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52話 人間不信にも程がある



新しい人達が来て3日経ったが、俺は未だにあの女の子に恐がられている。

新入りの人達も初日に俺が怒鳴ったからか俺を恐がってる人と睨み付けてくる人といるし...





数日前のことだ。


回復飴をもらい元気になった人々をお腹も空いているだろうと食堂に案内した。

その間も背中に感じる怯えた目線と突き刺さる程の殺意...

食堂に着くとテーブルにはマチルダさんやルミナスさんが用意してくれた食事が並べられ、誰もがそれを困惑した顔で見た。


今回は魔人ということもあり念のためにリアーナやウォルバンさんが隅に控えている。


「どうぞ好きに座って。料理人のみんなが作ってくれた美味しい料理だから、ぜひ食べてね!」


警戒心を与えないようできるだけにこやかに話し掛ける俺と、困惑してお互いに見詰め合う人々。

そんな中一人の男性が怒鳴った。


「飯たぁ卑怯なことすんじゃねーよ! 中に毒でも仕込んでんだろ!!」

「はぁ!? ないないない、そんなわけないじゃん! ほら、平気だって!」


突然のいちゃもんに驚き近くにあったからあげを一つ頬張る。

うん、ウマイ!

咀嚼している俺を羨ましそうに見る者と、その男性のように睨み付ける者といる。


「フンッ、全てじゃなく何個かにだけ毒を入れてるんだろ! もしくは自分だけ解毒剤でも飲んでんだ!」

「...そんなわけないじゃん、そんなことする為に君達を連れてきたと思ってんの?」

「お前ら人間が俺達に優しくするわけがねぇだろ! 親切にするフリして突き落として笑うんだ!!」


激怒する男性の言葉の意味が分からず困惑して答えるも、余計怒らせてしまった。

彼らの人間不信は思ったより深そうだ。

必死に説得するも全く信じてもらえずどうしたものかと悩んでいると、まだ13歳くらいの少年が我慢できずにからあげを掴み口の中に放り込んだ。

驚いたがこれで美味しいってことが分かって少年に触発されて他の人達も食べ始めるかな? とちょっと期待したんだけど、しかしそんな少年を男性達が押さえ付け無理やり吐き出させた。


ちょっ... 少年美味しそうに食べてたのに...


そうして少年を押さえた男達はみんなの前に立って誰も食べに行けないように阻み他の者を睨み付けた。

それはさすがにねーだろ! さすがの俺もイラッとして思わず文句を言ってしまう。


「ちょっと待ってくれる? なんであんた達はそんな偉そうに他の人達の邪魔すんの?

警戒する気持ちは分かるけどそれを他の人に強制すんのはどうかと思うよ」

「っるせーよ!! お前らの罠に嵌まるかっての!!」

「そーだ! 俺達は絶対にこんなもの食べたりしない!!」


そう言って一人の男がテーブルの料理を地面に払い落とした。

ガシャーン とけたたましい音が鳴り、小さな悲鳴を誰かが漏らした。


「何すんだよ! 食べ物を粗末にすんな! お前らの為に作ってくれたもんなんだよ、少しは考えろよな!!」

「んな言葉に騙されるか!!」

「誰も騙したりなんかしてないだろ! 被害妄想も大概にしろよ!」

「あー恐い! 人間様はそうやって自分の思い通りにいかないとすぐ怒って暴力にでる!」

「おい、みんな気を付けろ! 殴られるぞ!!」


「食べ物は粗末にするな」そう教えこまれていた俺は更にイライラして思わず怒鳴ってしまい、そのせいで怯えていた者は更に怯えてしまっている。

それを見て俺が何も言えなくなると男達は回りを更に煽っている。


「その辺にしておけ」


そんな場で凛とした声が響き誰もが口を閉ざした。

俺と男達の間に歩いてきたリアーナが男達を見ると、それだけで男達は怯んだのか数歩後ずさった。


「君達は料理を食べたくないのだろう?」

「あ...あぁ」

「それなら無理に食べさせるものでもない、私達だけで頂こう」


そう言って彼女は手近な椅子に座り食べ始めた。

その様子に俺達が拍子抜けしている間にウォルバンさんも座り「俺も!」と言ってライゼも座った。ライゼいたのか...

「全くしょうがない子達だね」そう言ってマチルダさんは男が落とした食器やスープを片付け始めたので慌てて俺も続こうとしたが、ルミナスさんに「私達が片付けるから柚希は座てて」と言われてしまった。


そうしてニコニコと美味しそうに料理を食べる俺達を、唾を飲み込みながらみる人々。

ふらりと近付いてこようとした者も何人かいたのだが男達が邪魔をする。


「食べたい者には食べさせてやれ。君達とは考えが合わないのだろう?」


リアーナがそう言うと男達はあっさりと引き下がった。俺のときは突っ掛かってきたのに...

何人かが戸惑いながらもこちらに来るので「どうぞ」とそっと椅子を引いて促すとキョロキョロ周囲を確認しながら少年はゆっくり座った。


「いきなりいっぱい食べると吐いちゃうかも知れないし、スープ飲む? お粥もあるよ。あっ、やっぱりお肉がいい?」

「えっ、えっと...」


少年が来てくれたのが嬉しくてつい矢継ぎ早に聞いて混乱させてしまった。

反省して少年に好きなものを選んでもらって様子を見守る。

ゆっくりと一口薄い味付けのコンソメスープを口に入れ、それから勢いよく流し込む。

その様子に慌てて「ゆっくり飲もうね」と声を掛け、ある程度飲んで落ち着いたのか少年はゆっくり飲み始める。

取り合えず大丈夫そうだと辺りを見回してみると、リアーナもウォルバンさんもライゼでさえ来た人の面倒を見てあげている。

そのことにちょっと感動した。


しかし、結局3人程が食べてくれただけで、残りの3人の男達とあの少女は来てくれなかった。

少女はぎゅっと両腕の中のものを大事そうに抱えて、割れた皿を片付けるマチルダさんの後ろに隠れていた。



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