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番外編 神様



「わーなんか光ってる!! お化け!? それとも妖精さん?」

「なんやでっかい声出すガキんちょやな。わいは神様やで、そないなもんと間違わへんでくれるか」


フヨフヨと、初めて来た○○町をのんびり飛びながら観察していたら聞こえた子供の声。

うざったいその声に振り向けば、まだ鼻垂れな糞ガキが家の窓から顔を出してわいを見ていた。


「かみさま? でも空中にういてるからお化けじゃないの?」

「そんなら鳥もお化けかいな、神は何でもできるから神なんやで」

「ふわ~~かみさますごい!! なら私もうきたい!!」

「嫌やわそんなめんどいこと。なんでわいがそないなことしてやらないけんの? お断りや」

「えーー、かみさまなんでしょ? 何でもできるんでしょ? 空とびたい! とびたいとびたい!!」


ガキになんて毛ほどの興味もなかったがちょうど暇だったので会話を続けてみれば、やはり頭のたりてなさそうなガキだった。

3、4歳程のガキは肩できっちり揃えた髪型をしていて、何にでも興味津々って感じのキラキラした目を向けてくる。

それを冷めた目で見ていればガキ特有の我が儘を言い出した。

どこにでもいる普通の子供。そう、それだけ。


もう会うこともないだろう、確かにそう思った。それなのに何故幾度も訪ねてしまうのか。

他の場所に遊びに行ったのに気付けば蜜柑に会っていた。今思えばもうその時点で蜜柑に惹かれていたのだろうと思う。


今まで色んな世界を見てきた。地球だけじゃなく様々な神が創った世界を。

どの世界、国でも似たような進化を遂げるようで、どこも似たような人間がごまんといる。

それどころかその世界の神が手抜きで作ったコピー人間だっていたりするくらいだ。

それなのに、どうして蜜柑に惹かれたのだろう...


恋は理屈じゃないと、どこかの誰かが言っていた。

そういうものなのか...と、数億年生きて初めて知った。




「ほんまにここはつまらんな。大坂やったらもっとおもろいものも美味い飯もぎょーさんあったのに」

「ここいい所だよ! でも大坂の食べ物美味しいね!」

「そやろ? お前が食いたい言うから買うてきたんや。感謝しいや」

「うん、ありがとーかみさま!」


神の力は万能だが、他者の世界ではむやみやたらに力を使えない。

そういうルールが神世界にはあるのだ。

だからたこ焼きは地球の神と交渉の末に貰ったお金で購入したものだ。

そんなたこ焼きを食べつつ会話をしながら、指や口元にソースをつける汚い食べ方の蜜柑を眺める。


「そんなに口を汚して、よーそんな汚い食い方しとんな自分」


文句を言いながら冷めた目で見詰めるが、恥ずかしそうに笑うそのあどけない顔が愛しくて愛しくて仕方なかった。

わいが創った世界の生物も勿論大切で愛しい。

でも、それとは比べようがない程の感情なのだ。この気持ちが何なのか分かっているが、分からないふりをしていた。





ある日蜜柑の元に遊びに来ると、蜜柑は車椅子に乗っていた。

わいは動転していたと思う。けど蜜柑はいつも通りで。


「わー神様いらっしゃい! また会えて嬉しいよ!」


なんてキラキラした笑顔を向けてきて、ーーゾッとした。

蜜柑はわいが創った生物じゃない。だからその生も運命もわいにはどうすることもできないことに気付いたのだ。

こうして蜜柑が怪我をしたことも知らなかったし、この先いつ蜜柑が死ぬのかも分からない。




ーー明日もし死んでしまったら?




そう考えた途端、血の気が引いた。

いても経ってもいられず、直ぐ様地球の神の元に行き蜜柑をくれるように頼んだ。

蜜柑がわいのものになったらその運命をわいが決められる。ずっとずっと死なないように蜜柑の運命を変えるんだ。そう考えて。


しかしあの性悪は首を縦に振らなかった。ニタニタしながら必死に懇願するわいを笑っていた。

悪い奴ではないが、あれは本当に性格が悪い。

多分蜜柑は当分何事もなく生きていける。そんな蜜柑を心配するわいの様子が面白くて仕方なかったのだろう。



それからわいは不安で不安で堪らず蜜柑のことを見続けた。何かあったらすぐに助けられるように。

そのせいでわいの世界は放置され荒れていったけど、そんなことはどうでもよかった。


そんなわいに呆れた地球の神は、幾つか条件をつけて蜜柑を連れて行くことを許可してくれた。

その一つが柚希も連れて行くことだったんだが、まぁそれはどうでもいい。


これからずっと、永遠に一緒にいられることが嬉しくて嬉しくて堪らない。

わいの世界での蜜柑との生活は毎日幸せに満ちていた。その裏に我が子の犠牲があったとしても。

これからずっと愛しい蜜柑と一緒にいられる。それ以上に望むものなど何もなかった。







「神様は無闇に世界に干渉しないって私知ってるよ。

神様にとってはみんな我が子だから、誰かを贔屓したりできないんだよね」


そう言ってわいの手をきゅっと握ってきた蜜柑の手を握り返す。

神は自分の創った世界に必要最低限しか干渉しないものだ。無闇に干渉すればその世界の進むべき方向をねじ曲げ、自分達で気付くべき事柄に気付けなくさせてしまう。

神はただ、我が子がどのように進化していくのかを見守るだけだ。

何故なら神にとって人間も動物も魔物も植物も差はなく、特別にどれかの種を贔屓することもなくみな平等だからだ。


「わいにとって蜜柑だけが特別なんやで」


そう言って笑い掛けると微笑み返してくれる、わいが見付けた特別な存在。

純粋な蜜柑はわいの言葉をそのまま信じている。

本当はわざと放置しているのに気付かず、逆にわいが心を痛めていると思って慰めようとして。

蜜柑を見付けてから必要最低限にしていた世界の調整もしなくなった。

そのせいでこの世界は破滅に向かっているけれど、もしかしたらわいはずっと死にたかったのかも知れない。


穏やかに滅びる世界で、ただ君と二人だけで生きていきたい。

ニコニコと可愛らしく微笑むその横顔を眺めながらそう思った。



蜜柑が怪我をしてはじめて蜜柑の運命が見えないことをはっきりと自覚し怯えた神様。

ちょっと病んでますね。

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