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53話 少しは仲良くなれますか?



少女はマチルダさんに懐いたようで、よくマチルダさんと一緒にいる所を見掛ける。

ただ、俺に気付くとマチルダさんの後ろに隠れてしまうので悲しい。

俺が悪いんだけどね... ハハハ...はぁ


少女が抱えているものが何かマチルダさんから聞いた。

それは産まれたばかりの小さな赤ん坊。...多分、少女の弟だろうとマチルダさんは言っていた。

少女は未だにボロボロの布で包まれた小さな弟の死体を大事そうに抱えている。

3日も経った赤ん坊は腐って悪臭を放ち始めているが、少女は頑なに赤ん坊を離さないのだ。

少女に懐かれたマチルダさんはそんなものを持った少女を連れて食堂に行くわけにはいかず、今はずっとお仕事を休んでいる。

「何とか説得してチェルシーと弟を弔うわね」と笑って言うマチルダさんに感謝だ。

チェルシーというのはマチルダさんがつけた少女の名前だ。少女は一言も話さず自分の名前も言わないので、戦争で亡くなった娘の名前をつけたらしい。

マチルダさんは亡くなった弟を今も必死に守っているチェルシーをすごく気に入ってくれたようでよく面倒を見てくれている。

二人一緒にいる姿は本物の親子のようで... 見ててなんか、胸にぐっとくる。





「おんや、柚希さんだべ~」

「ん? 何かあった?」


声を掛けられ振り返るとそこにはスッダさんとリリスちゃんとラヴィがいた。珍しい組合わせだな。

そんな3人の眉を下げたその表情に何かあったのだとすぐに気付いた。


「いんやー新入りさんだけんど、食堂のものを盗んで行ったみたいでな...」

「はぁ、またかー」


料理人のみんなが作ってくれたご飯を食べなかった3人はあれからもこっちが用意したものを一切食べず、それどころか勝手に出て行こうとしたんだけど外の魔物を見て慌てて帰ってきた。

出て行くことができないと分かると町外れにテントを張りそこに勝手に住み始めた。

そしてこっちが用意した物資は貰うが未だに食料は食べず、厄介なことに食堂や畑から食べ物を盗むようになったのだ。

これには本当に参っている。

まぁ、神に言えばすぐに彼らを追い出してくれると思うけど、それじゃ居場所のない彼らには辛いだろう。

前の男性達も神はあっさりと追い払ってたからな。あいつに優しさなんてものはないだろうから言わない方がいいと思う。


「ごめんな、彼らをあそこまで警戒させたのは俺のせいだから」

「いいえ違いますよ!! 柚希さんは何も悪いことしてません!」

「そうです!! こっちが毎日食事を用意してるのに食べないあの人達がおかしいんです!!」

「んだんだ、柚希さんが気にすることじゃねーべ」

「うん、ありがとリリスちゃん、ラヴィ、スッダさん」


リリスちゃんもラヴィもスッダさんも優しいから俺を責めたりしないんだよね、いや、ここの人達はみんなそうか。

いい人達に恵まれたもんだ。元々日本にいたときも俺の周りには良い人達ばかりだったし、俺ってほんと恵まれてるよ。

...そう思うと罪悪感で胸が苦しくなった。

蜜柑もだけどここには辛い経験をした人が沢山いるから。彼らも色々問題はあるが、もう暫くは様子をみてあげたい。


「色々問題はあると思うけど、もう少し見守ってあげて」

「...柚希さんがそう言うなら」


3人は渋々とだが頷いてくれた。俺もちょっと彼らの様子を見てみようかな。

...俺が近付くと過剰に警戒させるからあんまり近付かないようにしてたんだけどね。








「何しにきやがった!!」

「何しにって身に覚えあるでしょ?」


警戒心を剥き出しに俺を威嚇する男3人。

いつも最初に突っかかってくる男性は、鱗のような赤いその皮膚と真っ赤な髪を怒りからか逆立てているし、2本の角と怒りの形相から本物の鬼のように見える。

その左隣の男性は焦げ茶の髪がそのまま背中にも生えていてちょっと獣人にも見えるが彼の頭にも1本の角がある。それ以外は人間と変わらないワイルドな男性だ。

鬼の男性の右隣にいるのは魚の鱗のようなものが全身を覆っているし耳も手足も人魚みたいにヒレがあって魚人みたいだ。


「人の物を盗むのは止めてくれる? ご飯ならそっちが受け取らないだけでマチルダさんやルミナスさんが持ってきてくれてるでしょ」

「そんなもん信用できるか!」


もはやお馴染みとなっている台詞を喋る男性に溜め息が出た。


「信用できない人間から物盗むの? それだって君らを殺そうと思えば毒だって仕込めると思うけど?」


呆れて俺が言うとギロリと睨まれる。彼らだって自分達のしていることの矛盾に気付いてるんだろう。

けど、だからってどうにもできないからこうやって睨み付けてくるんだ。


「あの~」


俺の背後から小さな声が聞こえ振り返ると、そこにはビクビクしているスッダさんがいた。


「どうしたの?」

「そのな、種なら分けてやっから自分達で育ててみたらどうだ? 種から育てるんだし毒の入れようがねーべ。

オラ達が信用できねーなら結構いい案だと思うんだけんど」


不思議に思い訪ねると返ってきたその言葉にすげー驚いた。

臆病なスッダさんがみんなも恐がる魔人に自分から話し掛けるなんて...しかもなかなかいい考えなんじゃないの。

彼らを見ると困惑しながら顔を見合わせていた。


「俺もいい考えだと思うよ。それに種を植えたら蜜柑...俺の妹に歌ってもらえばあっという間に育つからすぐ食べれるだろうし」

「...なんかあるんだろう! 成長したら人食い花になるとか!」

「知ってる種だけ植えればいいべ。ジャモやキャツなら分かるだろ?」

「...」


スッダさんの案にもやっぱりいちゃもんをつける男達。しかしスッダさんの言葉に黙り込んだ。

なんかスッダさんが頼もしいんだが...

因みにジャモはジャガイモ似の、キャツはキャベツ似の野菜だな。


「分かった...種をくれ」

「ベルイド!」

「...こいつらも俺達に食材を盗まれて迷惑してんだ。代替案を出してくるのも分かる。ただ信用したわけじゃねー。怪しい動きがないかちゃんと目を離すなよ!」


ベルイドと言う名らしいリーダーぽい男がそう言い仲間を説得してくれたので、スッダさんがビクビクしながら種を渡した。



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