表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/5

置き換え前①

愈史郎と珠世が冨岡に助けられてから数日経った、ある夜。

――愈史郎と珠世は冨岡の案内で、産屋敷邸を訪れた。


もちろん隠に囲われての移動だ。移動はひたすら不快だった。珠世が我慢しなさいというので、愈史郎は我慢した。珠世に触れていたのは女性の隠だったが、それでも本当に不快だった。

勿論、風呂敷包みは手放さない。愈史郎がしっかり持っていた。


『――わざわざ呼びつけて申し訳無い』

そうして産屋敷邸の奥座敷で、珠世と愈史郎は、産屋敷輝哉と対面した。

――柱である冨岡が退出する。気配は部屋の外にあった。会話も聞こえるだろう。

輝哉はまず、妻のあまねと、息子の輝利哉を紹介した。


『ご託はいい。それで、珠世様に何の用だ?』

愈史郎は言った。

輝哉との会話は主に愈史郎が行った。これはあらかじめ決めていたことだった。

最も、愈史郎がそう主張したのだが。


『その風呂敷の中身を譲って頂けないだろうか』

輝哉が言った。

『中身が何か分かるのか?』

産屋敷の総領は『先見の明』という予見のような力を持っている。

それがどの程度の物かは愈史郎にも珠世にも分からなかったが、冨岡を差し向らける程度には正確な物らしい。


輝哉は首を振った。

『分からない。先見の明があるといっても、全て分かるわけではないからね。ただ、それはとても重要な物のようだ』


『珠世様。風呂敷を解いても良いでしょうか?』

愈史郎は珠世を見た。

『ええ。――産屋敷さん、これは黒色の月下美人です』

珠世は輝哉に言った。これは盲目なので説明しただけだ。

愈史郎は包みを解いた。


『黒い花が五つ。確かに月下美人に見えます。みずみずしく、枯れてはいません。それと書き付けが三枚』

あまねが中身を説明する。


珠世が書き付けの内容を説明した。

『これは毒ですが、ある植物と合わせると、薬になるそうです。具体的には血鬼術を強化できると――だから鬼は探していたのです。これを渡して来た鬼は、蛭沼と名乗り、息絶えました。蛭沼はこれを藤美という鬼に届けて欲しいと。死因は毒のようでした。私と愈史郎は言われた場所を探しましたが、それらしい鬼はいませんでした。この書き付けにはその薬の製法と、必要な植物の特徴が書かれています』

珠世が言った。


愈史郎は風呂敷を畳んで元に戻した。


『俺達の望んでいる物が分かるか、分かるならこれはやる。分からないなら諦めろ』

愈史郎は言った。


輝哉が微笑んだ。

『……なるほど。それなら分かるよ』

『それは予測か?先見の明か?』

愈史郎は尋ねた。


『どちらでもないね。貴方がたは、私達と手を組むつもりでいる。そう感じるよ。条件つきだろうけど……あっているかな?』

輝哉が言った。


珠世が目を伏せた。

『ええ。ご明察です。……確かに、目的は近い。しかし、相容れぬ者同士です』

『いくらでもだまし討ちに出来る。お互いにな』

愈史郎は言った。


『それでいいなら。これはやる。研究については珠世様のご意見を尊重しろ』


――そうして、割合すんなりと協力関係となった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