹴る。蹴る。蹴る。
踏む。踏む。踏む。
といった調子で、まるで集団リンチのような光景があちこちで繰り広げられる。
もはやどちらが魔獣なのかわからないような状況を前に、
「つ、強い……」
思わずレンの口からそんな言葉が漏れた。
だがハウンドの方もこれで終わりではなかった。
「ギャオオオオッ!」
空気を振るわせ、周囲の雨粒をはじき飛ばすような、巨大な咆哮が響いた。
ガーガーたちがビクリと身を震わせる中、ガー太だけは動じる様子もなく声のした方を向く。
そこに巨大なハウンドがいた。
通常のハウンドの大きさは大型犬ぐらいで、体長は一メートルに満たない。
だが巨大ハウンドの大きさはその倍以上、体長は余裕で二メートルを超えている。これと比べれば普通のハウンドは子犬だろう。
間違いない。こいつがリーダーだとレンは確信した。群れを率いるという超個体に違いない。
巨大ハウンドの持つ迫力は圧倒的で、普通の人間ならにらまれただけで腰を抜かしてしまいそうだ。
その迫力は単に体の大きさではなく、全身からにじみ出る深く濃密な憎悪によるものだ。自分に向けられる強大な憎悪に、人は圧倒され恐怖する。
だがそんなハウンドを前にしてレンは冷静だった。
彼が剛胆だったわけではない。レンは自分が臆病な方だと自覚していて、それは別人の体になった今も変わっていない。それなのに落ち着いていたのは、きっとガー太に乗っているおかげだ。
ガー太に乗っているときのレンは一人ではない。人馬一体ならぬ人鳥一体であり一心同体。ガー太と一緒にいれば、魔獣の群れに突っ込むことも平気だった。もしレンが一人だったならば、魔獣の群れを前にして、きっと恐怖で身がすくんでいたはずだ。
死への恐怖が消えたわけではない。死ぬのはやはり怖いが、ガー太と一緒なら死んでもいいという思いがあった。そして死を覚悟した人間は強い。ガー太に乗っているレンは、幾多の修羅場をくぐり抜けてきた武人のような境地に達していたのだ。
巨大ハウンドがうなり声を上げ、ガー太めがけて突進する。
ガー太の方も、それを正面から迎え撃とうと走り出す。
ハウンドは口を開け、ガー太に食らいつこうとしたが、ガー太はぶつかる寸前で軽く地面を蹴って飛び上がり、さらにハウンドの鼻先を蹴ってその巨体を飛び越える。
軽やかに着地を決めたガー太に対し、踏まれたハウンドの方はつんのめるように急停止しようとしたが、勢いを殺しきれず体勢が大きく崩れた。この違いが、両者の次の動きに大きく影響した。
ガー太がハウンドの懐に飛び込むが、ハウンドの方はそれを迎え撃てる体勢になかった。どうにか向き直ってガー太に噛みつこうとはしたものの、それより速くガー太は全身をひねり、渾身の力を込めた右足で相手の無防備な胴体を蹴り上げた。
ガーガーの巨体を疾走させる脚力は非常に強いが、その全力の脚力から繰り出される蹴りもまた尋常な威力ではなかった。
二メートルを超えるハウンドの巨体が、垂直に三メートルぐらい蹴り上げられたのだ。
さらにガー太は自分も飛び上がって空中で一回転、落ちてきたハウンドにかかと落としを炸裂させて地面に叩き落とし、その上に着地して相手の体を踏みつけた。そしてとどめとばかりに右足を上げ、ハウンドの頭に振り下ろした。
にぶい音とともにハウンドの頭は地面にめり込み、その巨体は動かなくなった。
「ガー」
どうだとばかりにガー太が一声鳴いた。
一連の動きの中、やはりレンはガー太に乗ったまま何もしていなかった。激しい動きに翻弄されて何もできなかったわけではない。ガー太の動きをしっかりと把握しつつ、何もしない方がいいと判断して何もしなかったのだ。
だったらレンは単なるお荷物かといえばそうでもない。これは負け惜しみではなく、本当にレンはそう感じていた。
