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6話 みんなのアパート作り

「そんじゃみんなの家作りを始めますか!」

「いきなり家は与えんで、お前が住んどったみたいな集合住宅にしといた方がええで」


俺がさっそく家作りを始めようとすれば神に止められた。

先程のことがあってまだ少し神に対して恐怖心もあるが、蜜柑に怒られて項垂れていた神を思い出せば落ち着けた。


「なんで?」

「人格が分からんやろ? 暫く様子見て問題なかったら家をやればええねん」


神のまともな意見に驚く。

確かに人間的に問題のある人物だったら困るか。

住民とトラブル起こすような人だとここに置いておけないしな。


「分かった」


そうして俺が腕時計を操作し始めるとすぐに蜜柑が声を掛けてくる。


「お兄ちゃん、みんなの部屋はどうするの?」

「あぁ、一人一人に希望を聞くつもり。えーとそこの人、名前は?」

「へっ? ....ろ、ロイです!!」


名前を聞いただけなのに物凄い怯えようだ。

彼は茶髪の青年だ。

とても気の弱そうな見た目をしているが見た目通りの人物なのだろう。


「んじゃあロイさん、どの部屋がいいとか内装やこうゆう家具がほしいとか何か希望はある?」


俺が腕時計から映される立体画面の3階建のアパートから、後ろにいるロイへと目をやると、ロイは裏返った声を上げて慌てだした。


「へっ!? そそそそんな滅相もない!! ここに住まわせてもらえるだけで有り難い話しなのに、十分よくして頂いています!」


うーん、そう言われると困るんだよな。どう内装決めればいいかとか何も分かんないし。

折角色々弄れるのに全部同じじゃつまらないだろう。

やっぱ住む人の好みに併せたい。

俺は横から楽しそうにこの立体映像を見ている少女に尋ねた。


「ルルちゃんはどんなお部屋がいい? 可愛いヌイグルイとかあった方がいいかな?」

「クマさんのヌイグルイがいい! あとねあとね、お姫様みたいなピンクくてヒラヒラしたベッドにピンクのドレッサーにあと可愛いドレスをたっくさん!!」


キラキラした笑顔で遠慮のない要望が言えるのは子供ならではだろう。


「OK! こんな感じかな?」


ちょちょっとアパートの一室をクリックし、部屋の内部を表示させて家具や内装を弄る。

途中でちょくちょく要望が入り微調整しつつ何とか完成したのはピンクだらけのこれぞ乙女といった感じの部屋だ。


「わー!! すごい楽しみ!!」


ピョンピョン飛びはねながら喜んでいるルルちゃんを見るといい仕事したなーと思える。


「他に要望がある人は?」


俺が問うとオズオズとだが手が上がった。

そうやってうまいこと全員の要望を聞き出すことに成功した。




「本当にこんな建物ができるのか?」

「さっきの病院を見ただろう!」

「でもこんなに良い話し、なんか裏があるんじゃ....」

「でも神様がついてるんだぜ? 疑うなんて許されねーよ」


人々がコソコソと話し合っている。

不安は分かるけど丸聞こえなんだよな....


「んー、こんな感じでいいかな。じゃあ完成にするよ」


俺は映像を長押しして出てきた文字の中の、完成と書かれた部分を押す。

ゴゴゴゴという大きな音と共に今作っていたアパートが地面から現れた。

クリーム色の壁に屋根は焦げ茶色。窓枠は白でベランダやバルコニーは茶色。木目が美しいアパートの出来上がりだ。

そんなアパートを見てみんな驚いている。

俺だって何度見ても慣れないし、3階建てのものがあまりないからだろう。

さっき見たネイヴィアの町並みも、2階建ての家があったけどそれ以上となると遠くに見えた城くらいか?


「わぁ素敵なアパートだね! 前住んでたボロアパートとは前々違う!」

「ん、ここがこれからのみんなの家なんだよ。ほら行こう!」


キラキラした瞳で俺の作ったアパートを見詰める蜜柑、そんな妹の手を俺は握った。

後ろから蜜柑を押して緩い斜面を上ろうとすると、神が強引に蜜柑を奪い取った。


「蜜柑はわいが運ぶんや!!」


俺を睨み付けてくる姿にイラっとした。


前のアパートは車椅子用じゃなかったから、ちょっとした段差を上るのも苦労した。

でも、今あるのは俺達の理想としたアパートだ。

道の途中に無駄な段差をなくしたので車輪が引っ掛かることはない。

1階に管理人室を作ったんだがそこにもすぐ行けるし、部屋からバルコニーへ出るのも、妹がそこから庭に出て花を愛でるのも楽々だ。

勿論妹だけじゃなくて、お年寄りや体の不自由な人が暮らしやすいよう廊下には手摺もあるし、勿論エレベーターだってあるが、基本そういった人には1階に部屋を宛がった。

何かあったらすぐ駆けつけられるようにだ。

1階の共同トイレも、ドアは横に軽く押せば開き勝手に閉まるし中も広めで手摺もある。

念の為呼び出しボタンも設置した。

個人の部屋は体に不自由がある人にはなるべくそれぞれに合うようにしたつもりだが、何分妹のような足の不自由な人のことしか分からないからその都度調整していくつもりだ。


驚きも収まりワイワイと騒ぎだす人々を見て、蜜柑と顔を合わせて笑った。


「それじゃみんな、中に入りましょう!」


ぞろぞろと大勢を引き連れて玄関へ来ると自動ドアが開く。

するとあちこちから驚きの声が聞こえて、思わず笑ってしまった。


「ようこそ皆さん、倉橋アパートへ!」



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