ひまつぶし
私はいつの間にか眠っていたようだ。
私はまだまどろみの中でそう判断した。
私はあたりを見回した。しかし、あたりには何もない。それが当たり前で、何かあるのを期待するのが間違いであるかのような光景だった。
私はひどく困惑してしまった。何が何やらさっぱりわからない。人間はこんなところにいるのが普通な生き物だったろうか?否。それは断じて違う。人はこんな場所にいることは本来ないのだ。それならば・・・。
私は今どんな状況におかれ、何のためにいるのか?私はわからなくなってしまった。
「何なんだこれは?」
思わず、口に出した言葉はまさに今の状況を反映していた。そうだ。これは何なのだ。
「お困りですか?」
私に問いかける声がした。しかしあたりに人はいない。
「誰だ?どこにいる?」
「私は神です。そして、あなたは今、神の世界にいます。」
まるで機械がしゃべっているかのような人の厚みがない声だ。
「何を戯言を。あなたが神であるという証拠はあるのか?そして神であるならばなぜ姿を見せないのだ。」
しばしの沈黙がその場を支配した。
「証拠となるものは存在しません。しかし証拠を作ることならできる。」
意味が分からない。どういうことだろうか?
「何か欲しいものはありますか?」
「・・・そうだな。とっびきりのうまい飯が欲しい。」
「わかりました。いいでしょう。」
感情のこもっていない自称神は答えると、私の目の前に今まで見たことのないような豪華な食事が現れていた。
「こ、これはいったい。」
私は驚きを隠せなかった。
「試しに一つ食べてごらんなさい。」
私は少し不審に思ったが、目の前の食べ物の誘惑に耐えることができず、一つ手に取って食べてしまった。
「なんだ、これは・・・。今まで食べたものの中で一番うまいではないか。」
「そうでしょう。私は神なのだから。そして先ほどの質問に答えますが私は神でありあなたよりも高次元の存在であり、存在は下位の次元に住まうあなた方人間にはわからぬのです。」
なるほど。確かに目の前で繰り広げられている出来事は我々人間では出来ぬ芸当であり、少なくとも人間よりも高位の存在なのであろう。
「しかし、高位の存在である神が下位の存在である人間の私に何の用ですか?」
「人間は要らないと神々の集まりで決まったのですが、本当にそうなのか。もう一度検証しようということになり、人間を一人被検体として調査することになったのです。」
「そのサンプルが私ということですか?」
「物分かりが良くて助かります。その通りです。」
しかし、そうだとすると何とも大変な役目を担ったということになる。
「しかし、私は何をすればよいのですか?」
「簡単です。今から私の言うことに従えばよいのです。人類の命運はあなたの手にかかっているのです。」
私はごくり唾を飲んだ。無理もないこれは人類の未来がかかっているのだ。
「それではまず最初に変顔をしてください。」
「・・・・・。すいません。よく聞き取れなかったのでもう一度お願いします。」
「変顔です。変顔をするのです。人類の命運がかかっているのに聞き間違るなどもってのほかです。」
「はあ・・・。それでは・・・」
私は自信のある変顔を披露した。しかしあたりは沈黙しかない。
「では、次はコ〇ネチをやってもらいましょう。」
頭の中がはてなで一杯になる。
「すいません。コマネ〇とは何ですか?」
またもしばしの沈黙。
「知らないのですか?ビ〇トたけしさんの有名なギャグです。」
「はあ・・・。それなら知っていますが・・・。それでは・・・〇マネチ!」
またもや沈黙が訪れる。
「それでは次は・・・・アンガー〇ズの山根の物まねをしてください。」
こんな調子で私は次々と神様の言うとおりに行動した。ゲッツ。○○侍の真似。なんとかバズーカのネタ。だっちゅーの。シェー!がちょーん!ぐー!何やらいろいろやらされた。ほとんど知らないネタが多かったのだが、神様は私の脳内にそのギャグのやり方を送り込むという方法で私にやり方を教授していた。
そしてしばらく時間が経ち。
「これに持ちまして終わりです。ありがとうございました。」
「はあ・・・。」
そこで私の意識は途絶えた。
私は窓から差し込む朝陽で目を覚ましていた。隣には彼女の直子が面白そうにこちらを見ていた。
「健二あなた昔の古いギャグを知っているのね。」
「何のことだい?」
直子はくすくすと笑うと
「だってあなた寝言でコマネチとか言ってるんだもの。私笑っちゃった。」
「人間を捕まえてみたがなんも面白くなかったのう。」
神様はひとり残念そうにつぶやいた。
それを聞いた別の神様が
「そりゃ、神様の暇つぶしに人間を使ってもなんもおもんないだろうさ。次元が違うんだからさ。」