レンがガー太に乗って力を得ているように、ガー太もまたレンを乗せることで力を得ているのだ。
一見レンはお荷物で、レンがいなくなった方がガー太は自由に動けそうに思える。だが実際はレンが乗っているからこそ、ガー太はここまでの圧倒的な力を発揮できるのであり、レンがいなくなってしまえば、ガー太は今よりずっと弱くなってしまう。
それがレンにはわかっていたし、きっとガー太もわかっていると思った。
「やったなガー太」
「ガー」
周囲を見回せば、すでに動いている魔獣はいなかった。全てガーガーたちが袋だたきにして倒したようだ。もしかすると逃げた魔獣もいるかも知れないが、少なくとも目に見える範囲にはいない。
「ガー!」
もう一度ガー太が力強く鳴くと、他のガーガーたちも次々にガーと鳴き声を上げる。まるで勝ち鬨をあげるかのように。
見たところガーガーは全員が元気そうで、大きな傷を負ったガーガーもいない。怪我をしているガーガーがいても軽傷だろう。
十体以上のハウンドの群れを倒し、こちらはほぼ無傷。圧勝といってよかった。
だがレンには一つ気になることがあった。
ガーガーの主な攻撃手段は蹴りで、後は体当たりか踏みつけぐらいだろう。ガー太の攻撃もほとんどが蹴りだった。
つまり打撃攻撃なのだが、魔獣は打撃に対して非常に強いはずではなかったか?
もちろんガーガーの蹴りは強力で、人間の打撃よりもはるかに高い威力がある。だが魔獣には超回復があるはずだ。蹴られて大きなダメージを受けたとしても、超回復によってすぐに回復して立ち上がってくるのはないのか?
だがガーガーたちに蹴られ踏まれて倒れている魔獣たちは、全てが倒れたまま動く気配もない。
もしかすると、ガーガーの攻撃には魔獣の超回復を阻害し、大きなダメージを与える何かがあるのかも知れない。
いや、今はそんなことを考えている場合じゃない。
ガーガーの攻撃について考えていたレンは、ハッと気付いて思考を切り替える。
今はそれより先にやるべき事があった。生存者を捜さなければ。
ナバルの荷馬車は、道から少し離れた所で止まっていた。魔獣から必死に逃げようとして、道から外れてしまったのだろう。
荷馬車の周囲には、殺された馬の死体、そして人間の死体が何体も転がっていた。だがナバルの死体はない。
レンが馬車の反対側に回り込むと、そちらにも倒れている人間がいて、
「ナバルさん!」
声を上げたレンはガー太から飛び降り、ナバルへと駆け寄った。馬車のすぐ横にナバルが倒れていたのだ。
レンは彼の体を抱え起こそうとしたが、
「ぐっ――」
こみ上げてきた吐き気を我慢できず、レンは激しく嘔吐した。
ナバルはすでに死んでいた。そして死体はひどい有様だった。
上半身は傷だらけ、さらに腰から下は食われたのか欠損が激しく、ほとんど残っていなかった。雨が血を洗い流してくれてはいたが、それでもレンは彼の死体を直視できなかった。
間に合わなかった、と激しく後悔するレンの耳に、ガタンと物音が聞こえた。音がしたのは荷馬車の中からだった。
レンは慌てて幌付き馬車の中をのぞき込む。そこには色々な荷物が積まれていた。
「誰かいるんですか!?」
レンが呼びかけると、中で小さな影が動いた。
「ミーナちゃん!?」
「誰……?」
荷物の間に隠れていたミーナが、恐る恐る顔を出す。
「僕だよ。レンだ」
と言った後で、それでは忘れられているかもと思い、
「ガー太のお兄ちゃんだよ」
と付け加えた。
「お兄ちゃん?」
「そうだよ。ガー太もいるよ。ガー太、頼む」
「ガー」
レンが横へどくと、そこへガー太がやってきた。
ガー太は軽く助走して跳ぶと、荷馬車の縁に足をかけて体を持ち上げ、幌の中へと入り込んだ。
