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9話 自己紹介をしよう

「えーと...取り合えず一人ずつ自己紹介でも。

俺は倉橋柚希、15歳です。よろしくー」

「私はその妹の蜜柑、11歳ですよろしくお願いします!」


食事を終えてみんなに残ってもらって自己紹介の場を用意してみた。

俺に続いて蜜柑も自己紹介した。


「わいは神やから、まぁ神様とでも呼べや。

後、わいの蜜柑に手ぇ出したら殺すから気ーつけや」

「神様! そんな恐いこと冗談でも言っちゃだめだよ!」

「冗談ちゃうで、わいはいつでも本気や蜜柑」


わいわい言い合う二人は置いておいて俺は隣に座る少年の肩をつつく。

少年は嫌そうな顔をしつつ自己紹介をした。


「俺はライゼ、多分11歳だ」

「おー、良い名前だなライゼ」


素っ気ない言葉に呆れつつ、俺が名前を褒めれば睨んでくる。

年齢が分からないなんて一体幾つのときから浮浪者だったんだろうな。

深く考えると暗くなりそうだ。


「ルルはね、8歳なのよろしく!」

「おー、よろしくルルちゃん!」


とルルちゃんが乱入して自己紹介してくれて助かる。

まだルルちゃんの順番じゃないんだけどね。


「じゃ次はルミナスさん」

「あたしはルミナス、19よ。

寝る場所もなくて困ってたから、坊や達には感謝してるわ」

「ぼ...坊や...」


19歳という思ったより若いルミナスさんの色っぽい流し目にドギマギしてたら坊や呼びされ、軽くショックを受ける。

ルミナスさんは今すぐにでも消えてしまいそうな儚い感じなのに妖艶で、男慣れしてるし職業的にももうちょっと歳がいってるかと思ってた。


「スッダさんもお願いします」

「オラはスッダ、37だ。前は農業してたからここでも農業さするつもりだでよろしく」


スッダさんは畑仕事をしてくれる予定の男性だ。

彼はマチルダさんと同じような茶色髪と目をしている。


「次よろしく」

「はい。えっと、私はミリーです。前は一応貴族でしたので上級貴族様のお屋敷で侍女として働いていたのですが旦那様のお手付きになり子が出来て追い出されました。

帰ってきた私を家族は家の不名誉として受け入れず私は死んだ者としまして、誰にも頼れず行くあてもなく娼婦として働く度胸もなく持っていた幾ばくかのお金で何とか生活しておりました。

生まれた子は1歳になったばかりだったのですが、栄養失調で数日前に亡くなりました。

それからこうして神様と柚希様、蜜柑様に救って頂き心から感謝しております。えへへ」


頬を染めて恥ずかしそうに微笑む彼女だが言ってる内容は相当ヘビーだ。

可愛らしい顔で青い髪と水色の目の18歳くらいの女性だが内容が...


「やだよあんた、まだ若いのに苦労してんだねぇ」

「いぇ、もう16ですから」


マチルダさんの言葉に16歳と返している。

16ってことは俺と同じ歳のときに子供を産んだのか...

あまりの重さに俺は内心引いてしまうが、蜜柑は涙ぐんでいる。


「えーと...次お願いします」

「ぼっ僕ですか!? 僕はロイ、25歳です!

町に敵国が攻めて来たのでネイヴィアまで逃げて来ましたが、同じような者が多くて仕事が見付けられず...」

「ロイは良いとこのお坊っちゃんでしょ? 商人の子かしら?」


ルミナスさんの言い方には棘が含まれているようで、それに気付いたロイも眉根を寄せる。

さっきロイも立ってたからその仕返しかな。

ロイが何か言ったわけじゃないけどあの人達に賛同してたわけだから嫌われてもしょうがないよな。

しかしまじでルミナスさんは巨乳だな。組んだ腕から溢れる乳につい目がいってしまう。


「それじゃあたしの番かね?

あたしはマチルダ、39歳。ロイってそこの気弱そうな人と同じで戦禍から逃れて来たんだよ。

まぁ、同じように職が見付からずスラムの仲間入りだがね」


思ったより若いマチルダさんは太ってれば厳ついおばはんって感じなのに痩せてるから貫禄が足りない。

太ってた方が絶対キャラが立つと思うのに。




「皆さんに私達から渡す物があります」


そう言って可愛くラッピングされた袋を配って回る蜜柑。

突然のことに驚く俺や、車イスに近付かれてビビる人達。

そんな中「ありがとう。何かしらね」なんて余裕で受け取るルミナスさん。さすがお姉様。

そうして中身をゴソゴソと開けていく人々は中の物を見て目を見開いた。

袋の中身は洋服だった。


しまった俺全然思いつかなかった!!


誰もがボロボロよれよれの服を着ているのに俺は替えの服なんて思いつかなかった。

いや、 ルルちゃんは部屋と一緒に服も欲しがったからあげたけど、他の人はそんな要望言ってこなかったから用意してなかった。

ルルちゃんだけ服を着替えてて、ピンクの服で超浮いている!?

浄化扇で汚れは落としたけど服はぼろいままだもんな。

みんなの嬉しそうな顔に罪悪感が...


「いっ、いいのかい? こんなに貰って...」

「かっ、かか金なんて、払えないですよ!?」

「それはプレゼントだから気にしないで下さい。

3着だけですけど、喜んでもらえれば嬉しいです」


不安がる人に笑顔で答える蜜柑。サイズも計らずに用意するとはさすがだ。

兄ちゃんは嬉しい半面複雑だぞ。


「可愛い!!」

「俺の見てみろよ似合うだろ!」

「こんな綺麗な服を見るのなんて久しぶりです!」

「やだねあたしにこんな高そうな服似合うかしら」


楽しそうに服を見ているルルちゃんとライゼ少年。

喜こぶミリーに、なんか乙女になってるマチルダさん。

そんな中で、


「ふふふ、私に白いフォーマルドレスなんて」


そう呟いたルミナスさんの言葉に、気に入ってもらえなかったのかと焦った。

だけど、泣き出しそうなその笑顔に嫌なわけじゃないんだと気付いた。



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