「ガー太!」
大声を上げたミーナが走り出てきてガー太に抱きつき、それから今度は大きな声で泣き始めた。
一人でずっと隠れていたのだ。魔獣に殺された者の悲鳴も聞こえていただろう。小さな彼女にとってどれほどの恐怖だったことか。
しばらくこのままにさせておこうと思ったレンだったが、そこへ今度はガーガーたちの鳴き声が聞こえた。
ハウンドを倒した後、ガーガーたちはずっと静かにしていたのだが、急に緊迫した鳴き声を上げたのだ。
どうしたのかと思って振り向いたレンの目に飛び込んできたのは、こちらに向かって走ってくるハウンドの巨体だった。
ガー太が倒したはずの超個体だ。
顔は半分ぐらいが潰れ、受けたダメージのせいか走り方もどこか不自然だったが、それでも速い。何よりレンが振り向いたときには、すでにハウンドは目前に迫っていた。
それからは全ての動きがゆっくりと流れた。
降ってくる雨粒の一つ一つが認識できるような時間の中、ハウンドが口を開けて飛びかかってくる。
このままでは確実に死ぬとレンは思ったが、思っているだけで体は動かない。
持っていた槍は、ナバルの死体を見つけたときに投げ捨ててしまっていた。だが槍を持っていたとしてもレンはやはり動けなかっただろう。
ガー太に乗っていれば、とレンは思った。ガー太に乗っていたならきっと反応できていただろうし、それより先にガー太が動いていたはずだ。
そのガー太は背後で鳴き声を上げ、レンを助けるために荷馬車から飛び出そうとしているが、これも間に合わないだろう。わずかだがハウンドの方が速い。そしてそのわずかの間で自分は死んでしまう。
硬直するレンにハウンドの爪と牙が届こうとした瞬間、ハウンドの体が横にずれた。
どこからか飛んできた剣がハウンドの左の腹に突き刺さり、その衝撃でハウンドの体は右に――レンから見れば左に――逸れたのだ。
動かなかったレンの体が動いた。考えての行動ではなく、反射的に体は右に動き、雨にぬれた地面に倒れ込む。
ハウンドはレンの体をかすめるように通り過ぎ、地面に着地したところで、荷馬車から飛び出してきたガー太に頭を蹴り飛ばされた。
おそらく最後に残された力を振り絞っての攻撃だったのだろう。ガー太に蹴られて再び倒れたハウンドは、今度こそ二度と動き出すことはなかった。
助かった――それを実感すると、レンの全身から冷や汗が噴き出した。心臓がばくばく動き呼吸が荒くなる。レンは大きく息を吐き、どうにか自分を落ち着かせようとする。
「ガー」
「ありがとうガー太。大丈夫だよ」
心配そうに寄り添ってくるガー太にレンは笑って応える。まだ少し声が震えていたが。
「お兄ちゃん、どうしたの?」
「なんでもないよ大丈夫。でもまだ出てきちゃダメだよ」
もう一度確認するが、今度こそあのハウンドも倒したようで、もう動き出す気配はない。他に動くハウンドもいない。
ひとまず安全だと思うが、それでもミーナを荷馬車から出すわけにはいかなかった。外にはいくつも死体があるのだ。その中には彼女の家族の死体もある。そんなものを幼いミーナに見せるわけにはいかない。
「ガー太。すまないけどミーナを見ててあげてくれる?」
「ガー」
「心配しなくても大丈夫だよ。今度こそちゃんと倒したみたいだし」
レンがそう言うと、ガー太はまた荷馬車の中に入っていった。
ミーナの方はしばらくガー太に頼むとしてもう一人、とレンは思った。
ナバルやミーナのことばかりに気をとられ忘れていたが、この場にはもう一人生存者がいたのだ。最初に駆けつけたとき剣で戦っていた若い男が。そして彼はレンの命の恩人でもある。
先程ハウンドに突き刺さった剣。レンを助けてくれたあの剣を投げてくれたのが彼だった。
その男は少し離れたところに黙ったまま立っていた。
「さっきはありがとうございました。助かりました。あなたは――」
レンは声をかけて歩み寄ろうとしたが、男はいきなりその場に倒れた。ぬれた地面に膝から崩れ落ち、ばしゃりと水しぶきが上がった。
レンは慌てて男へと駆け寄り、地面に膝をついて男の体を抱え起こす。
「大丈夫――」
ですか、という問いかけは途切れた。
男は傷だらけだった。特に左肩と背中にざっくりと切り裂かれた大きな傷があった。ハウンドにやられた傷だろう。これでよく動けた、というより、これでよく生きているといった方がいいような重傷だった。
「うう……」
苦しげな声を上げ、男が目を開ける。
黒い瞳だとレンは思った。それで気付いたが、男は黒目、黒髪、そして黒に近い褐色の肌をしている。
この世界に来てから、褐色の肌をした人間を見るのは初めてだった。レン自身もそうだが、これまで会った人間は全員が白っぽい肌をしていた。
黒目黒髪というのも初めてだ。
レンは紅茶のような明るい茶色の髪で、目はそれよりも濃い茶色だ。マーカスは白髪交じりの薄い茶色の髪に灰色の目だった。南の村の住人にも黒目はともかく黒髪の人間はいなかった、はずだ。
この男はレンたちとは人種が違うのかもしれない。
そしてもう一つ。男はとても整った顔立ちをしていた。少し鋭いが、それが荒削りな魅力になっているような美形で、こんな状況だというのにレンは少し見とれてしまった。
「大丈夫ですか?」
レンは静かな声で聞いた。
とても大丈夫だとは思えないが、それしか言うことができなかった。この深い傷では、現代日本の病院でも助かるかどうか。ましてやこの世界のこの状況では絶望的だった。
「頼みがある」
かすれた声で男が言う。
「何でも言って下さい」
「腰の金を……仲間に……」
男の腰に巻かれたベルトには革袋が結んであった。
レンがそれを手に取るとジャラジャラと音がした。中に貨幣が入っているようだ。
「このお金を仲間の人に渡せばいいんですね?」
男がうなずく。
「仲間というのは、あなたと同じような肌の色をした人ですか?」
レンが訊ねると、なぜか男は少し驚いたようだが、
「そうだ。私と同じ……だ……」
同じに続く言葉が聞き取れず、レンはもう一度訊ねるが、男はもう答えてくれなかった。
亡骸となった男の体を静かに地面に横たえると、
「くそッ!」
レンは右手で思い切り地面を叩いた。
命の恩人に対して何もできなかった。ちゃんとしたお礼すら言えなかったとレンは思った。
自分はやれるだけのことはやったという思いがある。
魔獣にナバルが襲われたと聞いて、すぐに屋敷を飛び出して駆けつけた。ガー太に任せきりだったが、魔獣たちを倒し、ミーナだけでも救うことができた。
状況を考えれば、自分は十分やったはずだ。それはレンの本心だ。
だが同時に思う。自分にはもっとやれることがあったはずだと。
最初にハウンドと遭遇したのはレンなのだ。
ナバルにもっと注意を促していれば?
魔獣がいないか、もっと念入りに探していれば?
今のレンはこの地を治める領主という立場なのだ。例え名前に実権が伴っていなくとも、もっと他にやれることがあったのではないか?
日本で生きていたときのレンは下っ端のプログラマーだった。色々と苦労はあったし、それなりに責任を持って働いていたつもりだ。だが人の生き死にに直結した仕事ではなかったし、下っ端だから上から言われた通りにやっていればよかった。給料は安かったが、今と比べればやはり責任はずっと軽かったのだ。
名目だけだろうが領主は領主である。人の上に立つという責任の重さにレンは打ちのめされていた。
「くそッ!」
悲しみと後悔を込めて、もう一度レンは右手で地面を叩いた。